支援事例
ザンビア共和国ワンストップサービスサイトによる生涯を通した女性の健康づくりプロジェクト
ジョイセフは、「妊産婦・新生児保健ワンストップサービスプロジェクト(2014-2017)」の経験をもとに、地域の拡大及びより包括的な継続ケアを目的として、「ワンストップサービスサイトによる生涯を通した女性の健康づくりプロジェクト」を2018年から3年間事業として外務省の「日本NGO連携無償資金協力」により開始した。
これまで、既存の保健施設に、母子保健棟、マタニティハウス(出産待機ハウス)、ユースセンター、助産師住居、水タンクを建設し、質の良いセクシュアルリプロダクティブヘルス(SRH)に関するサービスと情報が一カ所で提供できるワンストップサービスサイトとして計2カ所、前事業の3カ所も含めるとコッパーベルト州に合計5カ所のワンストップサービスサイトを完成させた。
今期は、新規6地区におけるヘルススタッフや母子保健推進員(SMAG : Safe Motherhood Action Group)、若者ピア・エデュケーター(PE:Peer Educators)などの人材育成を実施し、前事業の10地区のサイトとあわせて合計16地区でのコミュニティ啓発教育活動を展開し、ワンストップサイトの視察やコミュニティ同士の相互経験共有を通してコミュニティにおけるヘルスプロモーション活動を促進した。
また、産前健診及び男性参加の促進を図るためのママパパクラス、スポーツを通した思春期の女性のエンパワメントなど新規のプログラムを導入し、教員や伝統的リーダーの巻き込みによる思春期保健をサポートする体制づくりを強化することにより、生涯を通した女性の健康づくりのための地域啓発教育と質のよい保健サービスの向上を目指した。
ワンストップサービスサイトは、農村地域におけるヘルスプロモーションの拠点として大きな役割を果たし、地域の人材育成を通して、コミュニティ主体による保健推進活動や収入創出活動を活性化させ、コミュニティのオーナーシップを醸成した。
VOICES for Change
- チーフ チワラ(マサイティ郡伝統的チーフ)
- このプロジェクトは、地域の人材育成と保健サービスの施設整備の両方を包括的に支援してくれました。
ワンストップサービスサイトのお陰で、SRHに関する保健サービスと情報提供が充実し、保健サービスがより多くの女性たちに届くようになりました。SMAGメンバーは、とても協力的で、継続的なコミュニティでの啓発教育活動を継続していることにより、住民の保健行動にポジティブな変化が見られました。それは、女性だけではなく、多くの男性も恩恵を受けています。
伝統的チーフとして、今後も地域での若年妊娠や性暴力予防を減らすことを推進していきたいと思います。
- ブレンダ ハモンガ(コッパーベルト州保健局シニア看護オフィサー)
- ワンストップサービスプロジェクトは、コッパーベルト州の3郡で実施され、これまでに合計5カ所に包括的な生涯の女性の健康づくりのためのワンストップサービスサイトが整備されました。
ワンストップサービスサイトでは、母子保健棟、マタニティハウス、助産師住居、ユースセンターの建設や基礎的医療機材の提供以外に、ヘルススタッフ、SMAGメンバー、若者PEなどの人材育成や地区運営委員会によるサポートもすべて含まれています。この包括的な取り組みは、州の農村地域における妊産婦支援として好事例のモデルとなり、大きな成果を残しました。
ワンストップができたことによって、保健サービスの質の向上につながり、また地域で積極的に啓発教育活動を行うSMAGメンバーや若者PEの活躍により、住民の保健行動に関する意識や知識の向上にも変化が現れました。なにより、保健センターまで歩いて4-5時間かかる地域の女性たちが、出産予定日前に宿泊できるマタニティハウスができたことは、これまで自宅出産していた女性たちの出産リスクを低減することに大きくつながっています。最後に、州保健局を代表し、多大なご支援とご協力を賜りましたジョイセフとPPAZ、日本政府、そして日本の皆さまに深く御礼申し上げます。
- ブレンダ ムウェンダ(ミベンゲ保健センター看護師)
- 2017年からミベンゲ地区で働いています。以前、私たちの地域にはマタニティハウスがなく、保健センターには小さな分娩室と部屋があるのみでした。保健センターまでの遠いアクセスに加え、出産時のプライバシーが保てないことも施設で出産することを妨げる理由の一つでした。また、若者が集まる場所がないため、若者が保健センターに行きにくい状況やヘルススタッフ1名の体制ですべての対応をしていることに限界がありました。
プロジェクトのお陰で、これらの課題を改善することができました。マタニティハウスが建設され、SMAGメンバーの紹介のもと、遠方の妊婦さんも事前に宿泊し、保健センターで出産するようになりました。そして、若者PEが育成され、ユースセンターで同年代の若者同士でSRHについて語る場所が確保できました。これにより、性感染症やHIV検査を受診する若者が増加、ヘルススタッフの住居建設により、ヘルススタッフが増員されました。SMAGのコミュニティでの啓発教育活動を通して、保健センターでの出産、産後健診、男性参加、家族計画の増加などにも成果として現れ、多くの行動変容が見られました。これまで自宅で出産していた女性は、SMAGの家族計画に関する相談や啓発教育により、避妊具を使用して出産間隔をあけて妊娠の計画を立てるようになりました。ジョイセフやPPAZの協力により、私の地域の住民たちの保健行動に変化が起こり、母子保健が改善できたことに心より感謝しています。
- 石井 澄江(ジョイセフ理事長)
- コッパーベルト州におけるワンストップサービスプロジェクトの実施団体であるジョイセフは、ザンビアのパートナー、友人そしてコミュニティの皆さまに心からのお礼を申し上げます。
ワンストップサービスがザンビアの皆さまによって完全に実施される日を、とうとう迎えることができました。この時にあたり、ジョイセフはプロジェクトの目的とゴールは達成されたのかと自問自答します。そして喜びと確信をもって「イエス」と答えます。
プロジェクト名であるワンストップサービスは我々の希望を表現しています。プロジェクトの究極の目標は保健スタッフと住民との「ゆるぎない信頼」を築くことにあります。それは強靭なコミュニティの基礎となるものです。新型コロナウイルスや未知のウイルスに襲われたとしても、この信頼があれば地域住民と保健スタッフは協働し、困難を乗り越えてゆけると信じています。「ワンストップサービス」は地域の誇りなのです。
プロジェクト概要
- 目的
- プロジェクト対象地域において、若者や妊産婦を含む女性の生涯を通した保健サービス利用へのアクセスが増加する
- 現地協力団体
- IPPFザンビア(ザンビア家族計画協会:PPAZ)、コッパーベルト州保健局、マサイティ郡保健局、ルフワニャマ郡保健局、ムポングウェ郡保健局
- 対象地域及び人口
-
コッパーベルト州
マサイティ郡人口: 140,452人
3地区(Njelemani,Lupiya, Chiwala)&5地区 (Mutaba, Kambowa, Mishikishi,Chilese, Kafulafuta)ルフワニャマ郡人口:98,000人
3地区(Mibenge, Lumpuma, Mukutuma)ムポングウェ郡人口: 110,744人
5地区(Kalweo, Mikata, Kanyenda, St. Anthony, Ipumbu)- 支援協力
-
日本NGO連携無償資金協力
長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科
順天堂大学スポーツ健康科学部 / S.C.P.Japan(Sports for Creating Pathways)
塩野義製薬株式会社
リンク・セオリー・ジャパン
Fay Designs
NOWSPAR (National Organisation for Women in Sports, Physical Activity and Recreation)
国際家族計画連盟(IPPF)
JOICFPフレンズ
企業・団体・個人からの寄附