知るジョイセフの活動とSRHRを知る

9月26日 世界避妊デー2024 「緊急避妊薬」今、どうなってるの?

2024.9.26

日本では、緊急避妊薬(通称:アフターピル)は「アクセスに障壁がある」と思う人が96.3%にのぼります。今後、緊急避妊薬をとりまく政策はどうなるのでしょうか。
この9月、市民団体「#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」共同代表の染矢明日香さんと福田和子さんは、自民党総裁選・立憲民主党代表選の候補者全員に、緊急避妊薬の薬局での販売(OTC化*)への意見を問う「公開質問状」を送付。その回答を発表する記者会見を、世界避妊デーに先駆けて開きました。

*OTCとは、英語のオーバー・ザ・カウンター:カウンター越しという言葉の略。薬局やドラッグストアなどで、処方せんなしに購入できる医薬品です。


緊急避妊薬とは

避妊に失敗した時や性被害にあった時は、女性が産婦人科・婦人科を受診し、72時間(3日)以内に緊急避妊薬(通称アフターピル、緊急避妊ピルともいいます)を服用することで、高い確率で妊娠を防ぐことができます。緊急避妊薬は、性交からできるだけ早く服用することが効果的で、主に排卵を遅らせるなどの作用により妊娠の成立を防ぎます。そのため、緊急避妊薬を服用した後は、避妊効果が持続しません。避妊の成功が確認できるまで、効果的な避妊法の使用もしくは性行為を避けることが勧められます。

※緊急避妊薬はあくまで緊急用のもので、普段の避妊法としては向きません。

参考:NPO法人ピルコン
  • WHOが指定する必須医薬品
  • 世界約90カ国の薬局で入手できる。ほとんどの場合、費用は5000円以内
  • 日本では6000〜2万円(休日だと加算される場合も)

日本の緊急避妊薬、4つの課題

日本では、緊急避妊薬へのアクセスを妨げる課題として、主に以下の4つが挙げられます。

  • 高額過ぎる
  • 特に都市圏以外の地方における物理的なアクセスの問題
  • 保護者同伴でないと処方できないこともある
  • 土日祝日の病院休診

そんな中、2023 年11⽉より、緊急避妊薬の薬局における試験的販売がスタートしました。全国145の薬局(全国の薬局6万件の0.3%)で販売されており、開始後約2カ⽉間で 2,000⼈以上が利⽤しました。試験販売はいつまでなのか、そしてOTC化に向けての検討がいつ、どのように⾏われるのかは不透明なままです。さらに、今回の試験販売では15歳以下は対象外であり、16〜17歳は保護者の同伴と許可が必要です。ほかにも情報提供不⾜など、緊急避妊薬の現状にはなお多くの課題があります。

総裁選・代表選 候補者への公開質問状 その回答は?

緊急避妊薬の薬局での販売(OTC化)に関して意見を求めたところ、自民党総裁選の候補者は、全員が無回答でした。
立憲民主党の代表候補者に関しては、新代表に選出された野田佳彦元首相からの回答はありませんでしたが、泉健太氏、枝野幸男氏、吉田晴美氏の3名は「OTC化に賛成」と回答しました。

【自民党総裁選・立憲民主党代表選、各候補者の詳しい回答結果はこちら】
「#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」のサイト

記者会見参加者から寄せられた質疑と、染矢・福田共同代表の応答

質問①ー今後の総裁・代表選の後半戦や新総裁・新代表に向けて、薬局での市販化についてどんな論戦を期待しますか?

緊急避妊薬やSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)は、人生をどう生きていくかと直結する課題です。いつまでも「検討する、検討する」と言うばかりで実際は動かないというのは、国民を裏切り続ける姿勢だと感じます。
フランスでは緊急避妊薬を含め、避妊は無償で提供されています。中絶権も憲法に明記され、人権として認められているのです。日本ではまだこのテーマが矮小化され、自己責任とされています。妊娠しても誰にも相談できず、出産後の乳児遺棄につながるケースもあり、一刻も早い対策が必要だと考えています。

今回、回答いただけなかった候補者の方々がどう考えているかはわかりませんが、質問したことで、OTC化を切実に求める人がいることを知ってもらうきっかけになれば。議論が交わされてほしいです。

質問②ー「少子化の中で緊急避妊薬の議論をすべきでない」という論点がありますが、どう答えますか?

「少子化だから(本人が望む望まないにかかわらず)産め」というのは暴力だと思います。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツという概念が生まれて30年。産みたい人は産める、産みたくない人は産まなくてよい。その権利がどれだけ守られているかという視点で語るべきで、そういう視点が日本でもほしいです。
まさに「この少子化の中でなぜ避妊の話をしているのか? 」という論点で語られることが象徴するように、(一人ひとりの)リプロダクティブ・ヘルス/ライツは置き去りにされてきた問題です。そうではなくて「これは権利・健康の話」というふうに受け止められてほしい。避妊に関する情報が少なく、産むことをよしとする方向へ情報提供が偏り、誘導されていくのも、気を付けて見守らなければいけないと思います。
多くの国では(少子化対策として)保育や経済支援などが提供されています。日本にある「避妊が広がると子どもが少なくなる」という考え方自体が、理解が少ないことの表れだと考えています。

ジョイセフからのメッセージ 緊急避妊薬を「緊急」時に選べる日本へ

「緊急避妊薬を薬局で販売する前に、性や生殖についての知識を身につけ、適切な避妊を行うための性教育を普及させるべき」という論点や、「濫用の懸念」などの議論に阻まれ、なかなか検討すら進まない緊急避妊薬のOTC化。

今、必要としている人が、緊急避妊薬を入手できる環境づくりが急務です。

避妊に失敗した女性や、性暴力被害に遭った女性にとって、緊急避妊薬は望まない妊娠を避けるための最後の手段です。避妊は女性にとって健康維持に必要なものであり、生き方を自分の意思で選ぶために欠かせない権利です。避妊の失敗がなくなるように性教育を拡充することは大切ですが、失敗した時のための選択肢として、緊急避妊薬が選べる社会であってほしいと思います。

自民党総裁選で新総裁が決まり、日本の総理大臣が誰になろうとも、ジョイセフは市民社会のニーズの声を伝え、日本の未整備な「選べる環境」を一刻も早く実現できるよう、強く求めていきます。

来たる10月のスイス・ジュネーブで開催されるCEDAW(国連・女性差別撤廃委員会)に向けて、日本の7団体で取りまとめた市民レポートの中にも書いた通り、日本の現状を国際スタンダードに改善すべく、引き続きジョイセフは市民社会の皆さんと共に、緊急避妊薬をはじめSRHRの普及・推進に取り組んでいきます。

関連記事:女性差別撤廃委員会の日本政府審査に向け、市民社会レポートを提出しました

PICK UP CONTENTS