「3つの遅れ」と男性参加-妊産婦の命を守るために

2014.12.15

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  • ジョイセフコラム

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妊産婦が命を落とす理由が以下の「3つの遅れ」によるものと指摘されています。それらは、


1.決断の遅れ

健康に関する情報や知識を得られない、または女性の社会的地位が低く決定権がないために、体調が悪くなっても、異常に気づいても、夫や家族の誰も病院や診療所に行くかどうかの決断ができないまま、手遅れとなってしまうことがあります。


2.搬送・アクセスの遅れ

病院や診療所までの距離が遠く徒歩ではたどり着けない、代わりの交通手段もないという地域がたくさんあります。仮に交通機関があっても、料金を払えないこともあります。



3.治療の遅れ

やっとの思いで病院や診療所に着いても、適切な治療が受けられないことがあります。
手術や輸血が必要でも、必要な機材や医薬品が不足していたり、専門の医師がその場にいないこともあります。また、必要な医療費が払えないこともあります。


最初の「決断の遅れ」を解決するために、私たちは、「男性の参加」、「男性の巻き込み」が重要であることを訴えてきました。

ジョイセフが実施する母子保健関連のプロジェクトには必ず必須活動項目として「男性の参加」の促進活動を加えてきました。

夫やパートナーである男性が、妊産婦に危険なサインがあれば即座に判断し、医療施設に運び込むことができれば、多くの命を救うことができるのです。
この「決断」が行われなければ救える命も救えないのです。

男性の協力・参加が妊産婦の命を救う、当たり前のことのように思えますが、それが、実践されていない悲しい現実がいまだに多くの国々や地域にあるのです。

現在、妊産婦死亡数は、毎年28万9000人、毎日800人の女性が妊娠や出産が原因で命を落としています(2013年国連機関)。この現実を変えるには、男性の参加を促すと同時に、社会の意識改革も合わせて呼びかけていかなければなりません。

一人の妊産婦の命を救うためには、夫や家族の協力のほかにも、女性が住む地域社会の支援が必須なのです。

「搬送やアクセスの遅れ」については、近隣の人々やコミュニティも参加し、搬送手段を確保できたという事例を多く見ています。町ぐるみや村ぐるみで妊産婦の命を救うという多くの好事例があります。

「治療の遅れ」の解決には、多方面の介入が必要ですが、取り分け個人負担を軽減する財政的な支援が必要です。お金がなければ治療してもらえないということであってはならないと思います。

この「3つの遅れ」の背景にあるもうひとつ大きな壁は、ジェンダー(社会的・文化的性別)によるものです。
そして、その解決には、さらなる努力と時間が必要です。男性上位社会の多くの国々では、依然として、女性が声を上げられない、あるいは、声を出せば、それを夫やパートナーの暴力により阻害されるなどの出来事が、いまだに日常的に頻繁に起こっているのです。

「3つの遅れ」をなくすためのも、私たちの挑戦はこれからも続きます。

(2014年12月、東京にて)