変わりゆく香港の人口ダイナミックス

2015.11.16

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最近、香港大学のポール・イップ教授(香港家族計画協会理事)の香港の人口に関する分析が地元の英字紙に掲載されていたので紹介したいと思います。

香港の人口は、現在724万人。この推移で進めば2043年には822万人となるとされ、その後、人口減少社会に入っていくと予測されています。その背景としては、今後30年間に及ぶ低出生率の継続と流入人口の減少が起こっているからであると考えられます。

また、香港の人口高齢化も顕著です。65歳以上の人口が現在すでに14%。いわゆる「高齢社会」に入っています。そして2043年には30%になると推計されています。労働人口は2018年に減少が始まると予測されています。

ポール教授は、香港はすでに人口変動時代に入っていて、いま人口構造と生存(生き残り)のための人口成長を維持する施策が必要となっているとしています。人口を決定する3要素としては、出生、死亡、人口移動があり、それが人口に影響を与えています。最近は、女性の出産のタイミングが遅くなっているし、結婚年齢も遅くなっています。現状では、合計出生率は1.2と非常に小さく、いわゆる人口置換水準を維持できるレベルの2.1が難しい状況となっています。平均寿命も男性が81歳、女性が86歳と世界的に見ても長寿社会です。

人口移動については、中国本土と比べても香港が決して魅力ある地域ではなくなりつつあるのかもしれません。かつて平均5万3000人であった流入人口が、最近では3万人に減少しています。また、海外で生まれて帰還する率も50%から30%以下になっています。

高齢化人口が増加することにより、いわゆる高齢者人口と労働人口の比率も変わってきます。現在の高齢者人口対労働人口の2:5が、2043年には4:5になると推測されています。

ポール教授は、日本の事例にも触れて、少子化傾向は女性の晩婚や非婚傾向が影響しており、高齢化が重なっていると分析。また、高齢者の健康寿命の延伸と生きがいとなる就業にも今後注目していくことが必要であるとしています。今後香港も諸外国の実例を研究することにより、香港の人口ダイナミクスの変化に対応できるようにし、持続可能な香港社会を目指す人口政策や健康な人口構造を作るための施策を導入しなければならないと提言しています。

(2015年11月、東京にて)

ジョイセフ事務局長
鈴木 良一