ザンビア最新情報(総選挙を終えて)

2016.9.13

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ザンビア最新情報(総選挙を終えて)

2016年8月11日に行われたザンビアの大統領選挙及び国会議員選挙の結果は、現職のエドワード・ルング第6代大統領(59歳)が僅差ではありましたが再選を果たし、政権与党であるPF(愛国戦線)が国会の過半数の議席を、これも僅差で獲得しました。

ザンビア(総人口1620万人・世界人口白書2015)の国会は、一院制で158議席。うち8議席が大統領による指名特別議席であり、選挙では実質150議席が争われました。

ザンビアは東京オリンピックの年である1964年の独立時から、アフリカの中で最も安定した民主主義国家と言われてきています。ザンビア国民はそれを誇りに思っています。歴史的にみても常に平和裏に選挙が実施されています。アフリカでは、多くの国々で選挙のたびに国情が騒然となるということがままあります。ザンビアは例外的な国で、今年の選挙でも大きな紛糾もなく実施されたと報道されています。但し選挙期間中に3人が殺されるという報道はありました。

ザンビアは独立以来、経済成長においても順調な国の一つでした。それは、この国が鉱物資源である、露天掘りのできるほどの大量の銅の生産に支えられていたことが大きかったといえます。ところが最近になって銅の国際価格が下落し、また銅のみに頼っていたために、2015年の経済成長率は過去最低にとどまっています。現在、銅産業関連の従事者の失業率の増加、また電力事情の悪化で計画停電(最低8時間から10時間の停電)などで工業やサービス産業にも影響を与えています。これとあわせてインフレ率も20%と諸物価の高騰が続いていて、国民の生活を圧迫しています。世界銀行は国民の約60%が「貧困ライン」を下回っていると発表しています(世界銀行の貧困ライン(国際貧困線)の定義では、1日あたり1.90ドル未満で生活する人々を「貧困層」とみなします)。

今後5年間の任期のうちに、経済を浮揚させ、雇用問題を解決できるかが、ルング政権にかかっていると言っても過言でありません。今回の選挙結果は僅差による勝利でしたから、今後の政権運営にもやりにくさがあると考えられます。

中国の影響

ザンビアをはじめとして、アフリカ54カ国で中国の経済支援や投資を受けていない国はないといっても過言ではありません。実は昨年来の中国経済の失速に合わせて、世界のエネルギー価格や鉱物価格も低迷しており、ザンビアの経済も今後さらに厳しい状況になるのではないでしょうか。ルング大統領の力量が試されています。

TICADⅥの影響

8月に日本政府が主催し、ケニアのナイロビにおいてアフリカ開発会議(TICADⅥ)が開催されたばかりです。参加したアフリカ諸国からも日本からの投資への期待が集まりました。アフリカ諸国にしてみれば、中国でも日本でもアフリカの経済を安定的に成長させてくれる国であれば、相手を選ばないという姿勢に変わりはありません。民主的な国でなければならないという、以前の被援助国の選考基準も大きく変わりつつあります。

プロジェクトから国会議員が生まれました

ジョイセフのコッパーベルト州で実施している妊産婦・新生児保健ワンストップサービスプロジェクト地区でプロジェクト実施の責任者を経験した人物が今回の選挙で国会議員に当選しました。彼は、地域住民の保健・教育そして雇用の改善を公約として闘ったと聞いています。

今ザンビアの多くの国民が望んでいるのは、「政治」的混乱ではなく、「雇用」や「生活」の改善であるという選挙だったのではないでしょうか。

(ジョイセフ 常務理事 鈴木良一 2016年9月、東京にて)