ガーナ活動報告:よりよい母子継続ケアの提供を目指して
2017.12.22
- ガーナ
- レポート
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2017年の1月より、保健施設までのアクセスの課題が大きいイースタン州コウ・イースト郡で、妊娠中から赤ちゃんが2歳になるまでの母子継続ケアの強化のための活動を実施してきました。
この活動では、母子保健に関する知識や情報を地域住民に届けるため、施設と地域住民をつなぐ母子保健推進員を養成しています。また、既存のコミュニティ保健委員会を活用して、母子保健向上に向けたコミュニティサポート体制づくりを行っています。さらに、5S※による保健施設の環境改善、保健施設を利用する妊産婦や母子への接遇向上をはかり、利用者に喜ばれる質の良いサービスが提供されるよう、医療従事者の研修を行っています。
※5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、習慣を指します。日本の製造業分野で開発された職場環境改善および品質管理の手法です。
- 5~6月は、母子保健推進員が地域で活動する際に活用するツールを作成しました。保健スタッフや地域保健ボランティアとレビュー会合や個別で議論を重ね、地域住民にも分かりやすいようにツール開発してきました。このツールは、地域住民に対して啓発指導を行うときに使用するもので、読み書きができなくても理解できるように、イラストや写真をたくさん用いて、妊娠中から出産、産後の注意点、必要なケアについてまとめました。現地保健局の承認が得られ次第、実物をご紹介します。
- 7月には、母子保健推進員の養成と制度導入への理解向上・導入促進の基礎づくりのため本邦研修を行い、ガーナから6人が来日しました。
東京で日本の母子保健や母子保健推進員制度に関して学び、長野市や須坂市では地域保健ボランティア(保健補導員)の活動視察や意見交換しました。研修修了時には、ガーナでどのように母子保健推進員制度を導入するかを検討し、行動計画が作成されました。
また、報告交流会“Meets Ghana”を開催し、支援者の皆さまに活動の紹介と進捗を報告しました。 - 9月には、保健施設スタッフ90名を対象に、クライアント(患者)の立場に立ったコミュニケーションと5S(整理、整頓、清掃、清潔、習慣)に関する研修を行い、クライアントがサービスを利用しやすい環境づくりに取り組みました。
- 10~11月には、地域と保健施設をつなぐ母子保健推進員の育成に携わる保健スタッフ38名を対象に、指導者研修を行いました。この研修で育成した指導者は、村から推薦された候補者に対して研修を行い、母子保健推進員として地域で活動できるようサポートします。
- 11月以降は、各地域で母子保健推進員の養成研修を実施しています。
1月にプロジェクトが始まり12月まで、駆け足のように月日が過ぎました。現地の保健行政機関や関係者との打合せ、地域住民との話し合いや活動を続ける中で、少しずつ地域の女性が安心して妊娠・出産できる環境が整い、母子の保健サービスへのアクセスを改善できる基盤が整いつつあります。
1~4月の事業開始時には、保健行政関係者や現地協力団体のIPPFガーナ(ガーナ家族計画協会:PPAG)とジョイセフで構成するプロジェクト運営委員会を立ち上げ、事業計画の検討を行いました。また、現地でジョイセフ・ガーナ事務所を設立するなど、プロジェクト実施に向けた基盤整備を行いました。
ガーナのプロジェクトは、主にJICA草の根技術協力事業で実施しており、その他JKA様、ロッテ様、そして皆様のご協力があり、より住民のニーズに応えることができています。
参加した保健スタッフのハナコディアさん(左):
今回の研修で、患者や来院者のフレンドリーな対応方法と保健施設の環境改善方法など、新しい知識を学べてよかったです。特に身近なものを使ってすぐに実行できる5Sを取り入れて、清潔でクライアントもスタッフも利用しやすい保健施設にしたいと思います。
皆さまへお願い:妊産婦を緊急搬送する「オート三輪車」を届けたい
コウ・イースト郡は、山間地域のため起伏が激しく道路整備も遅れており、地域内での移動が大きな課題となっています。交通手段が限られており、貧しくて交通費を捻出できない妊産婦にとって、保健施設までの長い道のりは心理的にも大きな負担となっています。妊産婦健診や施設分娩などで施設を利用することを断念してしまう妊産婦は少なくありません。保健施設へ向かう途中で出産をした女性もいたそうです。
このアクセスの課題を解決するためにジョイセフでは、村から保健施設へ妊婦を緊急搬送する「オート三輪車」を購入し施設に寄贈します。
オート三輪車があれば、より多くの妊婦が緊急産科ケアを受けられるようになり、命を守ることができます。皆さまのご理解、そしてご支援をお願いします。