UNFPAとともに、ガボンの少女たちの「若すぎる妊娠」を防ぐワークショップを開催しました。

2020.4.22

  • HOT TOPICS
  • 実施レポート
  • 人材養成

アフリカでは比較的豊かな国、でも若すぎる妊娠が課題

アフリカ大陸の西側、赤道の真下に位置するガボンは、広さは日本の約3分の2。本州と九州を合わせたくらいの面積に、人口は212万人。石油やマンガンなどの資源のおかげで比較的豊かな国です。そのため、国際機関などの支援規模は比較的小さいものとなっています。
 
そんなガボンでは、妊産婦死亡率(出生10万あたり)が252(注1)と高い状況です。その大きな理由のひとつが、若すぎる妊娠。

15歳から19歳の女性の3人に1人は妊娠・出産の経験があるというのです。若すぎる妊娠は、仮に命を落とさなくても、分娩停止による難産が原因で腟壁に穴が開き、膀胱や直腸とつながってしまう「産科フィスチュラ」という合併症の原因になるなど、女性の体にさまざまな負担をかけることになります。

産科フィスチュラにより排泄物が漏れ出てしまうことから、社会生活から排除されるなどの問題が起きています。また、周辺国と同様、若い世代では男性よりも女性にHIV感染者が多いことも問題です。15~24歳の女性のHIV感染率は1.9%に対し、同年代の男性は0.5%です(注2)。
ほかにも、若くして子どもを産んだ母親は、その子どもを実家や親戚などに預けて都会に働きに出ていくため、残された子どもが受け入れ先の家庭に居場所がなく、孤立してしまうことにもつながります。
 
こうした状況を受けて、UNFPAガボン事務所は若すぎる妊娠の予防に力を入れ、政府による包括的性教育への支援を開始していますが、地域によっては親からの反発を受けることがあるそうです。

2019年には児童虐待禁止の一環で、18歳未満での結婚を禁止する法律が施行されましたが、地方ではまだこうした取り組みの重要性が浸透していないのが実情です。
そこで、中央の取り組みを浸透させる戦略づくりに協力してほしいという国連人口基金(UNFPA)からの要請を受けて、ジョイセフが現地で、少女たちの若すぎる妊娠を予防するためにマルチセクターによる取り組みを後押しするため、コミュニケーション戦略づくりのワークショップを行いました。

現地のワークショップ参加者とともに(中央が吉留)

初めての国だからこそ、これまでの経験を大切に

ガボンは、ジョイセフにとって、初めてプロジェクトを行う国です。数字上での知識はあっても、経済や社会状況、地域の文化などについてはまったく想像がつかない状況でした。

「だからこそ、これまでジョイセフが多くの国で取り組んできた経験を活かして、実際に現地で作成するコミュニケーション戦略の内容については現地の人たちと臨機応変に一緒に考えていくことにしました」と、現地で活動した吉留桂は語ります。
 
実際にガボンの人たちと話してみると、全体的に物静かでありながら、自分たちでアイデアを出したり考えたりすることには慣れているという印象を受けたといいます。
その一方で、独立直後の1960年代から急激に進んだ都市化の影響で、人口の9割が都市で暮らしているため(注3)、地域社会での支え合いの仕組みが弱いなど、ガボンの社会特有の状況も見えてきました。
 
そうした事情を踏まえ、ワークショップでは「誰を対象に、どんなメッセージを、どこで発していくことで、国の方針である児童婚の禁止と若年妊娠の減少を実現するか」というコミュニケーション戦略を、参加者の経験とアイデアを取り入れながら固めていきました。

例えば、10代の子どもがいる親に国の方針を理解してもらうには、誰が、どんな場所でメッセージを届ければよいか。これまで保健に関するメッセージは保健所や学校でしか発信されていなかったので、市場や教会、ガソリンスタンドでも発信の機会を作ってはどうかなど、地元をよく知る人たちが、自分たちの戦略を作っていくというやり方は、ワークショップ参加者はもちろん、UNFPAの現地スタッフからも好評でした。

地域の地図を書き出し、どこでメッセージを発信するのが効果的かを議論

 

こうしてできたコミュニケーション戦略案は、まず数カ月間現場で試験的に実施する予定です。
その結果を踏まえて最終的な戦略を固めて教材などのツールを作成し、1年後に再度ワークショップを開いてその成果を振り返ることにしています。
 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、吉留は急遽出張期間を短縮して帰国を余儀なくされ、状況が収束するまで現地再訪はできませんが、UNFPAガボン事務所と連携し、ウェブ会議などを活用して、現地でのプロジェクトの進捗を支えていきます。

注1: WHO et al. “Trends in Maternal Mortality 2000 to 2017” https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/327596/WHO-RHR-19.23-eng.pdf?sequence=13&isAllowed=y
注2: https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/featurestories/2019/february/20190225_WCA_women
注3: 2018年、国連人口部調べ https://data.worldbank.org/indicator/SP.URB.TOTL.IN.ZS?locations=GA