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世界のSRHRニュース:7 パキスタン、日本、アメリカ

2024.3.25

  • 世界のSRHRニュース

世界で起きているセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)関連のニュースをお届けします。

News1: パキスタンにおけるGBV

【出典】
2024年3月22日 パキスタン・オブザーバー紙 “Gender-based violence: Where Pakistan stands?

【概要】
ロイター財団が2022年に発表した報告書によると、パキスタンは世界で「女性にとって最も危険な国」第6位、DVでは下から5番目と低いランキングに位置している。下層社会だけでなく、上層社会でも、女性と女児が犠牲になる重大な事件が相次いでいる。

2022年10月までに、女性に対するジェンダーに基づく暴力(GBV)が63,367件起き、明るみに出ていない事例も多数あると見られている。パキスタンでは、身体的、性的、心理的なGBVが、制度、構造、文化(直接的、間接的)のレベルで発生しており、女性の尊厳、安全、自由を大きく損なっているとされている。

大きな要因として、性差別的ヒエラルキーと家父長的な社会構造が、女性を暴力の連鎖に巻き込んでいることが挙げられている。解決策として、政府機関や関係団体と女性の権利のために活動する国連機関や組織の連携は必須である。また、女性や女児の教育を奨励し、促進させるための経済的インセンティブの提供、デジタル化されたテクノロジーへのアクセスおよびスキルの向上も必要とされている。さらに、パキスタンの国際的なイメージ向上のためにも、立法機関がGBVの根本的原因を調査し、防止に尽力し、永続的で効果的な政策を立案することが求められている。

News2: 日本、被災地での女性や子どもの支援に遅れ

【出典】
2024年3月13日 The Japan Times “Gender gap persists in Japan’s disaster response
2024年3月20日 The Japan Times “Breastfeeding shirt keeps mothers safe in evacuation centers

【概要】
日本の自治体の災害対応が、女性の視点を取り入れていないことが、浮き彫りになっている。

2024年1月1日に石川県能登半島で発生した地震では、輪島市で生理用品など女性向けの物資は避難所に届いたものの、子供服や子供用マスクが不足したり、ベビーフードがなかったりした。また高齢女性用の尿とりパッドも不足した。

女性や子どもに必要な物資が十分に供給されない問題は、2011年の東日本大震災の時点ですでに指摘されていた。しかし、2023年の内閣府の調査では、多くの自治体で問題に対応する部署が定められておらず、防災・危機管理部門に女性が配置されている割合は、12.2%に過ぎなかった。

また、避難所で母親が赤ちゃんに授乳する際、プライバシーの確保が難しく、性的暴行を受ける可能性がある。授乳スペースは、設置が後回しにされることも多い。この問題に対し、茨城県に本社を置くモーハウスは、公共の場でも母親が目立たず快適に授乳できるシャツを含む緊急時授乳キットを製作、これを災害時用に確保する自治体が増えている。同社は、2004年の中越地震から、被災地や紛争地に授乳シャツを送り続けている。

静岡大学で災害をジェンダーの視点から研究する池田恵子教授は、「自治体の災害対策チームによる災害時計画策定プロセスに女性が加わることで、高齢者、妊産婦、障害者などの災害弱者への配慮の行き届いた介入につながる」と述べ、民間団体との協力の重要性も指摘している。

News3: 米バイデン大統領、リプロダクティブ・ヘルスを選挙キャンペーンの争点に

【出典】
2024年3月18日 米CNN “Biden signs new executive order to improve women’s health research as reproductive health remains central to reelection pitch
2024年3月19日 米CNN “US abortions reach highest level in over a decade, sparked by surge in medication abortion

【概要】
2024年3月18日、米バイデン大統領はホワイトハウスの聴衆を前に、女性の医療へのアクセスを制限しようとするトランプ前大統領と共和党を批判すると同時に、「議会を通じてアメリカ国民が支持するのであれば、中絶の権利を保障する法律(1973年ロー対ウェイド判決:2022年に覆された)の復活に取り組むことを約束する」と述べた。

バイデン大統領は、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を再選キャンペーンの焦点とし、新しい大統領令は、政府機関を統合して女性の健康に優先に取り組み、新たな研究を促進し、ジェンダーに関する政府の資金援助のギャップについての調査を促すとした。また2024年3月7日の一般教書演説でも、女性のリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)の重要性を強調、議会に対し、女性の健康の研究について120億ドルの資金調達案の可決を求めた。ハリス副大統領も各州の家族計画クリニックなどを訪れ、「アメリカでは、生殖年齢にある女性の3人に1人が中絶禁止の州に住んでいる」と、現状に懸念を示している。

米カイザー・ファミリー財団(KFF)が今月実施した調査によると、全米有権者の半数近くが、11月の大統領選挙は中絶の認否に「大きな影響」を与えるとしており、8人に1人は、この問題が投票の最重要課題だと回答している。

一方、SRHの調査研究機関であるグットマッハー研究所が3月19日に発表した報告書によると、2023年のアメリカにおける中絶件数は100万件を超え、過去10年超で最も多く、2020年から10%急増した。報告書によれば、2023年のアメリカにおける中絶のうち推定642,700件がミフェプリストンとミソプロストールの2つの経口薬による中絶で全体の63%を占める(2022年は53%)。ただし、データには正式な医療制度外で行われた中絶や、中絶禁止の州に送られた薬による中絶は含まれていないため、この数字は実際の件数よりも少ないと見られている。

【参考】
2024年3月19日 米Guttmacher Institute “Medication Abortions Accounted for 63% of All US Abortions in 2023, an Increase from 53% in 2020

(編集後記)
日本ではあまり馴染みのないスタンドアップ・コメディですが、「ハンナ・ギャズビーのナネット(Hanna Gadsby: Nanette  Netflixで配信中)」は、ポテトチップを食べながら見ていた手が急に止まって圧倒される
、といった感じのすごい作品でした。理不尽を「笑い」に終わらせない性的少数者ハンナの覚悟がすばらしく、見るものの世界を変えるほどの力があるとさえ思います(すなみ)

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