日本の人工妊娠中絶の減少傾向続く
15歳~17歳で大幅減少、しかし40歳台では3年連続増加

2015.12.28

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2014年度の中絶件数18万1905件

厚生労働省が2015年11月5日に、平成26年度(2014年度)「衛生行政報告例」を発表しました。この中で、毎年人工妊娠中絶の届出の統計が発表されています。平成26年度の人工妊娠中絶の届出総数は、18万1905件と前年度よりさらに4348件(2.3%)減少しました。

かつて、昭和30年(1955年)(この時期は暦年で集計)に過去最高の117万143件あった人工妊娠中絶が18万台に減少したことは、母子保健・家族計画の知識や情報の浸透、性感染症予防のための手段の普及(コンドームの使用)による避妊効果や性教育の実施などの観点から大きな成果があったからだと言えます。また、最近では緊急避妊法等の周知・普及も中絶の減少に寄与していると考えられます。

15歳~17歳で大幅減少、40歳台では3年連続微増

さて、年齢別、地域別の分析もしてみたいと思います。まず、年齢別にみると40歳台以外では減少しています。20歳未満では7.8%の減少で、特に15歳~17歳で大きく減少しました(16.3%)。しかし、40歳台では、3年連続で微増しているということが明らかになりました。40歳台では、すでに子どもを産み終えて予期しない妊娠があったというケースが多かったと思われます。今後の対策のためにも専門家による分析が課題です。

人工妊娠中絶実施率(15歳~49歳女子人口千対)は、全体では6.9、20歳未満では6.1となりました。年齢階級別では、20~24歳が13.2と最も高い比率を示しています。既婚者で妊娠を望まない女性、未婚であるため産めない状況などの結果であろうと推測できます。

都道府県別の実施率

都道府県別で見ますと、実施率では、奈良県が最も低く3.4、鳥取県が10.4で最も高い数値が平成21年の報告から続いています。明確な地域格差が出ています。今後その背景にある原因を調べなければならないと思います。また、それに合わせた積極的な対策が待たれます。避妊に対する知識や情報不足、避妊手段が入手しにくい状況等が考えられますので、今後の対策が必要です。

かつて、避妊の失敗は中絶で解決するかのような、社会的な通念があった昭和30年代から多くの努力によって、この日までに18万台にまで減少させてきました。しかし、いまだに18万件を超える中絶が実施されていることは看過できません。そこに多くの女性の苦悩、悲しみや涙があったはずです。中絶件数が完全に「ゼロ」になって初めて母子保健・家族計画関係者の尽力が認められるのではないでしょうか。道のりは長いように思われますが、包括的な性教育と避妊や性感染症予防教育、それに付随した実践的指導が待たれます。

中絶:世界の実態は

世界全体の中絶の実態が分かりづらいのは、多くの国々が中絶を違法としているからです。違法であるがゆえに実態が表に出づらく不明な点が多いのです。少し数値が古くなりますが、国連やグッドマッハー研究所などが調査した推計では、2007年に4200万件(内48%が安全でない中絶)、2008年には4380万件などと発表されています。最新情報がありませんが、現在でも同様の数値を示していると推測できます。また、国際家族計画連盟(IPPF)によれば、毎年4万7000人の女性が、安全でない中絶による合併症で死亡していると報告されています(IPPF Vision 2020ジェンダーレポート)。

これらの事実は、リプロダクティブヘルス・ライツの重要な課題です。国によってはカソリックやモスレムなどの宗教的な課題もあり、中絶について正面から取り組めない状況もあります。合法的でないがゆえに危険な「闇中絶」による死亡率も高いのです。4000万件以上の中絶の事実は、世界の女性が命や健康を守る意味からもいまだニーズが満たれていないという実態を如実に物語っています。

(2015年12月、東京にて)

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