ザンビア「ワンストップ」プロジェクト終了、取り組みは次のステップへ

2021.3.2

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 「ザンビア共和国ワンストップサービスサイトによる生涯を通した女性の健康づくりプロジェクト」(外務省NGO連携無償資金協力)が、2年10カ月の事業期間を経て、2020年11月に完了しました。
 このプロジェクトの前身は、2011年からユニクロ・キャスキッドソンの支援で始まった、マタニティハウス(出産待機施設)の建設でした。これは、遠い場所に住んでいて保健施設に通いにくい状況にある妊婦さんのために、出産予定日前から泊まれる場所を作り、保健施設での安全な出産を選びやすくする取り組みです。2014年からは、外務省の資金協力で「ワンストップ」プロジェクトが始まり、フレンズの皆さまをはじめとする多くの方の寄附にも支えられて大きな成果を上げました。
 そのシンボルとも言えるのが、マサイティ郡ンジェレマニ地区のワンストップサービスサイトです。ジョイセフが支援したこの施設は2019年、200以上の保健施設の中から、コッパーベルト州のベスト保健センター賞に選ばれました。今は郡の支援の下、保健スタッフの増員や救急車の供与が行われ、地域で緊急時の搬送の受け入れや、より大きな病院への搬送を担う施設としても機能しています。この施設を含め、外務省の支援によって完成したワンストップサービスサイトは、計5カ所となりました。

 ワンストップサービスサイトは、地域の人たちの意見を取り入れて設計し、安心して出産するためのメッセージを込めたペインティングも地域の人たちが中心となって進めています。ジョイセフが一方的に設置して引き渡すのではなく、地域とともに作り上げることで、住民にも思い入れが生まれ、地元のボランティアで構成される母子保健推進員(SMAG)も「ぜひこの施設を利用してほしい」と妊婦さんたちを連れてきてくれます。
 プロジェクトが始まった10年前と比べると、自宅出産は減少し、保健施設での出産が増加。初産は病院の利用が推奨されて、実際に病院での出産も増えてきました。それでも、プロジェクトが関わったワンストップサービスサイトでは母子保健棟を併設し、スタッフにクライアントフレンドリーな環境を目指すための5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)の指導を行うことで、「きれいで利用したくなる魅力的な場所」となっています。

未来に向けて、女性の自立を後押し
 現地で本事業を担当したジョイセフの後藤久美子は、「当初は“自分の村では絶対に妊産婦死亡を起こさない”という住民の強い意思のもとで始まったプロジェクトですが、事業終了後を見据えた活動計画を立て、今ではすべての事業地域で収入創出活動がスタート。住民自身の手で、女性の命を守る活動が続いています」と振り返ります。
 ワンストップサービスサイトは母子保健だけの施設ではなく、保健センターに近寄り難かった若者にとっても身近な施設にするためのユースセンター建設や、スポーツを通した若い女性のエンパワメントプログラム(スポーツ庁長官感謝状を受賞)の導入、若者ボランティアのリーダーシップ育成などにも取り組んできました。しかし、プロジェクト地域では産前・産後健診の受診率をはじめ、母子保健関連のさまざまな数値が改善された一方で、アフリカの多くの国と同様に10代の妊娠が増えています。これまでの経験や調査結果などを踏まえて、今後も10代の望まない妊娠や性暴力の予防に役立つライフスキル向上を目指します。

 また、株式会社リンク・セオリー・ジャパンの支援により、縫製技術の習得とオーガニックコットンの栽培によって女性の経済的自立を目指すプログラムも実施しています。今後も地域間の経験共有などを通じて、女性の自立に向けたスキル習得に力を入れていく方針です。
 長年、ザンビア事業に携わってきた船橋周は、「ザンビアの農村地域の女の子に憧れの職業を聞くと、大抵は学校の先生か看護師さんと答えるなど、将来のイメージが少ないのも課題の一つです。10代の女の子たちに自分を守る知識やスキルを伝えるとともに、彼女たちが自分の未来に豊かな夢を描く後押しを、さまざまな分野の協力者とともに進められればと思います」と話しています。

ワンストップサービスサイト事業 報告書