ジョイセフとは
女性。選択できる世界を

どこで生まれるか、どんな性で生まれるか、私たちは選べない。
けれど、この命をどう生きるかは、自分で選びたい。

ジョイセフは、すべての人が自分の意思で生き方を選択できる世界をめざして、基本的人権であるSRHR【性と生殖に関する健康と権利】を推進する、日本生まれの国際協力NGOです。

とりわけ、性による健康の格差とジェンダー不平等に苦しむ女性たちが、みずから命と健康を守り、性と生殖における自己決定権を持てるよう、40以上の国と地域で支援活動を行ってきました。

一人ひとりが自分を大切に、自分らしい人生を選べる世界へ。ジョイセフは、女性をとりまく現実から変えていきます。

©Miki Tokairin / JOICFP

ジョイセフの誕生は1968年。一人ひとりの健康と人権を大切にするための「家族計画」から始まりました。

ジョイセフは1968年、日本で発足しました。テヘランで開かれた人権に関する国際会議において、基本的人権として「家族計画」が明言された年のことです。名称も家族計画に由来します。
Japanese Organization for International Cooperation in Family Planning=JOICFP:財団法人 家族計画国際協力財団(創立当初の名称。現在は「公益財団法人ジョイセフ」)

戦後、日本では母子保健が飛躍的に向上し、世界に類を見ないモデルケースになりました。背景にあるのは、ジョイセフ創立者の國井長次郎が実践した、「家族計画によって一人ひとりの健康や人権を守る運動」です。

日本で培った母子保健と家族計画の知見を生かし、開発途上国の女性と妊産婦の支援に取り組んだのが、私たちの出発点でした。以来ジョイセフは一貫して、女性の命と健康、性に関する健康と権利を推進するために力を注いでいます。

國井が掲げた「一人ひとりの人権を中心に据えた家族計画」は、やがて国際社会で基本的人権として提唱される「SRHR:性と生殖に関する健康と権利」の理念につながっていきました。ジョイセフはSRHRの夜明けからともに歩み、誰ひとり取り残されることなくSRHRを享受できる世界へ向けて、国内外で運動を推し進めています。

写真一番右:ジョイセフ創立者の國井長次郎

Sexual and Reproductive Health and Rights(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)
自分の人生は、自分で選ぶ。そんなあたりまえをすべての人に。

SRHRとは、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利」を意味します。具体的には、性と生殖について、私たち一人ひとりが適切な知識と自己決定権を持ち、自分の意思で必要なヘルスケアを受けることができ、みずからの健康と主体性を守れることです。

この基本的人権としてのSRHRは、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)によって、広く国際社会で提唱されるようになりました。SRHRは基本的人権の中心にあり、すべての人が生まれながらに持っている権利です。

しかし現実には、いまなお多くの人びとがSRHRを享受できず、取り残されています。とりわけ女性は文化や宗教、歴史などを背景に、みずからの性と生殖において自己決定権を持てないことが珍しくありません。

ジョイセフは、すべての人の健康と権利が守られ、自分の意思で人生を選択できる世界をめざして、女性のSRHRを前進させるための活動に取り組んでいます。これまで半世紀以上にわたり、40を超える国と地域で、妊娠・出産・中絶によって亡くなる女性を減らすための支援、意図しない妊娠を防いで女性の人権を守るための家族計画の推進、HIV/AIDSを含む性感染症の予防、SRHR推進のための啓発や教育、アドボカシーを行ってきました。

©Miki Tokairin / JOICFP

1分にひとり、女性が命を落としていく世界の現実。

妊娠をきっかけとして女性が亡くなる背景には、多くの場合、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)の問題があります。たとえば早すぎる妊娠や、安全でない中絶、妊婦健診の不足、医療従事者が立ち会わない出産での母体急変など。さらに、性行為で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が主な原因とされる女性特有のがん・子宮頸がんによる死亡を合わせると、いま、世界では実に、1分にひとりの女性が命を落としています。

女性にとって、SRHRが実現するまでの道のりは、あまりにも遠いと言わざるを得ません。妊娠や子宮頸がん、乳がんなど、女性特有の理由で健康を損なったり、命を落としたりするばかりでなく、ジェンダー不平等に根ざした暴力、教育や職業選択への妨害、児童婚や女性性器切除(FGM)をはじめとする有害な慣習など、性別を理由とするさまざまな問題が立ちはだかっています。

たとえばジョイセフの支援先のひとつであるケニアのスラムでは、「生理の貧困」が意図しない妊娠の一因です。女子生徒が生理用ナプキンを買うために性的なサービスでお金を得て、その結果として妊娠して退学したり、HIVに感染したりするのです。そうなれば、彼女たちが希望していた生き方の選択は難しくなってしまう可能性が高くなります。

女性をとりまく現実を根本から変える。ジョイセフが見出した最も力強い方法は、「人づくり」によって問題を「予防」することです。

意図しない妊娠や性感染症のような問題が起きたとき、まず必要なのは、当事者である女性が自分の意思で、適切なヘルスケアを受けられることです。そして偏見や差別、女性特有の健康リスクによって今後の人生の選択を妨げられることなく、尊厳と希望をもって生きていける社会にしていかなければなりません。

ジョイセフは、そのための支援に取り組むとともに、女性がSRHRという基本的人権を奪われた状態で命や健康をおびやかされることがないよう、さまざまな問題をあらかじめ防ぐ「予防」に力を注いでいます。損なわれた健康を元通りにするのは難しく、まして失われた命は二度と戻らないからです。

©Miki Tokairin / JOICFP

具体的な例として、女の子が意図しない妊娠を避けるために、どのような「予防」があるか考えてみましょう。

  • ジェンダーを問わず、すべての人が、性と生殖に関する適切な知識を得て包括的性教育を受けられること
  • 女の子が教育を受けて読み書きができるようになり、みずから情報を得る力を持つこと
  • 女の子ができるだけ長く学校に通うこと
  • 避妊具や避妊薬、緊急避妊薬が誰でも安価に入手でき、特に女の子や未婚の女性が罪悪感を持つことなく、安心して使用できること
  • 児童婚や女性性器切除(FGM)などの有害な慣習のあり方を見直すこと
  • 性行為のパートナー同士が対等な関係を築き、避妊においても協力できること
  • 女の子が望まない性行為をしなくてすむこと
  • ジェンダーによる経済や社会的地位の格差をなくすこと

「予防」のために、ジョイセフが見出した最も力強い方法は「人づくり」です。女性の健康や権利を推進する教育・啓発、技術支援、人びとの声を集めて現実を変えていくアドボカシーなど、一人ひとりの「エンパワーメント」を支援プロジェクトの柱としています。私たちがめざすエンパワーメントとは、人生の中で選択肢があるとき、みずから選びとるために必要な知識やスキルを身につけ、「自分で決められる」自信を持てるように支援することです。

©Miki Tokairin / JOICFP

ケニアのスラムでは、ジョイセフが養成した地域保健ボランティアがSNSを活用して寄付を募り、女の子たちに生理用品を配付するプロジェクトを始めました。生理用ナプキンを手渡す際に、性と生殖に関する正しい知識も伝えています。この活動によって、多くの女の子たちが生理用品を買うお金のために性的なサービスをする必要がなくなっただけでなく、SRHRの知識を得てみずからの意思で健康を守り、将来に向けて学校で勉強を続けられ、自分の力で人生を選択していけるようにエンパワーされています。

このように、「予防」のアプローチには、女性をとりまく現実を変えていく確かな力があるのです。

「人づくり」で良い変化を生み出し、「パートナーシップ」によって持続可能性を高めます。

女性の命と健康への意識が高まり、一人ひとりの行動が変わり始めると、その変化はコミュニティ全体に、そしてそのまわりへと広がっていきます。こうして始まったSRHRを前進させる変化を社会に根付かせ、「持続可能」なものにしていくプロセスは、ジョイセフだけでは成しえません。地域の草の根からは、住民、共同体のリーダーたち、学校や病院、そして現地の協力団体と力を合わせて進めてきました。

同時に日本と活動国の政府および行政、国際機関との緊密な連携により、制度や仕組みの面からも持続可能性を高めます。建物や施設の建築・整備などの物的支援を行う場合も、完成させるだけではなく、コミュニティの人びとがみずからの手で運営して発展させていけるよう、地域が自立できる仕組みをともに作り上げています。

ジョイセフはこのように、「人づくりによる予防」と「パートナーシップ」を両輪として、40を超える国と地域で女性支援とSRHRの推進に取り組んできました。さらに現在は日本国内でも、ジェンダー平等、避妊や安全な中絶、子宮頸がん予防、包括的性教育などをめぐる課題を解消していくために、啓発や教育、アドボカシーを行っています。

ジョイセフがプロジェクトで実現してきた「予防」は、いわば「持続可能な変化の種」です。その種は、一人ひとりから地域社会へ、その先へとパートナーシップによって広がっていき、さまざまな場所に根を下ろして、女性をとりまく現実を草の根から変えてきました。

ジョイセフはこの活動をさらに力強く進め、誰ひとり取り残されることのない、どこに生まれても健康に、自分の意思で人生を選択できる世界をめざしていきます。