GOGOチャレンジ事業「ザンビアにおける子宮頸がんの検査促進プロジェクト」活動 進捗報告(2023年8月〜2024年3月)
2024.5.29
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予防のための正しい知識と、早期発見・治療の強化で、子宮頸がんから命を守る。
ザンビア・コッパーベルト州マサイティ郡およびムボングウェ郡にて、子宮頸がん検査と治療へのアクセスを向上させるプロジェクトを実施。地域の人々に子宮頸がんに関する正しい情報を届けるために、地域で活動する母子保健推進員(SMAG)や若者ボランティアのピアエデュケーター:以下PE)に研修を行い、保健施設で不十分だった子宮頸がん検査および治療のための設備を整備し、早期発見・治療のために地域支援体制を強化しました。
プロジェクトの背景
プロジェクトの目的
これまでのセクシュアル・リプロダクティブヘルス(SRH)事業に子宮頸がん検査を統合させ、早期発見・治療の体制を整備し、予防啓発教育を通し、子宮頸がん検査・治療へのアクセスを向上させる。
活動:
① 子宮頸がんに関する正しい情報と知識を伝える啓発教育活動の実施
② 検査及び治療体制の整備
③ 地域支援体制強化(病院へのリファーラル)
プロジェクト地域 | ザンビア・コッパーベルト州マサイティ郡(ンジェレマニ地区)およびムボングウェ郡(カルウェオ地区) |
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対象者 | プロジェクト地域の15-49歳の女性 |
期間 | 2023年8月~2年間 |
実施団体 | ジョイセフ、ザンビア家族計画協会(PPAZ) |
これまでザンビアでは、「ワンストップサイトにおける生涯の女性の健康づくりプロジェクト」(2018-2020、NGO連携無償資金協力)を実施し、農村地域の保健施設を拠点に母子保健を含めたセクシュアル・リプロダクティブヘルス(SRH)の啓発教育活動を強化し、質の高い保健サービスの提供に取り組んできました。今回、GOGOグローバルチャレンジ事業として、ワンストップサイトに子宮頸がん検査・治療の体制を整備し、子宮頸がん予防のための啓発教育を強化することで、子宮頸がんの検査促進と早期発見・治療を目指しています。2023年度は以下の活動を実施しました。
① 子宮頸がんに関する正しい情報と知識を伝える啓発教育
地域住民、特に15歳~49歳の女性・男性への子宮頸がんに関する正しい情報が普及するために、母子保健・子宮頸がんに関する状況調査と母子保健推進員や若者ボランティアへの行動変容のための母子保健・子宮頸がんに関する研修を行いました
調査は事業地のカルウェオ地区とンジェレマニ地区の103名(女性62名、男性41名)が回答し、62名が女性、41名が男性でした。調査では、子宮頸がんに関して知識や認識が不足していることや、検査にいく女性が少ないことが分かりました。例えば、回答者の53.5%が子宮頸がんの症状について知らないまたは間違った認識をしており、90%が子宮頸がん検査の方法について知りらず、48%がすべての女性が子宮頸がんの検査の必要があることを知りませんでした。また、回答者の女性のうち子宮頸がんの検査を受けたことがあるのは19.4%と低く、44.7%がHPV(ヒトパピローマウイルス)が性交渉によって感染することを知りませんでした。
こうした結果を踏まえ、地域で活動する母子保健推進員(SMAG)や若者ボランティア(ピアエデュケーター:PE)20名に、人々の行動変容を促すための研修を実施しました。研修では、状況調査の結果を共有し、子宮頸がんについての正しい情報、行動変容のステップやコミュニケーションの仕方を伝えました。研修の最後には活動計画を議論し、啓発活動を開始する準備をしました。
② 子宮頸がん検査及び治療の体制を整備
子宮頸がん検査と医療機器の導入し、保健スタッフへの子宮頸がん検査と治療に関する研修を行いました
これまで保健センターでは子宮頸がん検査のための医療機器や検査体制が整っておらず、疑いがある患者が来ても、病歴や体調を聞く問診と痛み止め等の薬による処置しか行われていませんでした。そこで短時間でがんの進行状況がわかる酢酸を用いた目視検査(Visual Inspection with Acetic Acid:VIA)と、前がん病変の治療法である熱焼灼(Thermal Ablation)を導入するため、医療機材の購入と保健スタッフ・郡保健局職員への研修(計6名)を2月に実施しました。研修は3日間にわたり、子宮頸がんの検査や治療に関する講義と、医療機器の使い方を習得する実技演習が行われました。最初は機器がうまく使えなかったり、検査結果を正しく読み取ることに苦戦していましたが、産婦人科医師の講師のもと参加者は技術を習得していきました。今では一日10~15人の患者に検査を実施し、がんが発見された場合は治療をしたり病院へのリファーラルしたりしています。
③ 子宮頸がん検査・治療のための地域支援体制を強化
地域保健委員会へのプロジェクトに関するオリエンテーションを実施しました
プロジェクトの初めに、事業地の地域保健委員会(Neighborhood Health Committee:NHCs)メンバーにオリエンテーションを実施しました。NHCsは保健省管轄の住民組織で、地域保健の重要な担い手です。オリエンテーションではプロジェクトの目的や目標を達成するために、コミュニティでの子宮頸がんに関する認識を高める活動の実施、活動のモニタリング・評価・改善の実施、効率的・効果的な活動実施のための関係者や地域の伝統的リーダー(チーフ・村長など)の連携等に関して、プロジェクトにおけるNHCsの役割を確認しました。
また、郡保健局から子宮頸がんの症状や予防に関する知識を提供し、病気に対する理解を深めました。そして年間の活動計画を策定し、どのような収入創出活動を行うか議論しました。活動計画では、他のNHCsメンバーへのオリエンテーション、チーフとの会議、コミュニティに対する啓発活動、教会での呼びかけなどが計画されました。コミュニティでの収入創出活動では、持続可能性をふまえ、やぎの飼育など既存の活動をどう効果的に実施するかに加え、マーケティングや付加価値をどう高めるかといった点も議論されました。
支援の成果
2023年度の支援活動で、以下の成果がありました。
- 20名のSMAG・ピアエデュケーターに子宮頸がんに関する研修を実施、活動計画を策定
- 16名のNHCsにオリエンテーションを実施、活動計画を策定
- 6名の保健スタッフと郡保健局職員に子宮頸がん検査に関する研修を実施
- 2か所の保健センターに子宮頸がんの医療器材を導入
- 2023年12月と2024年1月の2カ月において、1831人がSMAG・ピアエデュケーターによる啓発を受けた
- 2024年2月に75名が検査を受け、うち、3名が前がん病変の治療を受けた
現地の声
ジェニファー・ミチ マサイティ郡ンジェレマニ地区 母子保健推進員(SMAG)
私は2018年にジョイセフの研修を受けSMAGとして活動を始めました。これまで近所の人や友人たちに、産前産後検診の重要性を伝えたり保健センター・病院での出産を推進してきました。健康に関する様々なトピックの情報を学び、コミュニティの人々に伝える中で、産前産後検診に行く人が増えたり、自分の体や健康について理解しようとする人が増えるなど、人々の行動が変化していきました。
しかし私たちのコミュニティでは子宮頸がんの罹患率が高く、多くの女性が影響を受けています。このプロジェクトは、子宮頸がんのリスクや罹患率を減少させるために非常に重要だと思います。
JOICFPの研修に再度参加し、子宮頸がんに関する情報を得ることができたので、コミュニティの人たちに伝える活動を開始しました。
コミュニティを訪れると、参加者はいつも好意的に私の話しや共有した情報を受け入れてくれます。子宮頸がんについてや、どのように予防するのかといったたくさんの質問をしてくれます。子宮頸がん検診の重要性を伝えた後は、多くの女性が検査に行くことに前向きになっていました。
私がSMAGとして活動するモチベーションは、子宮頸がんについての情報を得て、それをコミュニティの人々に伝える機会があることです。
子宮頸がんに関する情報を届けることでコミュニティの人々がエンパワーされ、子宮頸がんを予防するための適切な行動や実践が広がっていくことを願って、今後もSMAGとして活動を続けていきたいと思います。
今後の活動
2024年度は以下の活動を実施しています。
啓発教育活動のための教材制作
実際に啓発活動を実施するNHCsやSMAGとともに、子宮頸がんに関するどのようなメッセージを発信していくかを考え、絵やグラフを用いて対話を促進するツールを作成します。
母子保健推進員・若者ボランティアとの年次会合
これまで実施してきた活動や成果を振り返り、プロジェクトの目標達成に向けてどのような改善が必要か議論します。
子宮頸がん検査と治療サービスに関する調査
事業地で始めた子宮頸がん検査や治療サービスを受けた患者に、サービスの質に関する調査を行い、結果をもとに保健スタッフへのフィードバックやサービスの改善を行います。
引き続き、ご支援・ご協力をお願いいたします。
参加する
「GOGOグローバルチャレンジ」への参加で、女性の命を守るための一歩を踏み出せます。
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現地レポート
ザンビア プロジェクトスタッフからのメッセージ
皆さんの支援は、とても重要です。本当に感謝しています。これまで、皆さんの支援によって、たくさんの命が救われました。救われた命の数が、それを証明しています。
アリス・シンインザ (ザンビア家族計画協会 ンドラ支部 プロジェクト・マネージャー)