プレスリリース:G8閉幕 母子保健に4500億円拠出も課題残る
2010.6.27
- お知らせ
途上国の女性と妊産婦を支援する国際協力NGOジョイセフ(東京都新宿区、会長:明石康)は、6月25日(金)、26日(土)に開催されたG8サミット(ムスコカ、カナダ)に関し、下記のような見解を発表します。
今回のG8サミットでは、2008年の洞爺湖サミット以来、日本政府がリーダーシップを発揮してきた母子保健分野の進捗の遅れに憂慮を示し、特に進捗が遅れているとされるミレニアム開発目標(MDGs)5(妊産婦の健康改善)や、妊産婦の健康と密接に関係するMDG4(乳幼児死亡率の削減)への取り組みが明確化されました。G8諸国は成果文書の中で、Muskoka Initiative(ムスコカイニシアティブ)を発表し、今後5年間で母子保健分野に50億ドル(約4500億円)拠出することを約束しました。具体的に資金的なコミットメントを表明したことは高く評価できる点として捉えています。
しかしながら同時に、いくつかの課題も見受けられます。
- 資金面:
MDG4と5を達成するためにG8諸国が毎年拠出する必要のある資金は合計で約100億ドル*です。ムスコカイニシアティブでは5年間で50億ドルの拠出を約束していますが、450億ドルも不足しています。 - ムスコカイニシアティブの内容:
妊産婦死亡の約13%を占め、大きな原因の一つになっている危険な中絶で命を落とす女性は世界で毎年7万人います。しかしながら、G8議長国であるカナダ政府は今回のG8サミット開催にあたり、中絶に関する議論を避ける姿勢をとってきました。ムスコカイニシアティブはセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス**に取り組むとしていますが、その中に危険な中絶に対する対処が含まれるのかどうか、確認されていません。 - 女性の権利、教育へのアクセス:
首脳宣言では、女性の権利向上、女性の教育へのアクセスを増やすとしていますが、これらはムスコカイニシアティブの内容にも含まれていません。教育を受けていない15-19歳の少女は、教育を受けている少女に比べて出産する確率が4倍も高くなっています。少女の妊娠や出産はリスクが高く、妊産婦死亡の大きな原因の一つになっています。女性の権利向上や女性への教育に対して、G8がどのように取り組んでいくのか、サミットでは明記されませんでした。
さらに、今回のG8サミットで菅首相は、新たに母子保健に焦点を当て、5億ドル(約450億円)拠出し、取り組むことを表明しました。石井澄江(財)ジョイセフ常任理事・事務局長は「菅首相自らマニフェストでODAの質と量の強化を掲げています。約束通り、日本政府が資金面でも確固たる貢献をしていくことを期待しています。」と日本政府の「有言」実行を求めています。
ジョイセフは今後もG8諸国の動きを注視していきます。
本件に関するお問合せ先
ジョイセフ アドボカシーグループ 塩田恭子
Tel:03-3268-5875
E-mail:info@joicfp.or.jp
*国連機関のデータを基にPopulation Action International(米国NGO)が算出。
**リプロダクティブ・ヘルス:妊娠・出産のシステムおよびその機能とプロセスにかかわるすべての事象において、単に病気がないあるいは病的状態にないということではなく、身体的、精神的、社会的に良好な状態(well-being)にあること。(WHO)