日本:梅毒患者が急増、1999年以降最多2778人に

2016.9.20

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日本:梅毒患者が急増、1999年以降最多2778人に

国立感染症研究所の発表によると、2016年8月28日までに報告された今年の梅毒患者数が2778人で、現在の届出方式になった1999年以降で過去最多となったことが分かりました。

都道府県別では、東京都が1098人と最も多く、次いで、大阪府が362人、神奈川県が168人となっています。都市部で多い傾向があります。

また、専門医は、2016年末までに患者数は4000人を超える可能性もあるとの予測を発表しています。2011年には全国で届出数が827人、2015年にはそれが2697人に増えています。増加の傾向に警鐘を鳴らしています。

とりわけ女性の感染が深刻であると報告されています。今回の発表でも、2010年以降の5年間で5倍となっています。特に感染数が多い年齢層は20歳~24歳です。

「梅毒」は「梅毒トレポネーマ」という細菌に主に性的接触によって感染し、初期には「しこり」や「ただれ」などの症状が出るほか、妊婦の場合、胎盤を通じて胎児に感染し、死産や重い後遺症を引き起こすおそれがあります。最悪の場合は全身症状となり命の危険さえあります。かつて日本は明治から昭和時代にかけて「花柳病」としても経験しており全国的な対策がとられてきました。当時は「公娼制度」があり、その予防対策は今よりも「ピンポイント」で行うことができたと考えられます。しかし現在は、出会い系サイト、風俗店等もあり、対象の捉え方が非常に難しくなっています。

性感染症を食い止めるために

厚生労働省では「予防措置としてコンドームを適切に使用して、症状が出たら早期に治療してほしい」と呼びかけています。

世界的にはHIV/エイズの感染が依然として収まっていません。予防対策としてコンドームの使用が呼びかけられています。「コンドーム」によって、多くの性感染症の予防が可能になることは分かっているにもかかわらず、なにゆえに、日本では「梅毒」が増えているのでしょうか。梅毒をはじめとした性感染症の発症は、やはり性教育の不足や、一人ひとりの認識・行動、意識の低さなどの問題が指摘できます。意識や行動の変容のためのコミュニケーション(BCC)のさらなる重要性が出てきています。

自覚症状が出にくいことが、更なる感染を引き起こしているのも事実です。自分だけは感染しない、自分のパートナーは決して感染者ではないという「過信」などが挙げられます。しかし、これらの「隠れ感染者」も含めて分析してみると、不特定多数の相手との性的接触(性交渉)が原因となっていることが多いことも分かっています。

専門家によると、梅毒はHIVよりも感染力が強く、性交渉以外でも、たとえばキスやオーラルセックスはもちろん、食器などに付着した唾液などからも感染する可能性があります。

現実には、届けられた数(2778人)をはるかに超えた何倍かの感染者数が想定されると推測できます。またこの感染は日々拡大しているとも考えられます。また治療を続けながら、性交渉は梅毒の感染を隠しても可能ですから、とどまることを知らない拡大も懸念されます。現在の約3千人の感染者が、もしや「倍々ゲーム」で拡大していくことも容易に想像できます。

あらゆる手段を使って、また、あらゆるメディアを駆使して、予防措置を講ずることを強く求めます、また、性交渉の時には、コンドームを使うという命の教育もさらに推し進めることが望まれます。また、中長期的は、思春期・若年層に対する、早期の実践的な性教育が求められると考えます。

すでに「待ったなし」なのではないでしょうか。

(ジョイセフ常務理事 鈴木良一 2016年9月、東京にて)