世界の妊産婦死亡数が減少、 しかし、なお世界では28万7000人が毎年死亡している
2012.5.22
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- ジョイセフコラム
2012年5月16日のユニセフ(UNICEF)、国連人口基金(UNFPA)、世界保健機関(WHO)、世界銀行(WB)が共同で発表した「妊産婦死亡の動向:1990~2010(Trends in Maternal Mortality:1990-2010)」報告書は、世界の妊産婦死亡率が改善傾向にあり、その進展を認めながらも、ミレニアム開発目標の達成についてはさらなる国際社会の努力が必要であると訴えています。
この報告書によると、世界の妊産婦死亡数は、1990年時の54万3000人から、47%減少し、2010年現在28万7000人 まで低下したと推計。着実に成果を上げているとし、地域的な分析では、世界のほとんどの地域で進展が見られるが、アフリカのサハラ以南の多く国々に関しては、1990年時の妊産婦死亡を「2015年までに75%削減する」という、ミレニアム開発目標5の達成は難しいとしています。
いまだに、ほぼ2分ごとに1人の女性が、世界のどこかで、妊娠や出産に関する原因で命を落としている現実は解決できていないのです。一方では、それらの命は救うことのできた命であったとも分析しています。大きな死因は4つあります。それらは、産後の出血、感染症、妊娠高血圧症、そして、安全でない中絶です。99%の妊産婦死亡が起こっている開発途上国での、①家族計画サービスへのアクセスのさらなる向上、②助産技能をもった保健ワーカーへの投資、③緊急産科ケアへのアクセスの保障などがあれば「救える」命である、と明言しています。
今回の報告書では、2010年に高い妊産婦死亡数を示している40カ国のうち、36カ国がアフリカのサハラ以南の国々でした。また上位の2カ国だけで、妊産婦死亡の3分の1を占めています。その2カ国は、インドとナイジェリアで、インドが約20%で5万6000人、ナイジェリアが14%で4万人でした。
東アジア地域で、妊産婦死亡率削減で良好な成果を収めている国々においは、避妊実行率の平均が84%で、サハラ以南のアフリカ諸国では22%と、依然として低い状況でした。「家族計画へのアクセス」がいかに重要であるかを示しています。現在世界中で2億1500万人の女性が家族計画サービスにアクセスできないという「満たされないニーズ(Unmet Needs)」があり、これを満たすことは、すなわち、「人権」を守ることでもあると、国連人口基金は表明しています。
2010年の世界の妊産婦死亡率の平均は出生10万対210でしたが、サハラ以南ではそれが500と高い数値を示しています。
妊産婦死亡率(出生10万対)の大きい上位10カ国は以下の通りで、すべてがサハラ以南のアフリカ諸国でした。
「妊産婦の命と女性の命を救う」私たちのチャレンジは、これからも続きます。
落とさなくてもよい命は、あらゆる力をもって、救い、守ることが、私たちの使命だと思っています。
(2012年5月、東京)