村で働く助産師さんの声

2018.5.28

  • 実施レポート
  • ベトナム
  • ベトナムの農村・遠隔地の住民にとって、村の保健所は健康を守るための拠り所です。しかし、村の保健所で働く保健スタッフの多くが、10年以上新しい知識や技術を学ぶ機会がないままでした。十分とは言えない知識や技術による保健サービスに、住民だけでなく、保健スタッフ自身も不安を感じています。
     

     
    そこで、ベトナムの「女性健康センターと助産師能力の向上プロジェクト」では、女性の生涯にわたる健康を守るため、農村・遠隔地の保健施設で働く助産師さんへの研修を実施しました。参加したのは、2015年から3年間で、計253名でした。

    プロジェクトでは村々を訪れ、村の女性に向けた健康教育や出張診療を行うと同時に、研修後のフォローアップを行いました。村で働く助産師たちからの、嬉しい声を、ご紹介します。
     


     
    フエ省の山岳地域にあるアルオイ郡の保健所で働く、助産師のロアンさん。プロジェクトでは、ロアンさんが研修に参加してから半年後にこの村を訪れました。これまで、道のりの険しさや経済的な理由などで病院へ行くのを拒んでいた女性や家族も、ロアンさんのカウンセリングを受けた後には、郡病院への紹介がスムーズになっているそうです。現在、多くの住民が村の保健所に来てくれるようになっていると話してくれました。

    「研修後、妊産婦へのカウンセリングで、つわりや陣痛などのしくみを説明したり、症状に合わせた具体的な対処や必要な栄養などを伝えることで、女性がとても安心していることがよく分かるようになりました。妊産婦だけでなく、思春期の女の子への性教育や、更年期の女性へのケアなど、一人でも多くの女性に、伝えていきたいです。」
     

     


     
    フエ省ナムドン郡は、数年前にフエ市からの大きな道路が通ってから、ずいぶんと交通が便利になったものの、村の保健所の周辺は、まだまだ起伏の激しい山道が多い地域です。

    「研修後の一番大きな変化は、自分の知識や技術に自信が持てたことです。母親の疑問に対して、なぜなのか理由を明確に説明できるようになりました。そして、カウンセリングなどを通してまずは相手を理解することが、適切なアドバイスやケアにつながるのだと、確信しています。これからも、村での健康教育を続けていきます。」

     

    と語るのは、村の保健所で働くホアンさん。
    研修後は、毎月1回、村の女性や住民を対象に、健康教育を行っているそうです。
     


     
    助産師のホンさんが働くフン・ハウ村の保健所でも、研修後のホンさんのカウンセリングを受けてから、保健所を再度訪れる女性の数が増えてきているとのこと。研修の学びが生かされ、成果が現れているようで、嬉しく思います。

    「プロジェクトの研修後、お産とカウンセリングの技術がとても役に立っています。特に、知識のアップデートだけでなく、ロールプレイやお産のモデルを使って何度も何度も繰り返し演習をしたことで、実践に役立つ技術を身につけられました。2週間の貴重な研修に参加できて本当に嬉しいです。日本の皆さん、ありがとう。」

     

     


     
    クアンチ省チェウ・フォン郡を訪れた日、助産師のトゥイさんが働く村の保健所で、早朝から出産が始まっていました。この保健所ではここ数年間お産がなかったとのことで、過去に出産に立ち会ったことのある保健スタッフはトゥイさんのみ。緊張の中、数時間後には、無事に3,000グラムの赤ちゃんが生まれました。

    「数年ぶりの出産でした。研修を受けて2年も経っていますが、出産介助の準備、カンガルーケア 、出産直後の母子のケア、カウンセリングまで、一人で正確にできました。今、助産師としての自分に、自信を持っています。」

     

    このチェウ・フォン郡では、プロジェクトによる指導者研修を受けた郡病院長であるズエン医師(写真右)の指導の下、2017年中旬から各村の保健所で、定期的に思春期の若者や更年期の女性への健康教育に取り組みを開始しているそうです。
     

     
    こうした声から、プロジェクト活動が目指している「女性の生涯にわたる質のよい包括的なリプロダクティブヘルス(RH)サービスの提供」や「クライアントに寄り添うサービスの提供」への理解が、少しずつ農村遠隔地の村々へと広がり、具体的な活動やサービスに現れていることを日々感じています。対象地域の農村では、今、より多くの女性が、質のよいRHサービスを受けることが可能となってきています。
    ジョイセフは、引き続き、村のRHサービスの担い手であり、女性に一番身近な相談者でもある助産師さんの活動を応援しています。
     

  • ベトナムプロジェクト

    ジョイセフは、2015年3月よりベトナム・フエ市で外務省の日本NGO連携無償資金協力を得てプロジェクトを実施しています。

    このプロジェクトが目指しているのは、妊産婦ケアの質を改善し、女性の生涯にわたる健康を守るため、リプロダクティブ・ヘルスサービス提供の担い手であり、女性の身近な相談者でもある助産師を中心とした、思春期から更年期までの質のよいリプロダクティブ・ヘルスサービス提供のモデルづくりです。
    1年目に設立した女性健康センターでは、質のよいリプロダクティブ・ヘルスサービスを提供すると同時に、併設する研修施設では農村・遠隔地で働く助産師を対象に研修を行い、遠く離れた村の保健施設でもよりよいサービスが届けられるよう、助産師の能力向上を図っています。