ブックタイトル開かれ活力ある日本を創る
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開かれ活力ある日本を創る
?提言1:少子化への対応◆まえがき消滅可能性市区町村に関する推計が、2014年5月に発表された。消滅可能性のある市区町村とは、子どもを産む人の大多数を占める「20~39歳の女性人口」が2010年からの30年間で5割以上減少するとされる自治体であり、それが2040年に全国の約1800市区町村(政令指定都市の行政区を含む)中の49.8%(896自治体)に達するという予測である(日本創成会議・人口減少問題検討分科会の推計、座長・増田寛也元総務大臣)。この報道は大きな社会的衝撃をもたらし、2014年の全国知事会における少子化対策の抜本的強化を求める「少子化非常事態宣言」の採択につながった。少子化傾向を見る指標に、合計特殊出生率(TFR)がある。これは一人の女性が生涯に産む子どもの数の推計値である。日本ではそれが1950年代半ばから1970年代半ばまでは、人口を維持するのに必要な「人口置換水準(死亡率によって異なるが、最近ではTFRで2.07)」であったものが2005年には史上最低の1.26に減少、その後少し持ち直してはいるが、2013年に1.43で、人口置換水準からみれば大きくかけ離れている(2013年の出生数は102万9800人で、人口動態統計史上過去最低)。人口学的分析によると、この少子化の直接的原因は主として晩婚化・非婚化であるが、夫婦が持つ子ども数減少の影響もみられる。◆リプロダクティブ・ヘルス/ライツと少子化対策少子化がもたらすマクロの人口状況(人口減少・超高齢化)と、それがもたらす経済と社会とりわけ社会保障への重大な影響についての問題意識は重要である。出生に関する政策づくりに当たっては、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の視点の重要性も配慮しなければならない。これは1994年にカイロで開催された国際人口開発会議(ICPD)で、日本も含めた179カ国によって採択された人口問題解決のための「行動計画」の中心に据えられた概念であり、産むか、産まないか、出産間隔、子どもの数などを個人、カップルが責任をもって決めるという基本的人権のことである。最近、少子高齢化に対応するために50年後の日本人口を1億人程度で維持する、そのために2030年までにTFRを2.07に上昇させる政策を進めるなどの提言が相次いでいるが、出生数や出生率の目標を設定することは、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点からみて望ましいものではなく、女性に対して「出産圧力」をかけることになりかねない。「行動計画」の採択に賛成し、女性の自己決定権を強く擁護してきた日本としては、産む、産まないなどの意思決定は、第一に尊重すべきことである。6