I LADY. 勉強会 開催レポート ~北欧・ヨーロッパ・オセアニアのSRHRの取り組みから学ぶ~

2019.4.16

  • アドボカシー
  • イベント告知

4月第2週、ジョイセフが東京連絡事務所を務める国際家族計画連盟(IPPF)の北欧、ヨーロッパ、オセアニアなど先進国の加盟協会から代表者が東京に集まり、情報交換会を行いました。これらの国々では、日本と比べて性教育の内容が豊かで、避妊手段も多く提供されています。ジョイセフは、彼らと知識を共有し、日本におけるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の推進について考えるための勉強会をI LADY.アクティビストやジョイセフフレンズを対象に開催し、約30人が意見を交わしました。

 勉強会に参加したIPPF加盟協会のメンバーの出身は、デンマーク、オーストラリア、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンの各国。加えて、IPPF本部(イギリス)と東・東南アジア・大洋州地域事務局(マレーシア)からも代表が来日し、計11人となりました。日本を代表して、日本のセクシュアルヘルスを守る環境づくりのために活動する「#なんでないの プロジェクト」代表の福田和子さんがパネリストを務めました。

 日本で生まれ育った福田さんは、スウェーデンでの留学生活中に女性の体を守るさまざまな避妊法や情報に触れ、それらが日本には存在しないという気付きをもとに「#なんでないの プロジェクト」を立ち上げました。この日の勉強会では、福田さんが極めて抑制的なトーンで行われている日本の性教育の現状と、各国で若者向けに提供される性知識情報サイトなどを紹介。日本では世界で使われている避妊法のほとんどが認可されておらず、認可されているピルなども高価で、緊急避妊薬は健康保険が適用されないために約1万5000円以上という破格の負担を強いる現状の問題を指摘しました。加えて、望まない妊娠をした時に中絶薬が未認可の日本では多くが外科的な掻爬(そうは)法、つまり器具で胎児を掻き出す古い手法の中絶が行われていること、望んでいない妊娠を誰にも相談できなかった女性が、産んだ赤ちゃんを遺棄してしまうケースなどにも触れ、「日本にも現実に即した性教育があれば、私たちの生活は全く違ったものになるのでは」と問いかけました。

 続くパネルディスカッションでは、オランダのRutgers(IPPFオランダ)から事務局長のトン・コーエネンさん、スウェーデンのRFSU(IPPFスウェーデン)から国際事業担当マネージャーのヨナス・ティルベリさんが参加。「14歳の女の子が受けられる避妊サービスには何があるか」「包括的性教育は何歳から始まるか」について両国の事例を紹介しました。

 「14歳の女の子が受けられる避妊サービス」については、オランダでは「12~16歳の子どもに対する経口避妊薬(ピル)は比較的安価(3カ月で約20米ドル、およそ2200円)で、基本的に親の同意が必要だが、難しいケースでは医師の判断だけで処方箋を出せる。緊急避妊薬は薬局で無償で提供される」、スウェーデンでは「ユースセンターでの助産師やカウンセラーとの面談を経て、コンドーム、ピル、ホルモンパッチ、パッチ、IUD(子宮内避妊具)、注射法など、スウェーデン国内で入手できる避妊手段の中からその人に最も合った選択肢が無料で得られる」といった違いがあるそうです。その一方で、両国とも「性教育は小学校入学時(6歳)に自分の体や人間関係などについて学ぶことから始まり、徐々にジェンダーやより性的な内容に触れていく」「初めての性行為の年齢は両国とも18歳程度と遅くなった」として、「性教育が若者の性行為の若年齢化や性の乱れにつながる」という仮説は両国には当てはまらないことを指摘しました。

 その後、参加者はテーブルごとに分かれて、日本での包括的性教育の導入と、避妊手段へのアクセス改善について議論。日本はヨーロッパなどと比べ50年遅れているという指摘に加えて、「ロビイングなどで政治家に働きかける、女性の政治家を増やす」「コミュニティーからの発信を継続する、世論を変えていく」「国際基準の順守を促す」といった社会での活動から、「自分の体に自信を持ち、決定権を持つ文化を養う」「医師以外の医療関係者も避妊手段を提供できるようにする」などのより個人に焦点を当てた提案まで、さまざまな意見が生まれました。

日本が、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の分野でいち早く国際基準を取り入れていけるように、ジョイセフは、「I LADY.」やアドボカシー活動を通じて、関連団体と連携しながらSRHRの意識向上の活動をさらに強化していきたいと思います。

I LADY.キャンペーンについて詳しくはこちら