国連総会報告を通じて、これからのSRHR推進を議論
2019.11.12
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ジョイセフは2019年11月6日、東京都文京区の文京シビックホール会議室で、プラン・インターナショナル・ジャパン、国連人口基金(UNFPA)東京事務所と共同で、「SDGs採択から4年。国連総会参加報告とセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツを考える〜国際人口開発会議25周年(ICPD+25)に向けて」を開催しました。当日は、9月にニューヨークで行われた国連総会ハイレベル会合ウイークで初のSDGサミットや気候行動サミット、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)*サミットなどが開催されたのに伴い、会議の内容を総括し、今後の日本国内でのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)推進のあり方について議論しました。
ジョイセフ事務局長の勝部まゆみは、開会あいさつで「今回、UHC政治宣言の中でSRHRの重要性が明言されたが、現実には日本でも、世界でも、女性を取り巻く環境は厳しく、むしろ女性の自己決定権をせばめようという動きすらある」と指摘し、今後のためにどのような活動を展開していくべきかを考えたいと訴えました。
*ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC):全ての人が適切な保健医療サービスを、支払い可能な価格で受けられる状態
イベントの第1部では、日本の市民社会の代表として“国連総会ハイレベル会合ウイーク”に参加したメンバーが、現地での会議の様子などを報告しました。
一般社団法人SDGs市民社会ネットワークの久保田将樹さんは、「第74回国連総会のハイライト」と題し、一連の会合とSDGサミット(SDGsに関する首脳級会合)初開催の意義について解説しました。持続可能な開発目標(SDGs)に関する初のサミットとなった今回は、SDGsの指標に基づく進捗状況レビューを行い、成果文書となるSDGサミット政治宣言を採択。「誰一人取り残さない」という理念を再確認したと述べました。
持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)事務局の大久保勝仁さんは、日本の若者の声を集約して政策に反映することを目指すJYPSとして、今回のハイレベル会合ウイークで行なった活動を報告。六つのリーダーズ・ダイアログの中でも、特にSDGs達成の加速のためにどのような介入が重要か、「若者世代として、自分たちが政策を作っていくのだという自負と、SDGsを構築していく責任を感じた」と語りました。
第2部では、JYPSの山口和美さんがファシリテーターを務め、国連総会ウイーク中に開かれたUHCサミットと、そこで採択されたUHC政治宣言、および11月12-14日に開催されるナイロビ・サミット(ICPD25)を踏まえて、同宣言に織り込まれたSRHRの実現について議論しました。
ジョイセフのアドボカシー・マネージャーとしてUHCサミットに参加した斎藤文栄は、UHCに関する国連初の政治宣言採択を巡る動きについて報告しました。UHC政治宣言の採択に当たっては、SRHRを織り込むことに反対する米国など21カ国と、オランダをはじめとする織り込み推進派の58カ国の間での駆け引きがありましたが、結果的にはSDGsの文言に近い形で織り込まれることとなり、関係者はおおむね好意的に評価していることや、政治宣言の採択に向けて日本が主導となって各国の間を取り持ったことなどを紹介しました。その上で「国際的な宣言はできたので、今後は各国の中でどうUHCを実現していくかが問われています」と強調しました。
プラン・インターナショナル・ジャパンでアドボカシーオフィサーを務める澤柳孝浩さんは、UHCの達成は、多くの政策で見落とされがちな10〜19歳のいわゆる“思春期世代”を無視しては実現不可能だと指摘。毎年120万人、1日あたり約3000人が死亡する思春期の健康問題を解決していくためにはSRHRの視点が重要だと結論づけました。
プラン・インターナショナル・ジャパンの国内支援事業準備チームリーダーを務める菅野亜希子さんは、日本国内の思春期世代の健康課題として、「早すぎる、あるいは意図しない妊娠・中絶」「性感染症への罹患」「性暴力・性的搾取の被害」の3点を挙げました。その上で、これらの課題を解決するためには包括的性教育の展開と避妊・性感染症などに関する情報・サービスへのアクセス向上が必要と指摘しました。
国連人口基金東京事務所長の佐藤摩利子さんは、「SDGsに織り込まれたリプロダクティブ・ヘルス/ライツは、25年前にカイロで行われた国際人口開発会議で宣言されたものとおおむね重複している」と指摘。カイロで国際社会が約束したSRHRの推進に、ナイロビ・サミットで再度コミットしようと訴えました。
その後のパネルディスカッションでは、英国のSRHRへのコミットメント宣言が今後のSRHR推進活動に与える影響や、日本のSRHR推進に役立ちそうな海外事例、日本社会や日本政府に求められるものなどについて議論を交わしました。会場からは、「若い世代が自らこうした課題に取り組んでくれていることは心強い」といった声や、「SRHRにおける弱者として、日本では優生保護法(当時)の下で行われた強制不妊手術の問題があるが、どう考えているか」など質問が上がりました。ジョイセフの斎藤は、「優生保護法については、1994年のカイロ会議で注目されたことがきっかけの一つとなって、今の母体保護法に改正された」と解説し、国際社会と連携して日本国内のSRHR推進を進めていくことの重要性を強調しました。
ジョイセフは、ICPD25周年を記念して開催されるナイロビ・サミットに向けて、「国内外の組織と連携したSRHRの推進活動」や、「アフリカにおいて、2022年までに2000人の保険医療従事者を育成」などのコミットメントを表明しています。また、12月にはナイロビ・サミットの報告会も開催する予定です。これからも、日本と世界のSRHR推進に向けて、さまざまな活動に取り組んでいきます。