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【子宮頸がんは予防できます!】Let’s think HPV! 「あらためて知りたいHPVのこと」インスタグラムライブレポート

2024.5.28

5月28日の「女性の健康のためのアクション国際デー(※)」にちなみ、「子宮頸がん」「HPV(ヒトパピローマウイルス)」をテーマとした連続インスタライブを開催。(主催:公益財団法人ジョイセフ、後援:みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト)

第1回は、5月23日に「あらためて知りたいHPVのこと」と題して、産婦人科医でみんパピ!代表理事の稲葉可奈子先生にお話を伺いました。HPVってどんなウイルス?HPVワクチンって打った方がいい?子宮頸がん検診ってどんなことをするの?などの質問にお答えいただいた、インスタライブの内容をご紹介します!

インスタライブ全編はI LADY.のインスタグラムアカウント(@ilady_srhr)、下記からご覧ください。

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HPVと子宮頸がんにはどんな人がどのくらい罹っているの?

稲葉先生:HPVは主に性交渉で感染します。8割ぐらいの人が感染している、とてもありふれたウイルスです。誰が感染してもおかしくないし、感染すること自体は怖いことではありません。
感染した方のうち1割ぐらいの方に細胞に異常が出ることがあり、それが進行すると子宮頸がんになることがあります。子宮頸がん自体は毎年1万人以上の方が新たに罹っていて、3000人弱の方がお亡くなりになっています。子宮頸がんは20代後半から40代の患者さんが一番多いことも特徴です。

ジョイセフ橋本(以下 橋本):誰でもHPVに罹りうるし、子宮頸がんは若い方でも発症する可能性がある、まさにI LADY.が対象としている若い世代の方もすごく関係があるということなんですね。

HPVへの感染を予防する方法は?

稲葉先生:HPVワクチンという、そもそもの原因であるHPVに感染しないための予防接種があります。小学校6年生から高校1年生の女の子は、これからも(定期接種の)対象年齢で無料で接種することができます。今の高校2年生から1997年度生まれまでの方は接種の機会を逃してしまった方がすごく多いので、現在特例で、2024年度まで無料で接種することができます(=キャッチアップ接種)。
HPVワクチンを打つと、その後新たにHPVに感染することを予防できますので、まず接種していただくということ。しかし、HPVワクチンは病気の原因になるウイルスを全部100%予防できるというものではありません。1割ぐらいワクチンでは予防できないタイプのウイルスがあるので、そこについては、子宮頸がん検診を20歳過ぎから受けていただけたらと思います。

HPVワクチンを打ちたいなと思ったら?

橋本:2024年度まではキャッチアップ接種で、1997年度生まれの方までは自己負担なしで接種できるということでした。2024年度中に接種を完了する場合、どのくらいのタイミングからワクチンを接種し始めればよいのでしょうか。

稲葉先生:キャッチアップ接種対象の方は、全部で3回接種する必要があります。接種完了まで半年かかりますが、3月までに接種した分が無料になります。ですので9月ぐらいまでに、少しスケジュールに余裕を持つと夏のうちに、1回目を接種していただくのがおすすめです。
ちなみに今の高校1年生も来年度はもう無料では打てないんですね。ですから、高校1年生も夏までにワクチンを打ち始めると今年度中に完了できます。

橋本:接種したいと思ったときは、どうしたらいいのでしょうか。

稲葉先生:自治体から、いわゆる予防接種の接種券みたいなお便りが届いていると思います。その中に対象医療機関のリストや、予約方法(予約は病院ごと)などの説明が書いてあると思います。もし無くしてしまった、見当たらない、捨てちゃったといった場合は、住民票がある市区町村に連絡すると、再度もらうことができます。

HPVワクチンはどんな人が打つといいの?

橋本:HPVワクチンは女性だけが打てばいいのでしょうか?

稲葉先生:最近東京でも、男性のHPVワクチンの接種への助成が始まった区がいくつかあります(※)。男性にも有効な予防接種です。HPVは子宮頸がんだけを引き起こすウイルスではなく、喉のがん・中咽頭がんや肛門がんなど男性がかかる病気の原因にもなるんですね。
男性がHPVワクチンを打つことで、ご自身の病気の予防になります。そして性交渉でパートナーとうつし合う可能性があるウイルスでもあるので、性別問わず接種することで、だんだんとその感染率自体が下がっていき、お互いのためになるという感じですね。
(※)中野区、品川区、大田区、足立区、練馬区などでは全額助成。東京都以外でも全額助成している自治体や、その他一部補助をしている自治体があります

HPVを原因とする病気の例

橋本:性別に関わらずHPVワクチンを打つことで、自分もパートナーも守ることができるということなんですね。

橋本:定期接種やキャッチアップ接種対象の以上の年齢の方がHPVワクチンを接種したときの有効性は、どうなのでしょうか。

稲葉先生:具体的な年齢は一旦置いておいて、キャッチアップ接種世代の方に、「既に性交渉の経験があるけれど打った方がいいですか?」というご質問をいただくことがあります。初めての性交渉よりも前に接種するのが最も有効ではあります。ただ、性交渉の経験があったとしても、HPVワクチンで予防できるウイルスのタイプ全てに感染してることはなかなかないです。性交渉の経験があったとしても十分有効性はあるので、性交渉の経験の有無に関係なく、ぜひ無料接種の対象年齢の方は、なるべく早めに接種していただくことがおすすめです。事前にHPVに感染してるかどうかを調べる必要もありません。

稲葉先生:キャッチアップ接種対象年齢以上の方が今から自費で接種する方がいいかというところについては、これからまだ新たなパートナーができる可能性があってまだ打ってない場合に、自費で接種するのも一つの選択肢です。ただ、なるべく若い年代の方が効果としては期待できますし、皆さん全員に自費でも接種しましょうとおすすめするものではないと考えています。全3回の接種に(自己負担の場合)約10万円かかりますので、費用対効果の価値観は個人差があると思っています。

HPVワクチンの安全性は?

橋本:HPVワクチンを接種することに対して、不安だという声があります。

稲葉先生:2013年頃、HPVワクチンを接種した後にいろいろ症状が出たのではないか、もしかしたら副反応かもしれないという、センセーショナルな報道が連日のようにありました。その時の印象が強く残ってらっしゃる方が、特に親御さん世代に多いと思うんですよね。それもあって、打たない方がいいのかなってすごく不安に思っている方がたくさんいらっしゃると思います。
一時期、安全性が確認できるまでの間ということで、厚生労働省が積極的におすすめすることを差し控えてもいましたので、不安になって当然だと思うんですよね。そこについては、日本でも研究が行われましたし、世界中でも安全性を確認する研究が行われました。接種した方・接種していない方と大規模に調査をしたところ、HPVワクチンによる副反応ではないかと言われていた、例えば痛みが続く、しびれた、というようなあらゆる症状について発生頻度に差がない、つまり、ワクチンを接種していなくても、そういった症状が同じぐらいの頻度で出ることがあると確認されたんですね。そして、HPVワクチンが原因で起きた症状ではなさそうだと結論づけられ、安全性が確認されたということで、厚生労働省も積極的におすすめをすることを再開しています。
このことが多分伝わりきっていないので、まだまだ不安なまま(接種を)見送ってるという方たくさんいらっしゃると思うんですよね。これを機会に知っていただけると嬉しいなと思います。

HPVワクチンを打つときに性交渉の経験は聞かれる?

橋本:HPVワクチンを接種するときに、例えば保護者の方と一緒に行って、性交渉の経験を聞かれるんじゃないか不安というような声もあるのですが、この点についても教えていただけますか。

稲葉先生:例えば保護者の方がお子さんの接種を考えるときに、性交渉の経験があるかどうかをお子さんに聞かなければいけないと思ってらっしゃる方がたまにいらっしゃいます。それを聞いたために親子関係が悪くなってしまったということも聞いたことがあるのですが、全く聞く必要はありません。そういう話をできる親子関係はすごく素敵だと思いますが、そういう話はなしで、子宮頸がんを予防するための大事な予防接種だよみたいな感じでお話しいただくだけで大丈夫です。
産婦人科を受診したときに問い詰められるような、性交渉の経験がありますかといったことを保護者の前で聞かれるといったこともないです。

子宮頸がん検診ってどんなことをするの?

橋本:ここまではHPVを原因とする病気や、HPVワクチンによる「予防」について伺いました。ここからは、子宮頸がんを「発見する」検診について教えてください。

稲葉先生:子宮頸がん検診は、HPVワクチンが誕生する前からずっとありました。日本は検診の受診率が低くて、特に受けていただきたい若い年代の検診受診率が低いんですよね。
子宮頸がん検診では、膣の一番奥の部分にあたる子宮の入り口を直接こすって、細胞を取ります。そして、細胞に異常がないかどうかを顕微鏡で見て調べます。そうすると、がんになる手前の異常の段階で見つけることができます。
その(がんになる前の異常の)段階では自覚症状が何にもないんです。元気だし、何にも痛くも痒くも出血もないけれども、検診をちゃんと受けていただくと、ちょっと異常があるとかないとかというのがわかります。なので、元気だからこそ受けていただきたいっていうのががん検診、特に子宮頸がん検診なんですね。

稲葉先生:今は20歳から2年ごとの検診が推奨されています。これから検診の間隔や検診方法が変わっていく可能性があります。自治体によってその(検診方法の)導入の時期とかにばらつきがありますが、20代のうちは20歳から2年毎に検診というのはどこの自治体でも同じです。
新しい検診方法の場合、30代からは異常がなければ5年ごとの検診でよくなります。そちらの方が、異常がなければ検診を受ける負担は減るので、そっちにいずれ変わっていくと思っていますが、従来の方法が悪いというわけでは全然ないです。お住まいの自治体で補助が出る方法で検診を受けていただければと思います。

橋本:どのように検診するのか、もう少し詳しく教えていただけますか。

稲葉先生:まだ産婦人科を受診したことがない方は、「何をされるかわからないから行きたくない」と思うこともあるかと思います。それも、検診受診率の低さに影響しているかもしれません。
内診台という、ドラマなどでお産するときに使う台を見たことはありますか?足が開くような体制になる診察台で診察をします。
子宮の入口の細胞を取るためには、膣の奥のところをこすらないといけないので、下着を脱いで、内診台に乗ってもらいます。異常がなければ、1~2分で終わります。(みんパピ!のWEBサイトで具体的にイラスト付きで説明されています:https://minpapi.jp/pap-smear-routine/

このようなブラシを使って細胞を取ります。SRHR NOTEの前身・I LADY. NOTEの表紙です

稲葉先生:心配な方や初めての方は「心配なんです」「痛くないですか?」など、伝えていただくといいと思います。普段から痛くないように工夫して診察していますが、より丁寧にお声掛けしながら、不安のないように対応してもらえると思います。
ぜひ怖がって受診しないのではなく、「初めてで心配なんですけど」などと伝えながら、検診を受けていただければなと思います。

橋本:最後に、皆さんに伝えたいことをお話しください!

稲葉先生:ちょうど先日もテレビ局の取材で、キャッチアップ接種世代でまだ接種していない方とお話しし、その内容が一部ニュースでも流れました。その方も(自治体から)お便りが届いてるのは知ってたし、テレビとかでたまにやってるのも聞いてたようです。でも、「まぁいいか」とか、保護者の方が「これは打たない方がいいよ」と言われてそのままにしてたとおっしゃっていました。私が本日お話したようなことを同じように説明して、「そういうことだったんですね」と納得されていました。思っていたのと逆だったというか…。でもそれ(稲葉先生の説明)を聞く機会がなかったら、打たないままキャッチアップ接種の期間が終わっていただろうというようなお話をしていたんです。
恐らく日本中に、特に安全性の部分の情報というのがちゃんと届いてないがために、接種の機会を逃してしまってる方がたくさんいるんですよね。ですので、伝えられるところから伝えていきたいなと思っています。これをご覧になって「なるほど」と思っていただけたら、周りにも伝えてもらえると嬉しいです。

稲葉先生:去年、芸能事務所社長の井出智さんが子宮頸がんで亡くなってしまいました。井出さんは、お亡くなりになるその日まで、ラジオの収録で子宮頸がんの予防の啓発をずっと伝えてくださってたんですよね。井出さんが「予防できることを知ってたら、私は予防したかった」とおっしゃられていたその言葉がすごく重かった。
予防できる病気なので、子宮頸がんになってから予防したかったと思う女性を減らしたい、できればいないようにしていきたいと思います。そうできる時代なのでぜひ、元気だからこそ、HPVワクチンと子宮頸がん検診を両方受けてほしいと思います。

(※)女性の健康のためのアクション国際デーとは
 

 
1987年に中米コスタリカで開催された「国際女性の健康会議」から始まったもので、ジョイセフもこのキャンペーンに賛同しています。
世界中でNGOやアクティビストたちが、誰ひとり取り残さず、すべての女性が健康であることを祈願し、毎年この日を共に祝い、声を上げ、連帯し様々な課題に挑戦しています。

Author

I LADY.事務局
I LADY. は、これまでジョイセフが培ってきた知見を生かし、特に日本の10~20代を対象にグローバルな視野でSRHRに関する幅広い情報提供を行い、一人ひとりのアクションのきっかけをつくるプロジェクトです。Love Yourself(=自分を大切にする)、Act Yourself(=自分から行動する)、Decide Yourself(=自分の人生を、自分で決める)をメッセージに掲げ、活動を展開しています。