タンザニアでの人材研修 ~保健スタッフやコミュニティ・ヘルス・ワーカーとのワークショップ
2014.7.2
- 実施レポート
- タンザニア
- 人材養成
2014年2月15日~3月11日、人材養成グループの浅村里紗がタンザニア・シニャンガ州で保健スタッフおよびコミュニティ・ヘルス・ワーカー(CBSP)に対して研修を行ってきました。
2015年3月のプロジェクト終了に向けて、開始以来3回目にして最終回となった今回のワークショップでは、「楽しい! わかりやすい! 勇気が出る!」をキーワードに、保健センターと診療所、州保健局、そして現地NGOであるIPPFタンザニア(タンザニア家族計画協会)が一体となって、パワフルな運営チームを構成し、実施してきました。
- 習得してきた学びの再確認
- これまでに提供してきた多くの教育教材のおさらい
これらを中心にきちんと学び直すことにより、保健スタッフおよびCBSPによる村での啓発活動がさらに円滑に行えることを目的としました。また、プロジェクトが終了した後も保健スタッフとCBSPがともに活動を維持・強化し、困難を乗り越えていけるよう、彼らの信頼関係の構築にも力を入れています。
はじめに、13名の保健スタッフを対象としたワークショップを3日間行いました。
保健スタッフの強力なアシスタントであり、住民に対して直接啓発活動を行うCBSPの啓発活動がより一層充実し、地域住民による産前・産後健診、施設分娩、産後の家族計画などを定着させるためにどうしたらいいかなどについて、活発な意見が交換されました。
また、続いて行われるCBSPに対する研修の準備として、
- CBSPに作成してもらうスゴロクゲーム (母子保健に関する知識を楽しく学ぶためのゲーム)の準備およびサポート作業の確認
- CBSPから受けた「回答に困った質問」について共有
- CBSPが「最低限知っていなくてはならない10のこと(項目)」について討議・整理
- 両親学級の進捗状況の共有
- CBSPへの日々の感謝のメッセージ書き
などを行いました。
CBSPへの研修では、88名いるCBSPを3つのグループに分け、2日ずつ計3回実施しました。
参加者には「最低限知っていなくてはならない10のこと(項目)」について、研修の始まりと終わりに質問票に答えてもらい、知識レベルを確認。研修期間中にどれだけ理解を深めることができたかを各自見つめ直す作業を行いました。 また、グループに分かれて、コミュニティで啓発活動を行う際、どのような質問に困ったかなど、これまでに答えるのが難しかった住民からの質問を挙げてもらい、それについてどのように回答するのが望ましいかを検討し、確認し合いました。
CBSPから挙げられた「回答に困った質問」にはいくつか共通点がありました。例えば……
- どうして双子が生まれるの? → 双子が生まれるのは浮気をしているから?
- 逆子にどうしてなるの? → 不吉なことと関係しているかもしれないから、生まれたら祈祷すべき?
- 妊娠したのに赤ちゃんが消えた! → 呪いをかけられた?(実際は、医療機関で妊婦検診を受けていないため、想像妊娠に気づかず、妊娠したと思っていたのに生理がきて驚く人が多いとか。多産が尊ばれる土地柄、妊娠していないのに「した」と偽る女性もおり、妊娠が消える説は珍しくありません)
これらを含む多くの疑問に対し、シニャンガ州保健局、UMATIや診療所、それぞれのスタッフが医学的見地から質問の本来の意味や正しい答えを明確にすることで、CBSPが活動に不安や難しさを感じていた部分を一つひとつクリアにしていきました。ここで出てきた質疑応答は、今後も共有していけるよう、手引も作成しました。
教育教材のおさらいでは、妊婦とそのパートナーに妊娠と出産について意識・準備してほしいことをまとめたバースプラン(Individual Birth Plan)の様式や、予防接種のタイミングや産前・産後に必要な栄養素について書かれたシート、妊娠・出産の説明に欠かすことができないマギーエプロン(エプロン型リプロダクティブヘルス教育教材)の使い方など、CBSPによっては使い方や知識に差がある教材について、ブラッシュアップを行いました。
プロジェクトが始まった当初は、教材やその使い方の説明から始まったことを振り返ると、今回は応用の段階。「他のCBSPがどのように教材を使って啓発活動を行っているかを見ることで、お互いに刺激を受け、さらに技術を向上させようと自らディスカッションしている姿が印象的だった。著しい進化を遂げている」とは、初回からずっと研修を担当している浅村の弁。
地域住民に対するリプロダクティブヘルスサービスの向上を図る上で、いまや欠かすことのできない存在となった CBSP。彼らが自信を持って、保健スタッフとともに意欲的に活動を継続していけるかが、今後の活動の鍵となります。そこで今回は、保健スタッフからCBSPに日ごろの感謝を伝えることで、チーム力の強化を図りました。
「診療所を一緒に掃除してくれてありがとう」
「スクマ語 (シニャンガの部族語)が十分にわからない保健スタッフにスワヒリ語(共通語)に通訳してくれて感謝している」
などの言葉と共に、各診療所の壁には所属するCBSPの写真を飾り、お互いの協力があってこそ、この活動が続けられていけることを確認しあうことに。CBSPには日々の活動を通して「嬉しい!」と思った出来事を記してもらいました。
ジョイセフはソーシャル・キャピタルと言われる社会資源、地域力を高めるために、このプロジェクトを通して、コミュニティで正しいリプロダクティブヘルスの知識を啓発していける人材の育成に力を入れています。
この思いは、しっかりと彼らの中に根付いていることを、今回の研修を通して感じることができたと浅村は語ります。「過去2回の研修があって、今があります。1回目の研修を思い出すと、 CBSPの皆さんの吸収力と成長ぶりに言葉がありません。学びがしっかりと根付いていることに喜びと感謝です。また、各運営レベルの素晴らしいチームワークを通して保健スタッフと CBSPの絆が今後ますます深まっていくことに大きな期待をもっています」。
2011年3月にスタートしたこのプロジェクトが、これからも地域に根ざしていけるよう、プロジェクト終了時までジョイセフは地域の力となる人材の育成に努めていきたいと考えています。