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「結婚の自由をすべての人に」東京地裁2次訴訟を注視する若者のまなざし

2024.3.29

ジョイセフが事務局を務める「SRHRユースアライアンス」では、30歳未満の若者が集まり、政策提言と若者を中心とした知識啓発の活動い、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)を推進しています。3月14日(木)、ユースメンバーのうち2名は、東京地方裁判所で行われた「結婚の自由をすべての人に」訴訟を傍聴しました。
 
SRHRユースアライアンスが裁判を注視する理由やその様子をVOICEで公開した、「結婚の自由をすべての人に」訴訟。こちらの記事では、判決後に行われた、記者会見と報告会の内容をお伝えします。

公益社団法人Marriage for All Japan(以下マリフォー)さんが開催した報告会では、原告である同性カップル当事者の方々が現在のお気持ちを述べられ、東京裁判弁護団のみなさんが、出たばかりの判決文の簡易分析をお話しされました。

寺原真紀子弁護士の説明によると、今回の判決では憲法24条2項が定める「法的利益」の享受、この場合は「同性カップルが、異性カップルが結婚で得られる権利と同じものを得るための立法がなされていないこと」が、「『憲法違反状態』である」と判断されたということです。しかし、「婚姻を認めていない現状は『憲法違反』とまでは言えない」という、少々歯切れの悪いものではありました。

憲法では「全ての人は法の下に平等」としているのに、同性カップルが結婚する手段がないということ自体が、すでに平等ではないのではないかと考えさせられました。

ただ寺原弁護士によると、判決文の中には他にもいくつか進展がありました。憲法24条1項において記載される「両性」「夫婦」などの単語は、憲法が制定された当時は異性カップルが想定されていたという点を裁判官が言及した一方で、社会状況の変化に伴い、24条2項によって、同性カップルが不利益を被っている状況に対して方策を講じる必要があることを言及しました。

社会状況の変化としては、「生殖を目的に結婚する国民の割合が減少している」ことに言及。「婚姻の目的は生殖する関係性を保護する」としていた従来の解釈が、すでに現状に見合わないことを認めています。

これもSRHRの視点からは非常に重要です。「子どもを持つか持たないか、持つならばいつ、だれと持つのか」を決められるのは自分自身。同時に「いつ、誰と、結婚するか、それとも結婚しないか」を選ぶのも自分自身です。現在、異性婚に「子どもを持つこと」は結婚の条件として課されていません。子どもを持ちたくない人、病気などで子どもを持てない人は、結婚できないことにはなっていないのです。

判決文ではさらに、諸外国では36カ国が同性カップルに結婚を認めている点や、パートナーシップ制度も日本全国で導入が進んでいる点、民間企業の支援も増えている点、一般アンケートでは同性同士の婚姻を認める賛成割合も増えている点に言及。上記を踏まえると、もはや婚姻は異性カップルのみに認められるものとは解されない世の中になってきているとしています。

加えて、これまでより一歩踏み込んだ点としては、民法と戸籍法が、性自認・性的指向に基づき、同性カップルと異性カップルを「区別」していることを認めたことが挙げられます。今回「性自認」を含めることで、出生時に割り当てられた性と本人が自認する性が異なる人の結婚の権利についても言及しました。性自認・性的指向は自分の意志で変えることができない個性であり「性自認・性的指向に根差した人生を送ることはかけがえのない権利である」と明記されたことは評価できるとの説明でした。

SRHRの観点からも、「自分の性的指向、性自認(またはジェンダーアイデンティティ、性同一性)、性表現を含めたセクシュアリティについて自由に定義できること」は重要な基本的人権の一部です。

シスジェンダー(出生時に割り当てられた性別と性自認に差異が無い人)、異性愛の人たちが自ら選んでマジョリティになったのではないように、トランスジェンダーや同性愛の人たちは自ら選んでマイノリティになったわけではありません。自分の意思で変えられないことを理由に、同じ条件で結婚ができないことは明らかな差別です。シスジェンダー/異性愛の人たちと同じ、結婚の自由をトランスジェンダー及び同性愛の人たちにも認められるべきです。

東京地裁判決の報告会終了直後、今度は同日に行われた札幌高等裁判所での「結婚の平等をすべての人に」判決が出されました。

高裁の判決は、東京弁護団の簡易分析の結果「ほぼ完ぺきに近い」非常に画期的な判決でした。

  • 憲法24条1項では「両性の平等」は憲法制定時の社会通念に基づき、異性カップルを指しているが、現代における日本社会や国際的な潮流を見ても、同性間における婚姻も異性婚に同等であるべき
  • 憲法24条1項が違憲判断の場合、24‐2も自動的に違憲となる
  • 14条は、判決文から読み取るに現状同性カップルには「婚姻から得られる法的効果が1つも得られていないこと」が違憲である。

さらに判決文には、以下のような文言が含まれていることが評価できるそうです。

  • 婚姻の平等への反対意見には「違和感」「嫌悪感」といった感覚的なものが多く見られる。性自認・性的指向は自分でコントロールできるものではなく、人権は誰もが持つ普遍的な権利であるので、前述の感覚的理由は、婚姻の平等を妨げる理由にならない。啓発などを通して解決するべきものである。
  • 生殖機能(「同性カップルは子どもを産まない」とされていること)が婚姻の平等を妨げるべきではない。異性カップルでも子どもを持てない、持たない夫婦もいる。生殖が婚姻制度の理由になるべきではない。

SRHRど真ん中の権利に言及し、権利を守ろうとしてくれている札幌判決は、素晴らしいと思いました! さらに最後には【付言】がありました。弁護団曰く、このような付言が付くのはまれなことだそうです。

「同性間の婚姻を定めることは、国民に意見や評価の統一を求めることを意味しない。根源的には個人の尊厳に関わる事柄であり、個人を尊重するということだ。同性愛者は日々の社会生活で不利益を受け、自身の存在の喪失感に直面しているのだから、その対策を急いで講じる必要がある。喫緊の課題として、同性婚につき、異性婚と同じ婚姻制度を適用することを含め、早急に真摯(しんし)な議論と対応をすることが望まれる。」

国会に早急な立法を促した形になっています。

私たちの社会は今、結婚ができる人・できない人を法律で区別している状況にあります。これは愛する人との関係性を法的・社会的に認めるという基本的人権と、自分の性自認や性的指向に沿って選んだ相手と親密かつ永続的な関係を築くことができる、SRHRという基本的人権が認められていないということです。誰でも好きな人と幸せに生きていくことは、当たり前に認められるべきだと思います。

SRHRユースアライアンスのメンバーは、すべての人の人権とSRHRが守られるように民法改正を求め、国会議員に対して、結婚の平等実現のための要望書をFAXで送付する活動を行っています。

FAX送付先となる議員のXアカウントもタグ付けし、投稿をしていきます。ぜひ、みなさんの応援をお願いいたします。

SRHRユースアライアンスのXアカウントはこちら

Author

草野洋美
シニア・アドボカシー・オフィサー。日本のSRHRとジェンダー平等の状況を改善するために、国連人権理事会のメカニズムを活用したアドボカシーに取り組んでいる。 G7の公式エンゲージメントグループであるW7の実行委員兼アドバイザー。 また、若者を中心としたアドボカシーグループ「SRHR ユースアライアンス」の事務局を務め、政策提言を通じて日本のSRHRを取り巻く問題の改善と認知向上を目指している。 2019年にジョイセフに入職する以前は、企業のCSR活動の一環として、2011年の東日本大震災の被災者に対する心理社会的支援プロジェクトを5年間統括した。