【報告】「2018年ジェンダー・ギャップ指数110位」を受けて メディア勉強会を開催

2019.2.5

  • 実施レポート

世界経済フォーラムによる2018年のジェンダー・ギャップ指数発表を受けて、メディア対象の勉強会を2018年12月21日、ジョイセフで開催した。日本は前年(114位)よりわずかに改善して、149カ国中110位となったものの、依然、多くの課題がある。

ジェンダー・ギャップ指数は「政治」「経済」「教育」「健康」の指標の総合点で判断される(参考資料)。勉強会では、三浦まり・上智大学教授/一般社団法人パリテ・アカデミー共同代表理事が、今回の結果を分析した。また、永瀬伸子・お茶の水女子大学教授が、特に経済分野の日本のジェンダー課題を指摘した。

GGI勉強会参考資料(PDF)

三浦教授は、政治分野では、日本は順位が下がり、世界から取り残されていることを指摘。なお、指標の一つである女性の閣僚数は、2017年1月(3人)のデータが反映されており、2019年のジェンダー・ギャップ指数の数値には2019年1月(1人)のデータが反映される可能性が高いため(2年ごとの更新のため)、さらに順位低下が予想されるとした。

また、「クオータ制」を130カ国が導入し女性議員の増加ペースを早めたことを指摘。国際的には、人口は男女半数であるため、女性の割合を定める「クオータ」から、男女同数を原則とする「パリテ」が潮流となっていることも説明した。パリテの理念を取り込んだ「政治分野における男女共同参画法」(2018年5月公布・施行)が効果を持つことに期待を寄せた。

教育分野では、高等教育の男女差の順位が下がったことを説明。数値に直接は反映されていないものの、2018年、医学部入試で女性差別が発覚したこと、その理由として「女性はコミュニケーション能力が高い」と面接で点数操作をした大学の事例を挙げ、「女性差別を『女性差別』と理解していない教育者がいることが大きな問題」と指摘した。さらに、デジタル技術の発展によって男女格差の拡大が懸念されるとした。

永瀬教授は、経済分野でのジェンダー課題をデータで紹介した。日本では、労働時間の短時間性が、顕著な低賃金につながる給与体系があることし、「『ケア労働(家事・育児・介護など)に責任がある人は低賃金でよい』と長く黙認されてきた。この認識を根本から変える必要がある」と話した。女性は、ケア労働に責任がある場合が多いため非正規職が多いこと、正規職でも管理職についていない割合が多く、正規職でも男女の賃金格差が大きいことを示した。また、勤続年数や長時間労働が、賃金や人事評価に大きく影響する日本の雇用システム自体にも疑問を呈した。実際、このような状況のなか、正社員を続けながら出産する女性が近年増えてきたものの、(勤務時間が長くなる傾向がある)正社員として働きながら出産・育児をする困難さは十分に解消されてはいないというデータも示した。

福田友子(2019 G20サミット市民社会プラットフォームジェンダーワーキンググループ国内コーディネーター/ジョイセフアドボカシー・マネージャー)は、市民社会が提起している日本のジェンダー課題を説明した。セクハラ防止・処罰のための法制度が整っていないこと、日本政府が女性差別撤廃条約の選択議定書に批准していないことや、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の課題を説明した。これらの問題提起や課題解決の気運を高めるため、市民社会が行っている提言活動(例:SDGsボトムアップ・アクションプラン)も紹介した。SRHRについては、産むか産まないかなど、女性自身の選択を尊重することが前提であることを強調した。

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