国連創設70周年:国連の役割と山積する課題
2015.9.7
- お知らせ
- ジョイセフコラム
性や保健分野の協力強化、ジェンダー差別の解消、リプロダクティブヘルス/ライツの普遍的アクセスの確保を訴える
国連が1945年に創設されてから今年は70周年であり、多くの記念行事が世界各地で開かれています。日本でも、今年の初め、3月に東京で国連創設70周年記念シンポジウムが、外務省と国連大学の共催で開催されました。テーマは、「岐路に立つ国連:改革と刷新の年に向けて」でした。国連の役割や責任を見直す良い機会となったと思います。日本からは、安倍総理大臣をはじめとした外務省、国際協力機構(JICA)等から関係者が参加し、国連からはバンギムン国連事務総長をはじめ国連大学および国連専門機関から各代表が参加し、先のテーマに基づいて討論が行われました。私どものネットワークからは国連人口基金のババトゥンデ事務局長がパネリストとして参加しました。
この70年間に、確かに、「戦争の惨害から将来の世代を救うために創設された国連は、開発、非植民地化、人権、国際法、平和維持その他多くの分野で成果をあげてきました」と言えるとは思いますが、いまだ「道半ば」であることに変わりはありません。多岐にわたる課題があらゆる観点から、さらに複雑化しているとも言えます。
2015年は重要な年であると思います。国連の改革と一言で言っても、それには、70年間に蓄積されたものを変革するエネルギーが新たに必要となります。特に今年は、達成期限を迎えるミレニアム開発目標(MDGs)を継承する、あらたな開発アジェンダの枠組みを決める年であり、年末には地球温暖化防止をめざす京都議定書の後継となる合意成立をめざす大変重要な年となっています。
また国連の平和構築分野での活動の難しさと国々の利害関係が複雑なプロセスを必要としているように思います。国連の常任理事国が、国連の本来持つべき柔軟性を阻害しているという声も依然として根深く、改革や刷新と言う言葉が、机上の空論のようにも聞こえることがあります。話し合いはするが、何も決められない国連となってしまってはならないのです。各国の紛争課題が、収拾できなまま時間だけが経過しているように見えると同時に、軍事力の強い国の力がまかり通るような事態も見のがすわけにはいきません。
国連加盟国数は、1945年当初の51カ国から、現在では193カ国(2014年)へと増えています。この間、世界人口は約25億人から約73億人となり、ほぼ3倍となっています。国連はこれだけの国々の利害や、地球市民の一人ひとりの尊厳、生存、生活を考えていかなければならない使命を持っているのです。これらすべての国々の利害や意見が合致することはあり得ないと思われると同時に、それをまとめるための膨大なエネルギーも想像を絶するものです。
国連の専門機関の数や業務に関しても再編(One UN構想)が叫ばれてからかなりの時間が経過しています。今年2015年に決定され2016年から実施予定の新しい開発の枠組み(SDGs)が検討されている現時点でも、各機関の担当分野や活動分担についての議論も盛んに行なわれています。One UNはまだまだ程通いと言わざるを得ません。また、1945年以来国連の事務総長8名が全て男性で占められており、女性の事務総長の待望論も出ています。
このような国連の改革のプロセスの中であっても、山積する課題の中にあっても、私たちの立場は不変であるということです。私たちは、常に女性や保健分野の協力の強化やジェンダー差別の解消へのさらなる取り組み、また、リプロダクティブヘルス/ライツの普遍的アクセスの確保を、国連の活動においても国や国境を越えて横断的に取り組んでいくことを主張し、できうる能力の限りのアドボカシー活動を展開し、国連の役割の刷新にも努めてまいりたいと思っています。
(2015年9月、東京にて)