コトソ・リプロダクティブヘルス・センターのサービス開始から1年
2014.4.16
- ガーナ
- 実施レポート
一方、限られた保健スタッフでシフトを組んでいるため、複数のスタッフが出産や怪我などで休んだり、薬剤の在庫が切れたりすると、サービスの提供に大きな影響が出ることも分かりました。常に質のよいサービスを提供するためには、スタッフの配置や薬剤・医療資材の確保を含め、施設に来る来院者の期待に応え続け、信頼を得ることが重要です。円滑な施設運営や安定したサービスの提供のためには、施設や機材、スタッフに加えて、それらを常に適切に管理・調整するしっかりとしたマネジメントの体制が欠かせません。
一口に施設での出産を促すと言っても、自宅分娩が一般的な地域で暮らす女性にとって、施設で出産することには様々な障害もあります。施設から遠く、移動手段の確保が難しい場合は、産気づいてからでは間に合わなかったり、途中で出産してしまうリスクもあります。多くの場合移動には公共の乗り物を使うため、お金がかかるだけでなく、妊婦にとっては負担もリスクもあります。お腹の大きな妊婦が桟橋もない川岸からボートに乗り込んで川を渡るのは大変です。このような障害や制約を乗り越えて、施設で出産しようという強い動機づけが必要です。RHセンターの保健スタッフや地域ボランティアは施設での出産の重要性を伝えており、リスク回避のためRHセンターでの出産を希望するケースが増えていることも報告されています。
遠くの住民が苦労して施設に来ても、そこで迎えてくれるスタッフの対応が悪い、技能が低い、安心感がないなどの不満を感じてしまうと、次はもう来てくれない可能性もあります。2013年6~8月にかけて、コトソRHセンターで利用者満足度調査を行いました。サービスを受けた人に聞き取りを行う出口調査と、調査者が一般の来院者に扮してサービスを利用する覆面調査を実施し、RHセンターでどのようにサービスが提供されているか、またそれを利用した人の満足度はどうか、などを確認しました。その結果をスタッフにフィードバックするとともに改善のための対応策を話し合って、住民にとってより質のよいサービスを、より利用しやすくなるよう指導を行いました。保健スタッフにとっては、普段意識していない来院者や妊婦の立場になって自分たちの対応を省みるよい機会になりました。
この調査の結果、利用者は概ねセンターで提供されているサービスに満足していることが分かったものの、改善すべき点も明らかになりました。例えば、多くの来院者は週に2回コトソに市が立つ日にRHセンターを訪れます。特に対岸からボートでやってくる住民は、午後早い時間に出発する帰りのボートに乗り遅れないよう気をつける必要がありますが、市の日はRHセンターも混み合うため待ち時間が長くなり、出発時刻ぎりぎりになってしまうことがあります。そこで、RHセンターの方でも市の日には保健スタッフを多く配置するなどシフトを工夫すると同時に、市の日は待ち時間が長くなるため、なるべく早い時間に来るよう促していくといった対応をすることになりました。
コトソRHセンターは政府機関と民間組織の連携で運営されていますが、これはガーナでも珍しいケースのためモデルとなることが期待されています。RHセンターの運営委員会には現地の協力実施機関である政府機関(州・郡保健局、郡役所)、およびガーナ家族計画協会(PPAG/IPPFガーナ)、ジョイセフ、そして地域住民代表も参加しています。この委員会は定期的に会合を持ち、サービス提供状況を確認し、課題をひとつずつ話し合いながら対応しています。またプロジェクト終了後は持続・自立発展を確保して、質のよいRHサービスの提供はもちろん草の根の啓発活動を継続できるようになるために、その戦略や体制づくりに向けた協議を関係者の間で進めています。
- 目的
- 安全な妊娠・出産に焦点を当てた、質のよいリプロダクティブ・ヘルス(RH)サービスの提供と、住民に対する草の根の啓発活動を通した、対象地域の妊産婦の健康の改善
- 実施地域
- イースタン州コウ・イースト郡ヴォルタ川地区
- 実施期間
- 2011年11月~2014年12月
- 支援機関
- 外務省(日本NGO連携無償資金協力事業)
- 現地協力団体
- ガーナ家族計画協会(IPPFメンバー団体)・ガーナ国家保健サービス