農村・遠隔地で働く助産師の再研修
2015.8.25
- レポート
- ベトナム
女性健康センター設立と助産師能力向上プロジェクト
メインイメージ:更年期の女性に対するケアについてのグループワーク。日本助産師会の派遣専門家(葛西圭子氏、左から2人目)、ベトナム助産師会の医師で研修講師のグエン・ヴォン・ラン氏(右端)
2015年6月22日から7月3日まで、村の助産師19名を対象に、再研修を実施しました。研修を受ける助産師たちは、プロジェクト対象地域の3省のひとつ、トゥア・ティエン・フエ省の農村・遠隔地のコミューンヘルスセンター(CHC:村の保健所)で働いています。
目的は、①ベトナム保健省の重点課題である助産技術・早期新生児ケア、②女性の生涯にわたる健康を守るために必要なリプロダクティブヘルス・サービスの知識や技能の習得です。研修では、思春期の若い女性へのケア、出産後の女性のためのメンタルヘルスケア、更年期ケア、カウンセリング技術、患者に寄り添うサービス(クライアントフレンドリーサービス)などについて学びました。加えて、乳がん・子宮がん検診、胎児・新生児スクリーニング検査、安全な中絶などの新しい知識や技術も紹介しました。2週間の研修には、講義の他、グループワーク、ロールプレイ、モデルを使用した演習、病院実習、実技試験が含まれています。
各セッションは、5月に行った指導者研修(TOT)を受講した講師を中心に、フエ省保健局、フエ中央病院、リプロダクティブヘルス・センター、ベトナム助産師会、日本助産師会からの経験豊かな講師の協力により行われました。
CHCで働く助産師からは、長い間技術の指導を受けたり新しい知識を得る機会がなかったため、出産介助や出産後のケア、村の住民とのよりよい関係づくりに不安があるという声が上がっていました。十分とは言えない保健スタッフの知識や技術が、住民にとって身近であるはずのCHCへの信頼を損ねている等の課題も残されていたのです。
研修中には、村の助産師が一人で判断しなければならない緊急のお産や、搬送が必要と判断しても住民から理解が得られないなど、困難に直面した経験が共有されました。自身の経験を話す際には涙を流す場面もみられ、村で働く保健スタッフならではの重圧を感じることがあるようです。
問題解決には、助産の専門技術やリプロダクティブヘルスに関する知識の向上が不可欠であることを強く実感した参加者たちは、「村の住民へのカウンセリングの技術を学びたい」、「他のCHCのよい点を取り入れていきたい」と、一人ひとりが意欲と決意をもって研修に臨んでいました。
研修が終了する頃には、参加したすべての村の助産師がこの研修で得た知識や技術を自分の村で生かしていきたい、と自信を持つまでになったのです。
今後、研修を受けた一人ひとりの助産師によって、質のよいリプロダクティブヘルス・サービスや情報が、農村・遠隔地の女性へと届けられることを期待しています。
8月には、クアンチ省の農村・遠隔地で働く助産師の再研修を実施する予定です。
※「女性健康センター設立と助産師能力向上プロジェクト」は、外務省の日本NGO連携無償資金協力を得て実施しています。
開講式で助産師研修の重要性についてスピーチをするトゥア・ティエン・フエ省保健副局長のホアン・ティ・タム医師(写真右から、ベトナム助産師会長、フエ省保健副局長、日本助産師会専務理事、ジョイセフ・プロジェクトマネージャー)
CHCでの課題解決策を提案・整理していく参加者。右側は研修講師としてファシリテーションするベトナム助産師会のグエン・バン・チ医師
病院実習で出産直後のケアの模範を示す、フエ中央病院のゴ・ホアン・ヒュウ助産師長
真剣なまなざしで実技試験に挑む参加者と研修講師
試験に合格し、修了証書を授与される参加者