サプライチェーンにおける人権尊重に向けた労働環境改善のモデルケース モロッコ「海の男の健康向上プロジェクト」 女性の健康と権利 モロッコの試み
2022.11.17
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国際家族計画連盟(IPPF)は、世界144か国で、特にサプライチェーンの末端にいる労働者のような社会的弱者の人権と健康を守るために活動を展開しています。IPPFモロッコ(AMPF)は、今年6月までの2年あまり、日本政府の支援(IPPF日本信託基金:JTF)を受け、厳しい労働環境の下で漁業に従事する海の男たちとその家族の健康向上・家庭内暴力の削減を目指し、「海の男プロジェクト」を実施しました。
モロッコは、アフリカ経済発展の優等生で、今後ますますの成長が期待され、投資先として熱い注目を浴びています。また豊かな漁場に恵まれ、タコ・イカ・マグロ等、日本人の食卓に欠かせない水産物の主要な輸出国でもあり、日本とは非常に緊密な関係にあります。しかし、サプライチェーンの末端にいるモロッコの海の男たちの顔は、日本では全く見えず、彼らの生活ぶりに気を留めることはほとんどありません。
2022年9月、この活動現場を毎日新聞の小倉孝保論説委員が訪れ、毎日新聞10月20日朝刊に以下の記事が掲載されました。
この記事を受け、国際家族計画連盟(IPPF)とIPPF東京連絡事務所である公益財団法人ジョイセフは、2022年11月7日、モロッコの漁業に従事する男性への取り組みを通して、女性の健康と権利の向上につなげるこの画期的なプロジェクトに関するウェビナーを共催しました。
多くの関係者が参加して行われたウェビナーでは、倉光秀彰駐モロッコ特命全権大使から冒頭でご挨拶をいただいた後、まず谷口百合 IPPFチーフ戦略連携開発(東南アジア)がプロジェクト概要を説明。それを受けて、現地を取材し記事を執筆された小倉論説委員から、現地の男性や女性の置かれた状況や本プロジェクトのもたらす意義について詳細な報告がありました。
ビデオで出演した佐藤寛 ジェトロ・アジア経済研究所上席主任調査研究員は、世界の大きな流れとしてのサプライチェーンマネジメントの現状を説明した後、本件は画期的なプロジェクトではあるものの、同時に、企業関係者や日本の消費者の理解を促すためには、もう少し時間がかかるだろうと今後の課題についてコメントしました。その後の質疑応答では、メディアの果たす役割などが議論されました。
最後に石井澄江ジョイセフ理事長が参加者と登壇者へのお礼を述べた後、私たち1人1人がSRHRを自分事としてとらえることの重要性を指摘して閉会。
本ウェビナーで提起されたサプライチェーンにおける人権尊重については議論になることが多いものの、実際にどのような介入が有効なのか、未だ試行錯誤の段階にあります。IPPFとしても「海の男の健康向上プロジェクト」のような画期的な試みを、今後はモロッコ以外の国にもさらに広げていきたいと思います。
本ウェビナーはTICAD8の公式サイドイベントとして登録されています。