タリバン政権となって1年2カ月経ったアフガニスタン。女性、子どもを取り巻く状況は厳しさを増しています。国際社会からの経済制裁が続く中、国内に資金が回らず、物資が不足し、ジョイセフが支援するクリニックには栄養不良の母子が多く押し寄せています。職を失う人々も増え、夫や家族からのDV被害で怪我の治療に訪れたり、PTSDや鬱(うつ)の症状を訴える女性も増えています。
リベンジマリッジ(犯罪に対して、その犯罪者の娘または妻を被害者と結婚させ、復讐を受けさせるという贖罪の方法。部族によっては慣習となっている)の被害も報告されています。治安は安定していますが、タリバンは警察や軍隊のような制服を着ているわけではなく、誰がタリバンなのか見分けがつかないため、人々は街を歩くだけでも「タリバンが見ているのでは」という緊張や不安があり、目立つような活動を自粛しています。
政変後もジョイセフフレンズや法人サポーターの支援により、母子保健クリニックの運営を継続できています
ジョイセフが支援している母子保健クリニックは分娩をはじめ、産前産後の健診、乳幼児健診など、いわゆる産婦人科と小児科の医療サービスの他、女性・子どものための内科、外科診療なども広く提供してきました。現地では文化的な理由で女性は男性に肌を見せられないため、クリニックには女性医師やスタッフが常駐し、女性が安心して医療保健サービスを受けられる体制を整えています。政変後多くのクリニックが閉鎖される中、この母子保健クリニックは、ジョイセフフレンズや法人サポーターの支援によって医療サービスの継続ができています。母子保健クリニックが開いていることが、女性たちの拠り所となり、毎朝早くから、クリニックが開くのを待つ母子の行列ができています。
また、アフガニスタンではタブーとされている避妊や性被害、DV、児童虐待などの問題も、カウンセラーが守秘義務を守りながら女性たちの相談に乗っています。気軽な会話から問題を見出して、医師の診察へ誘導したり、男性医師が家庭に介入することもあります。現在、1日に平均して3件のDVの被害が報告されています。しかし、タリバンは女性の権利を擁護する活動に否定的なため、クリニックではこのカウンセリング事業について政府への報告書には記載していません。
政変後、未曾有の食料危機が続き、栄養不良の妊婦、子どもが急増しているため、ジョイセフは多くの皆さまの協力を得て緊急の食料支援を実施しました。クリニックでは今でも、栄養不良の母子に対し、食事提供のサービスを継続しています。
クリニックフォトレポート
プロジェクト概要
- 事業目的
- 対象地域で唯一の母子保健に特化したクリニックとして、女性医療従事者が中心となり女性と母子に保健医療サービスを提供し、母子保健を向上する
- 事業期間
- 2002年~
- 対象地域
- ナンガハール州ジャララバード市 第4ゾーンの10村
- 対象人口
- 女性、母子、帰還難民 3万9000人
- 協力団体
- アフガン医療連合センター(UMCA)
- 活動内容
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- 母子保健サービス
- 臨床検査サービス
- 栄養指導を通じた母子栄養改善
- リプロダクティブヘルスカウンセリング(避妊、家族計画、ジェンダーに基づく暴力、PTSD、鬱含む)
- Author
甲斐 和歌子
アフガニスタンプロジェクト担当。女性クリニック支援、ランドセルなどの物資寄贈、マンスリーサポーター「ジョイセフフレンズ」の担当も兼務。ジョイセフに入ったきっかけは、九州で育ちながら培ったジェンダーに対する問題意識から。日本そして世界のジェンダー平等を実現したい。将来の夢は日本やアフガニスタンの女性が住みやすい世の中になること。