公開シンポジウム「女性の人権と開発―家族計画を再び考える」開催

2012.12.4

  • イベント告知

2012年11月29日、東京・内幸町の日本プレスセンターにおいて、国連人口基金(UNFPA)・ジョイセフ共催で公開シンポジウム「女性の人権と開発―家族計画を再び考える」を約100名の参加者を得て開催しました。

このシンポジウムは、11月14日にすでに世界同時発表されたUNFPAの『世界人口白書 2012』のテーマ「偶然に委ねず、自ら選ぶ 家族計画、人権、そして開発」と連動させて、家族計画を人権と開発のための重要な要素として位置づけた議論を深める絶好の機会となりました。

パネリストのみなさん

パネリストのみなさん

 
白書でも強調されていますが、いつでも必要な時に自分に適した家族計画の手段を安価に入手できることが、女性の人権や開発にとっていかに重要であるかを基調に、家族計画の満たされていないニーズ(アンメットニーズ)を充足することができれば、望まない妊娠や望まない時期の妊娠を防ぐことができ、多くの女性の命や健康を守ることにつながり、また、それは女性の健康の向上のみならず、社会開発の重要な「鍵」であり、「投資」ともなることを確認しました。

家族計画のパイオニアである米国のマーガレット・サンガーや日本の加藤シヅエらが、その生涯をかけて、女性の命や健康を守る手段としての家族計画を訴えてから、すでに1世紀が経過していますが、依然として世界の2億2200万人の女性のニーズが満たされていないことが問題となっています。

2012年7月11日にロンドンで開催された「家族計画サミット」においても2020年までにさらに1億2000万人の女性のニーズを満たすための支援が国際社会に呼びかけられ、日本を含むサミット参加国政府から、ドナー国、途上国を合わせて、この8年間で約46億ドルの援助が公約されたばかりでもあります。

今回のシンポジウムでは、これらに関連する課題を掘り下げ、人権としての家族計画、また開発のための「鍵」や「投資」としての家族計画について、各分野のオピニオンリーダーによる議論で「再考する」ことができたと思います。

祝辞を述べる武見敬三教授

祝辞を述べる武見敬三教授

シンポジウムのプログラムは、日本の家族計画の経験も踏まえて、近泰男・公益財団法人ジョイセフ理事長から開会のあいさつから始まり、祝辞として、武見敬三・東海大学政治経済学部教授・日本国際交流センターシニアフェローからは、家族計画が「ポストMDG」に向けて重要なテーマであることが強調されました。

続いて、『世界人口白書 2012』(偶然に委ねず、自ら選ぶ 家族計画、人権、そして開発)をどう読むかの標題で、阿藤誠・早稲田大学人間科学学術院特任教授による白書の解説が続き、パネルディスカッションでは、「女性の人権と開発-家族計画を再び考える」のテーマで、モデレータ佐崎淳子UNFPA東京事務所長で、パネリストは、Anyango(アニャンゴ)・ニャティティ奏者・日本ケニア文化親善大使、川島博之・東京大学大学院農学生命科学研究科准教授、北村邦夫・日本家族計画協会専務理事・家族計画研究センター所長、柳田正芳・若者世代にリプロヘルスサービスを届ける会(Link-R)代表による、多岐にわたる視点からの活発な意見交換が行われました。

阿藤誠教授が『世界人口白書 2012』の解説を行った

阿藤誠教授が『世界人口白書 2012』の解説を行った

 
Anyangoさんからはケニアの女性の現状の観点で、川島准教授からは人口・経済成長・食料と家族計画の観点で、北村医師からは家族計画は世界のテーマであると同時に日本の現在も続く課題として、日本のアンメットニーズにどのように取り組むべきか、また、柳田氏は日本の若者への更なる働きかけが必要であるという観点で、各議論が展開されました。

活発なディスカッションが行われた

活発なディスカッションが行われた


 
閉会挨拶の小寺清・国際協力機構(JICA)理事からは、国連機関、政府、NGOがパートナーシップをさらに強化し取り組むべきテーマであることが強調されました。

閉会の辞を述べる小寺清JICA理事

閉会の辞を述べる小寺清JICA理事


 
なお、今回のシンポジウムは、外務省、国際協力機構、人口問題協議会の後援、一般社団法人日本家族計画協会、公益財団法人アジア人口・開発協会(APDA)、NPO法人2050、日本大学人口研究所、神戸アジア都市情報センターの協力を得て実施しました。

(報告:鈴木良一)