母子保健にプライオリティを(ミャンマー)

2015.12.14

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  • ジョイセフコラム

選挙後のミャンマー、新政権に期待

2015年11月8日は、ミャンマーにとって歴史的な一日となりました。
1990年以来四半世紀ぶりに、民主的な総選挙が平和裏に行われ、結果はすでに報道されているとおり、野党・国民民主連盟(NLD)の圧勝でした。

1948年の独立以来、ミャンマーの選挙では、国民の総意がその直後に軍によって阻まれたり覆されたりの連続で、国民はこれまで何度も苦汁をなめさせられてきました。しかし今回は違いました。100以上の政党による選挙戦が公明正大に行われ、敗北した現政権(軍政側)も民主的な選挙の結果を認めるという画期的な選挙となりました。国民の一票がそれぞれの選挙区で意味があり、価値があるものとなったということです。

どの政権であれ、国民の意思を最大限に尊重するようになって初めて、ミャンマーは真に胸を張れる民主的な国家としての地歩を築いたと言えます。2016年3月には、新しい大統領が選ばれ、ミャンマーは新しい一歩を踏み出す予定です。

母子保健の改善に向けた投資を

ジョイセフの事務局長としては、ミャンマー政府には今後も、国民の視点に立って保健分野の重点事業を決めること、特に、母子保健やリプロダクティブヘルス(RH)関連の状況を改善する努力を惜しまないで欲しいと願っています。

これらの分野は、政治や経済の大きな課題の影に隠れてしまいがちですが、新たな国づくりのためには非常に重要な分野です。特に、助産師等の保健人材の育成、増員、配置にさらにプライオリティを置いて欲しいと思います。国民の支持を得て選ばれた新政権として、「人々への投資」に傾注して欲しいと考えます。

私は、ミャンマーが、保健や教育の重点課題にどのように取り組んでいくか、注目していきます。これらの課題を解決していく中で、ミャンマーの女性の地位向上やエンパワーメントにも更なる発展がみられることでしょう。ミャンマーの新政権にエールを送りたいと思います。

ちなみに、当方で入手した、アウンサンスーチー女史の率いる国民民主連盟(NLD)の「マニュフェスト」では、保健政策の章で、「基本的な保健ケア提供の拡大」、「妊産婦及び乳児死亡率の低減」、また、「栄養不良の予防」などの対策の強化が既に明記されていて、今後が期待されます。

参考までに、母子保健・RH関連の指標を抜粋しておきます(順不同)。

指標 数値 備考・コメント
総人口 5142万人 2014年国勢調査(人口センサス)結果
妊産婦死亡率 178/出生10万対 Trends in Maternal Mortality: 1990 to 2015:アセアン諸国内でラオス(197)に次ぐ高い数値を示しています。
専門技能者の出産立ち会い* 71% 2006~2014年平均:農村地域における助産師の配置が遅れています。高い妊産婦死亡率は、医療サービスへのアクセス、人材不足、医療サービスの不足によって起こっています
避妊実行率(近代的避妊法)* 49% 2015年:望まない妊娠による統計に表れない非合法の中絶数も多いと推測されています
家族計画未充足ニーズの割合* 16% 2015年:とりわけ農村地域における家族計画サービスの充実が待たれます
平均寿命* 男64歳、女68歳 2010~2015年平均
合計出生率* 2.3 2010~2015年平均
中等教育就学率* 男子46%、女子48% 1999~2014年平均
乳児死亡率 40/出生千対 2015年WHO

(*の出典は「世界人口白書2015」)

(2015年12月、ミャンマー・ネピドーにて)