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アフリカ4カ国  妊産婦と女性の命を守る5年計画プログラム最後の地域会議を開催 ~サステナビリティ「持続可能性」をテーマに、ガーナとザンビアの関係者全員が一堂に〜

2023.1.31

アフリカ4カ国で2018年から5年間の事業として進めてきた「アフリカの妊産婦と女性の命を守る~持続可能なコミュニティ主体の保健推進プログラム」(武田薬品工業株式会社「グローバルCSRプログラム」支援)の最終成果共有地域会議(以下 地域会議)をガーナで開催しました。

地域会議は2022年11月28日、29日、30日と3日間にわたり、ガーナのイースタン州にあるコフォリドゥアという都市のキャピタル ビュー ホテル(Capital View Hotel)で開催され、ガーナの関係者が46人、ザンビアから11人、日本から7人の計64人が一堂に会し、オンライン参加の10人と合わせて総勢74人が参加しました。開催国のガーナからの参加者は、プログラムの実施に関わった人々に加え、中央政府、開発パートナー、現地NGOなども参加し、このプログラムの成果とその成果をもたらした方法、プログラム終了後に成果を持続させるための戦略を学びました。

この会議は、

  1. ガーナやザンビアでの成功事例や教訓を含むプログラムの成果を広く共有する
  2. ガーナのプログラム実施サイトの視察を通して、どのような人々がどのようにプログラムと自立発展戦略の実施に携わっているかを学ぶ
  3. プログラム終了後に成果を持続させるための戦略の実施状況の共有、戦略の更なる強化に向けたプログラム協議を行う

という3つの目的で開催されました。ジョイセフが支援プログラムで最も大切にしている「自立発展性」について、課題を共有しながら協議、確認する3日間でした。

参加者それぞれが、この地域会議で学んだことを自分の活動の現場に持ち帰ります。プログラムで導入した地域保健ボランティアによるSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)に関する住民や地域のリーダーへの啓発活動や、質の良いSRH(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス)のサービスが、今後も変わらず人々に提供され続けるために、持続可能な仕組みが地域で定着し、自立的な発展につながっていくようにすること。このような真の「ハンドオーバー」のためにも、今回の地域会議は、ジョイセフにとって大変意義のあるものでした。

2022年3月と6月にそれぞれプログラム支援期間が終了したタンザニア、ケニアに続き、ガーナとザンビアにおいてもしっかりと将来を見据えたハンドオーバーが実現できるよう、ジョイセフスタッフ(ガーナ、ザンビア、日本)一同、会議の準備を進めてきました。

地域会議の前日に事前打ち合わせをするジョイセフスタッフ(ガーナ、ザンビア、日本)


5年間の集大成。プログラムの実績がガーナの主要メディアでも報道されました

地域会議の初日には、来賓(ゲスト)による挨拶と各国参加者によるプレゼンテーションが行われました。
主催者を代表して、ガーナ保健サービス(GHS)のスフム郡保健局長フレデリック・オフォス氏が、参加者に向けて2018年から続けてきたプログラムや5年間の成果について、また関係者への感謝を述べました。

このプログラムは、2018年からケニア、タンザニア、ガーナ、ザンビアの4カ国で「コミュニティベースト」を中心に据えて活動を展開してきました、と語るガーナ保健サービス(GHS)スフム郡保健局長のオフォス氏 。

プログラム名 アフリカの妊産婦と女性の命を守る~持続可能なコミュニティ主体の保健推進プログラム
期間 2018年~2022年(5年間)
地域 ケニア、タンザニア、ザンビア、ガーナの保健サービスへのアクセスが悪く、リプロダクティブ・ヘルスのニーズが高い地域
主な対象 特に弱い立場に置かれている妊産婦や10代の少女
5つの目標
  1. 産前健診(妊婦健診)を4回以上受診する妊婦を増やす
  2. 施設分娩、もしくは訓練を受けた介助者による出産を増やす
  3. 産後健診の受診率を上げる
  4. 家族計画の利用率を上げる
  5. 10代の妊娠を減らすために、若者のSRHサービスの利用を増やす
成果 4カ国の延べ約135万人にSRHの知識やサービスを届けた

共催の武田薬品工業株式会社(オンラインで参加)をはじめ、ガーナ家族計画協会(PPAG)、JICA、日本大使館、ガーナ保健省、ジョイセフからそれぞれの代表が、5年間のプログラムに対する想いと謝意を述べました。


ガーナで最も購読されている新聞「Daily Graphic」に地域会議の様子が掲載されました。馬淵哲矢ジョイセフ評議員のスピーチ写真も。

5年間のプログラムの4カ国の裨益者の声をまとめた動画も共有されました。

 
会議の参加者より、ガーナおよびザンビアの、プログラム実施前と後を比較し、プログラムの成果が、活動の好事例とともに紹介され、活発な質疑応答やコメントが出されました。
コンサルタントの 相賀裕嗣氏(長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科教授)たちによるインパクト評価の結果も発表されました。

ジョイセフの吉留が、各国の好事例を紹介。これは冊子にもまとめられ、各参加者に配付されました。

プロジェクトの成果や好事例がまとめられた冊子

冊子PDF:Working together with the community

翌日のフィールド視察の目的と概要を説明するジョイセフガーナ事務所代表のオベン氏

3つのグループに分かれて、翌日のフィールド視察で取材する対象者別に、質問内容を出し合いました。

ジョイセフザンビア事務所のプログラム担当ムクウェナ氏が、グループワークの結果をまとめて、全参加者に発表しています。

ガーナのフィールドには多くの好事例がありました 〜地域会議参加者が、3つのグループに分かれて視察〜

Group 1
場所:スフム視察
取材対象:地域の保健運営委員会、 末端の診療所、 自治体や政府、 伝統的産婆との連携、 保健施設、 薬局など
Group 2
場所①:コウ・イースト
視察・取材対象:地域の保健運営委員会、 末端の診療所、 自治体や政府、 伝統的産婆との連携、 保健施設、 薬局など

場所②:アチマンサ
視察・取材対象:村の薬局、 地域保健ボランティア、 収入創出活動、 地方自治体との連携

Group 3
場所①:アッパーマニャ・クロボ
視察・取材対象:伝統的産婆との連携、 収入創出活動、地域保健ボランティアなど

場所②:イロ・クロボ
視察・取材対象:地域の保健運営委員会、 伝統的産婆との連携、地域保健ボランティアなど

スフムのゴジアセという村で。保健運営委員会が自主的に、野菜を栽培して販売したり、村の教会等で寄付を集めるなど、収入創出活動をしながら持続可能な運営ができているCHPS(末端診療所)で話を聞きました。

母子保健推進員に活動の内容を聞く。この末端の診療所では、ジョイセフが研修した5S KAIZENが徹底されて、整理・整頓・掃除・清潔・習慣が行き届いています。

現地の言葉を英語に通訳するジョイセフガーナ事務所のトーマス氏(右)

スフム郡の地方自治体と今後の持続可能な連携について確認しました。

プログラムに協力するスフム郡にある村の薬局の販売員を取材。彼らはプログラムで研修を受けて、顧客にSRHRについて話し、必要に応じて保健施設に顧客を紹介しています。

緊急避妊薬は村の薬局では10セディ(約100円)で販売されていました。ガーナでは2022年9月より国民健康保険が家族計画サービスにも適用されるようになり、公的保健施設ではカウンセリング、避妊具・薬、診療も無料になっています。

アチマンサ郡の地域保健運営委員会は、持続的な地域保健活動を推進していくために、短期・中期・長期的な収入創出計画を策定して活動に取り組んでいます。長期計画では、ヤシの苗を育て、村の中でプランテーションを始めるそうです。「1本のパームツリーから40年以上油を取り続けることができます。私たちは50年、100年先を考えています」と、母子保健推進員の一人が説明してくれました。

村の薬局に、プログラムにおける連携について、矢継ぎ早に質問をするザンビアからの参加者たち。

ザンビアの経験から、地域の若者が外壁・内壁にメッセージをペイントしたユースセンターは、ザンビアの経験を参考にしています(コウ・イースト郡コトソ村)。センターでの活動を企画運営しているユース諮問委員会のメンバーに、どんな役割を担っているのか、活動をする上でどんな困難にぶつかったかなど、互いの経験を聞きました。

イロ・クロボ郡にあるオテクプルプル保健センター前で挨拶をするジョイセフ山口(事務局次長)。

地域住民とヘルススタッフによる寄付金で建てられたユースセンター(アッパー・マニャ・クロボ郡アカティン村)を訪問。住民と保健従事者が連携して地域に根付き、継続してユースセンターを運営できる仕組みを学びます。コロナ禍で不足した手洗い用せっけんを地域保健ボランティアが作り、地域の人々だけでなく、郡内の公的保健施設に販売することで地域循環型の収入創出が実現。液体せっけんの作り方を学びました。

アカティン保健センター。ユースセンターの側にある小学校の子どもたちもたくさん参加して交流しました。

この地域では、伝統的産婆が保健センターでの健診・出産を推進するようになりました。

村の薬局(薬剤師の資格は無い)を囲んで意見交換。伝統的産婆や薬局と保健医療従事者の連携により、10代の妊娠の減少や家族計画へのアクセス増加につなげています。

プログラムで連携している村の薬局のテテ・ティモシ―Jrさん(21歳)
「この地域は若年妊娠が多いから、みんなが避妊にアクセスできるようにすることが自分の使命」

薬局として対応した内容を細かく記録し、毎月レポートを提出。

地域会議最終日、ジョイセフのプレゼンテーションは、日本のSRHR普及プログラム「I LADY.」と「ホワイトリボンラン」の活動事例共有から始まりました。聞いていた参加者からは、日本のジェンダーギャップや若者の自殺率の高さ、女性の避妊の選択肢が少なく、かつ高額であることへの関心が寄せられました。

最終セッションでは、この地域会議が終わった後のことについて考えました。参加者が自分のフィールドに帰り、今回の会議を通した学びを活かしてそれぞれが立てた「持続可能な計画」をさらに強化するために、地域の住民やリーダー、地方自治体関係者とさらに話し合います。
お互いの経験や個々に直面している課題(チャレンジ)を共有し、どんな対策案があるか、以下の7つのテーマで話し合い、発表しました。

7つのテーマ
  1. 地域保健ボランティアの活動持続について
  2. 地域保健ボランティアのモチベーションの持続について
  3. 啓発教材の持続的な活用について
  4. 質の高い保健サービスの持続について
  5. 地域のサポートシステムとローカルリソース開拓の持続について
  6. 様々なステークホルダー(関係者)とのパートナシップの持続について
  7. 保健施設での定期的なミーティングの継続について

今後さらなる地域のサポートを得るために、「地方で展開する活動の認知普及のための会議に、伝統的なリーダーたちの巻き込みを強化する」などの案が出されました。

次なる使命は、妊産婦死亡がゼロになる日まで、持続可能な計画を強化し続けていくこと

「プログラムの期限は終了しても、私たちには使命がある」ジョイセフの山口悦子の挨拶で、持続可能な計画の強化と全国普及を約束し閉会しました。

3日間の地域会議で、私たちは素晴らしいことを成し遂げました。まずは参加者一人ひとりを讃えたいと思います。
(中略)
 
この会議を通して、プログラムで達成できたことに加え、プログラム終了後の継続計画をさらに強化するために優れた実践例や教訓を確認することができました。
ガーナでのフィールド視察を通じて、実施のノウハウを学び、ガーナとザンビアの間で継続に向けた経験を交換し、意見交換をすることができました。
 
このプログラムの良いところは、先行してこのプログラムを卒業したケニアとタンザニアを含む 4カ国の間で、互いに学び合えることです。
ある村で始まったイノベーションは、他の国の村にも導入されました。
(中略)
 
イロ・クロボでの視察中、私たちのプログラムと協働している地元の薬局とザンビアから参加している助産師の2人のやりとりから、地域のSRHRの課題解決に向けた彼らの高いオーナーシップ、コミットメントがうかがわれ、私はとても嬉しくなりました。
 
彼らのような、地域保健ボランティアをはじめコミュニティの人々や医療従事者によって、継続に向けたな動きが自発的に生まれるようになると、それはもはやプログラムではなく、ジョイセフがさまざまな国で目指してきた「運動」であると言えます。
 
コミュニティの運動は、期間が決まっているプログラムとは異なり、外部からの支援なしに、コミュニティの人々が成果に満足するまで続きます。
このアフリカ4カ国のプログラムが始まって以来、私は、第二次世界大戦後の日本における妊産婦死亡率の急激な減少には「住民運動」が重要な役割を果たしたことを語り続けてきました。
今回、彼らの高いコミットメントとオーナーシップを目の当たりにし、5年間の私たちの歩みがこのような変化をもたらし、その変化が関係者一人ひとりに根付いていることに感動しました。
(中略)
 
ここで学んだことをそれぞれの国の仲間たちと共有し、各地域での継続計画をさらに強化してください。これがここにいる私たち全員の次なる使命です。
 
プログラム終了までの1カ月、各地域で成果普及会合を開催すると思います。そこでは皆さんがどうやって、妊産婦死亡がゼロになるまで、今後数十年にわたってこのプログラムの成果を発展させていくか、地域の人たちに共有します。
つまり、この会議は明るい未来への新たな始まりです!
 
改めて、すべての参加者と、この地域会議に参加できなかった多くの関係者に心から感謝します。
 
また、この地域会議を開催するにあたり、中央、州、郡レベルのガーナ保健サービス、郡役所、そしてスフム、アチマンサ、コウ・イースト、アッパー マニャ・ クロボ、イロ・クロボで私たちを受け入れてくれたコミュニティの人々の多大なご協力を賜りました。心から感謝します。

Author

小野 美智代
カンボジアの友人の妊産婦死亡をきっかけにジョイセフに入職。広報G、市民社会連携G、デザイン戦略室長を経て22年10月より事務局次長に。自他ともに認める熱血なお調子者。走りながら考える、ゼロから生み出すことが得意。色はゴールド。旅と酒とRUNが好き。14歳と8歳の娘たちと同い年の夫の4人家族。夫婦別姓目的の事実婚&新幹線通勤歴18年。