震災後79日のフィリピン台風被災地の状況 【1月25日 – 26日視察レポート】
2014.2.6
- 実施レポート
- フィリピン被災女性・妊産婦支援
1月26日現在の現地の様子と活動をご報告いたします。
街の様子
今回の大災害は、上陸したものとしては史上最大といわれる暴風に加え、高潮が同時に襲来したため、レイテ島やサマール島など広い地域に甚大な被害をもたらしました。あれから2カ月半。最も犠牲者が多かったタクロバン市では、いまだにブルーシートで覆われたままの建物が目立ち、トタン屋根が葺き直されている家屋はわずかしかありません。この光景からも、復興にはまだまだ時間がかかることがうかがえました。
妊産婦に対する支援活動
FPOPは災害後、すぐに被災地入りし、行政と協力して妊産婦のための医療活動を行い、家族計画を含めたセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)サービスを提供しています。活動地域はレイテ州、サマール州、東サマール州、イロイロ州、カピス州、アクラン州の6つです。
レイテ州タクロバン市では、12月初旬から計5回の医療活動を行い、すべての行政区をカバーしました。訪れた女性は合計1156人。このうち妊娠中の女性が392人。授乳中の女性は411人でした。保健省によれば、被災者のうち、1年以内に約48万人の女性が妊娠し、被災地での出生件数は1カ月で3万4000件になると試算されています。
「やっと私たちにもサービスが」― 妊産婦から喜びの声
タクロバン市から1時間ほど車で移動したマヨルガで行われた医療活動に同行しました。
FPOPがこの地域で妊産婦のための医療活動を行うまで、このようなサービスは行われていませんでした。「やっと私たちのためのサービスが来た」。多くの妊産婦が喜んでいました。
FPOPでは、近くの病院に依頼し、医師を派遣してもらっています。行政と協力して行うので、助産師や保健スタッフの派遣は無料ですが、医師には費用を支払っています。医療を受けに来た女性には、医師や助産師による検診の他、ビタミン剤、コンドーム、ピル、その他必要な医薬品が無料で配られます。
視察した日も、1日に50人以上の女性が訪れていました。台風の約2週間前に出産したという20歳の女性は、出産後これが初めての検診。FPOPの医療活動の感想を聞くと、「とても助かっています。本当に多くのことをここで学ぶことができました」と答えが返ってきました。赤ちゃんの足にできた湿疹に悩んでいたので、医師からビタミンをもっと与えるようにとのアドバイスをもらい、ほっとしたと言います。彼女に限らず、医療活動を受ける多くの女性が、検診を終えると、安心して嬉しそうな笑顔を浮かべているのが印象的でした。
医療活動では、保健指導も同時に行い、訪れた女性に、出産前後に気をつけることや、女性に対する暴力やHIV感染予防についての知識も提供しています。災害後、弱い立場に置かれがちな女性に、こうした問題を知ってもらうことは非常に重要です。参加者もみな真剣に聞き入っていました。
FPOPだからこそできる、支援活動の提供
南太平洋のバヌアツ、トンガに続き、世界で3番目に自然災害を受けやすいフィリピンで、FPOPは2008年から人道的支援に乗り出しました。災害・紛争時における女性に対する保健医療サービスの提供だけではなく、平時から、緊急時のための保健スタッフの研修、災害対策に母子への支援を入れるよう政策提言を行ってきました。セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの分野で45年の歴史を持ち、全国に25の支部を持つFPOPだからこそできる支援です。
復興が進まない被災地では、妊産婦のための医療支援が遅れています。時間が経つにつれ、多くの地域でFPOPだからこそ提供できる妊産婦検診サービスに対するニーズが高まっています。しかしながら、活動している3つの地域のすべての行政区を巡回するだけでも今年いっぱいかかります。
FPOPの現地事務所では、飲み水も十分にない中、スタッフと若者ボランティアがお互いに協力し、励ましあいながら支援活動に真摯に取り組んでいました。生活は厳しいながらも、みな使命感に燃え、献身的に働いています。
今回の視察を終え、現地に対する支援の継続の必要性を強く感じました。どうぞ引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。