TICAD7公式サイドイベントを開催しました
2019.9.26
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ジョイセフは、2019年8月28日から30日にかけて、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)で、二つの公式サイドイベントを開催しました。29日のイベント当日はいずれも多くの参加者が会場に集まり、アフリカにおける母子保健や女性の健康、ジェンダー平等について議論しました。
国連人口基金(UNFPA)、国際家族計画連盟(IPPF)との共催で行われたセッション「女性の健康と権利が最優先~アフリカにおけるUHC達成に向けて~」では、冨永愛ジョイセフアンバサダーが総合司会を担当。第一部では、あべ俊子外務副大臣、武見敬三参議院議員、ナタリア・カネムUNFPA事務局長、アルバロ・ベルメホIPPF事務局長が登壇し、日本のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現に向けた取り組みや、UHCの国際的な潮流についてスピーチを行いました。
あべ副大臣は、日本が外交政策の一環としてUHCに取り組んでいるとした上で、アフリカを含むすべての女性が健康を享受できる社会の実現のため、国際機関やNGOともパートナーシップを組んでセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)を推進していくことが重要と述べました。武見議員はグローバルヘルスの課題解決には疾病に注目したアプローチと医療保険システムに注目したアプローチがあり、2008年の洞爺湖サミットで日本がシステムアプローチを導入し、SDGsにも反映された一方で、ミレニアム開発目標の期限である2015年にはゴールを達成できなかったことを指摘。医療関連指標の改善だけでなくジェンダーやSRHRの視点をUHC政策に織り込み、政策主導でジェンダーを解決していくことの重要性を強調しました。
カネムUNFPA事務局長は、SRHRサービスの基礎パッケージをUHC政策に織り込むために活動していることを報告。1994年のカイロ人口開発会議でSRHRが基本的人権だと認められて以来、様々な進歩がある一方で、アフリカでは若い女性だけにHIV感染率の上昇が見られ、難民や障がい者など脆弱な人たちのSRHR推進など数多くの課題が残っており、それらに優先順位をつけて取り組んでいく必要があると指摘しました。ベルメホIPPF事務局長は、特にサハラ以南アフリカにおける母子保健の課題について取り上げ、世界の医療費のうちアフリカに使われるのはわずか1%に過ぎないと強調。経済的理由はもとより文化的、社会的な障壁によって女性が医療サービスを受けることが阻害されてはならないとして、各国がSRHRを政策に織り込むよう訴えました。
第二部では、アーサー・エルケンUNFPAコミュニケーション戦略的パートナーシップ局長のファシリテーションの下、ボツワナのユニティ・ダウ外務国際協力大臣、世界保健機関(WHO)の山本尚子事務局長補、IPPFトーゴ(ATBEF)でピア・エデュケーターとして活動するエメファ・シェリタ・アンコウさんの3人がパネルディスカッションを行いました。ダウ大臣は、「教育相を3年間務めた時に、子どもが学校をやめる理由は学校外にあることが多く、女子では若年妊娠がその理由の一つであることを実感した。校外の環境でこそ子どもたちを守る必要がある」と指摘。一方、山本さんは、健康の面で女性には女性ならではのニーズがあり、それに対応するのがSRHRだとした上で、「すべての人が費用を心配せずに医療サービスを受けられるのがUHCであり、保険でカバーされない女性がもっとも重要なターゲットになる」との考えを示しました。
トーゴで若者にSRHR情報を発信するピア・エデュケーターとして活動しているエメファさんは、若者の人口比率が高い自国での課題の一つとして、若い女性の望まない妊娠を挙げました。これが妊産婦の死亡や安全でない中絶などにつながっているだけでなく、妊娠した女の子が学校を中退することもあるとして、特に地方においてSRHR情報が十分に行き渡っていないことを原因の一つと述べました。
その後の質疑応答では、女性への結婚圧力や、今後に向けてセクターを超えたアプローチを展開していくことの重要性などが議論されました。
29日午後に行われたセッション「若者の力~SRHRから始めるジェンダー平等~」では、日本、トーゴ、レソトのユース・アクティビストが肩を並べ、各国の問題の共有と解決に向けた方針を議論しました。
最初にあいさつしたジョイセフ事務局長の勝部まゆみは、「アフリカ大陸の人口の60%は24歳以下のユース世代であり、これは世界のユース世代の5人に1人に当たる」と指摘し、若者が能力を開花させ、世界からの期待に応えて活躍するためには、若者たちが男女問わず健康で、自分の将来を自分で決める権利を享受できなければならないと強調しました。一方、IPPF アフリカ連合連絡事務所のサム・ヌテラモ事務所長は、アフリカの若い世代を後押しするために教育を、誰もが受けられるようにすることと労働機会の創出が重要だとしました。併せて、HIV/AIDSが若者、特に女性に大きな影響を与えているほか、若年妊娠や安全でない中絶など女性特有の課題もあることから、政府が若者のニーズに応えた政策を実行していくことが不可欠だと述べました。
続けて、アフリカと日本のユースを代表して、3人の登壇者が現状と課題を報告しました。トーゴの若者ピア・エデュケーター、エメファ・シェリタ・アンコウさんは、トーゴの妊産婦死亡率が出生10万対368と高い背景には、15
レソトの遠隔地で助産師として働きながら、携帯アプリを使ってHIV/AIDS患者をサポートするMobiHopeを創設したマメロ・マヘレさんは、包括的性教育が高校に導入され、全出産の55%が専門技術者の介助の下に行われるようになるなど、母子保健をめぐる環境に改善がみられると説明しました。一方で、若い人がSRHR情報を十分に得られないことがいまだに高い妊産婦死亡率につながっているとして、テクノロジーで遠隔地の医療問題を解決するために携帯端末を使ったMobiHopeを開発したと語りました。
日本の若者を代表して壇上に立ったちゃぶ台返し女子アクション学生メンバーの戸谷知尋さんは、総務省の調べでわいせつ行為や性暴力を受けた若者が6割に上るにも関わらず、被害を受けた側に原因があるのではと非難されたり、性的同意などについて学校で学ぶことがなかったりする現状を踏まえて、ハンドブックの作成や大学当局への性暴力問題の認知の働きかけなどの活動を行っていると話しました。
その後のディスカッションで戸谷さんは、「日本では、『性の話をするなど恥ずかしくないのか』と責められることもあるが、トーゴやレソトではそういうことはないのか」と尋ねました。エメファさん、マメロさんはいずれもそうしたプレッシャーはあるとしたうえで、「友人のひとりが妊娠して、学校を中退せざるを得なかった。女性の未来のために、非難されても活動は続ける(エメファさん)」、「助産師として、私には国を変える責任がある。みんなが聞きたくないことだとしても、これが現実だと伝えていく(マメロさん)」と、SRHR分野の啓発活動にかける決意を示しました。
IPPFはセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(SRH)に関する若者マニフェストの発信を目指すなど、若い世代のニーズを反映したSRHR推進に力を入れています。IPPF東京連絡事務所として、ジョイセフもIPPFや世界各地の加盟協会とともに活動を続けていく方針です。