毎年途上国の女性690万人が 安全でない中絶の結果、治療を受けている実態が明かに

2015.10.15

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―家族計画のさらなる普及を求める

グットマッハー研究所(本部・米国ニューヨーク市)の調査研究の結果、安全でない中絶により開発途上国で、年間推計690万人もの女性が、その合併症のために治療を受けている実態が明らかになりました。この調査は、2012年の1年間の研究成果によるもので、分析後2015年8月に発表されたものです。
安全でない中絶とは、「必要な技術を持たない人によって、または、最低限の医療・衛生基準にも満たない環境の中で、もしくはその両方の条件下で実施される人工妊娠中絶手術のこと」(新版IPPF・SRH用語集2010)を言います。
途上国26カ国の15歳から44歳の女性1000人当たり約7人が、調査時点で治療を受けていると推計されています。そして実際に安全でない状況の下で中絶を受けている女性は、適切な医療を受けることができない人々であることも裏付けされました。前回の調査でも約40%の女性が、必要とされるケアを受けられないままに放置されていることが判明しています。
中絶が非合法か中絶へのアクセスが非常に厳しい国々では、中絶そのものが秘密裏に行われるため、女性の健康や命が危険にさらされることになります。また中絶によって、健康面のみならず経済的に厳しい負担を強いられたり、結果、職業を失ったり、就業状況を悪化させたりと過度の負担が女性にかかっていきます。一方、開発途上諸国の保健システムが中絶後の保健医療ケアで、毎年推計で約2億3200万ドルの公費負担していることも判明しました。
これまでの調査研究では、2005年に安全でない施設での中絶による治療人口は約500万人、これは15歳から44歳の女性1000人当たり約6人でした。今回の調査では、民間セクターの数値なども加えた結果、さらに多くの治療者が報告されました。
中絶後の治療率では、ラテンアメリカでは2005年から2012年の間に約31%減少しました。また、女性1000人当たりでは7.7人から5.3人に減少しています。それは、この間に中絶後のケアへのアクセスが増えたのではなく、研究者は、中絶による合併症が減少したことによるのではないかと見ています。それらは、経口薬剤(ミソプロストロールなど)による中絶が増えたことによるのではないかと推測しています。
今回の調査の報告者は、より質の高い中絶後のケアが求められることと、併せて、望まない妊娠を予防するための家族計画(避妊)のより積極的な指導が重要であると提言しています。
中絶で命を落とす女性は世界に多数います。そして、依然として、中絶後の合併症で辛い日々を送っている数多くの女性もいます。1994年以来世界の国々はリプロダクティブヘルス・ライツを標榜し「女性の自己決定権」の保証を訴えてきました。しかし、その目標が未だ達成されていないのが現実なのです。
すべての女性が家族計画(避妊)の手段を確保し、望まない妊娠や予期しない妊娠を避けることができ、家族計画のアンメット・ニーズが満たされることが切望されます。それが、中絶の被害から女性の命や健康を守る最も重要な方法になるのではないでしょうか。
(2015年10月、東京にて)