スタッフブログ

MENU

MENU

ケニアで教材づくり。女性たちの健康のために。

2025.1.10

  • ジョイセフフレンズ通信

海外事業グループ、ケニア事業を担当している吉留(よしどめ)です。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今日は、ケニアの女性が置かれている状況とジョイセフの活動についてお伝えします。

ジョイセフは、ケニアのナイロビ県の中でもスラムが多い4つのサブカウンティ(日本の市町村に相当)で、2022年から子宮頸がんの予防に取り組んでいます。今年度は皆さまからのご寄付による支援で、新しい取り組みに挑戦しています。子宮頸がんの予防と治療にジェンダー主流化(事業のすべての段階にジェンダー平等と女性のエンパワメントを推進する視点を取り込み、実践すること)を取り入れるやり方です。

昨年10月にケニアに2週間出張し、より多くの女性が子宮頸がんの検査を受けるように、地域と保健施設でどのように働きかけているのかを視察しました。

子宮頸がん検査を受けた、ウインフレッドさんから話を聞きました。彼女は23歳。4歳になる息子さんがいます。事業地の地域保健推進員でもあります。

「9月4日に、地域保健推進員のための子宮頸がんと検査に関する教育セッションに参加し、保健センターで初めて子宮頸がんの検査を受けました。看護師さんは、『陽性』という言葉は使いませんでしたが、『あなたの子宮頸部がはっきり見えない』と言われました。この結果を聞いて不安な気持ちが大きくなり、同じ日に保健センターで、施術(※1)を受けました。

看護師さんからは、『(治癒のため)1カ月セックスを控えるように』と言われました。夫に伝えたら受け入れてくれましたが、『どうやって治療費を工面するのか』と言われて困りました。10月7日に診察を受けましたが、まだ治癒できていませんでした。」

現地スタッフから補足情報を受けたところ、おそらく1カ月たたない内にセックスを始めているため、治癒に時間がかかっている可能性があるということでした。ケニアの女性にとって、セックスを控えて、とパートナーに伝えることはとてもハードルが高いとのこと。

オープンに自分の経験を話してくれたウインフレッドさん。彼女の中で、自分の身体と健康であるけれども、夫の意向、力関係、経済的依存などのいろいろな要因が絡み、治癒が妨げられてしまっていることに葛藤を抱えて、悩む日もあるのだろうな、と話を聞きながら思いました。彼女一人の問題ではなく、「子宮頸がんの予防と治療」には、ジェンダーの視点も取り入れて取り組まないと状況は変わっていかない、とあらためて実感した瞬間でした。

女性が子宮頸がん検査を受ける妨げには、恥ずかしい、怖いといった感情的な理由の他に、家事や育児、他の家族の世話など、家庭で担っているジェンダー役割のために、自分の健康が後回しになっている状況も浮かび上がってきました。子どもの予防接種や病人の付き添いで保健センターや診療所には来ても、自分が子宮頸がん検査を受ける時間は後回しになるとか。私はこの話を聞いて、親の介護のために、自分は体調が悪くても診察を受けることができず、受けた時にはかなり悪化していたというある日本人女性の話を思い出しました。

家族の健康だけでなく女性自身の健康も大切なこと、そして女性たちが子宮頸がん検査を含め、保健サービスを受けられるように、家族や地域住民のサポートが重要なことについて伝えるメッセージや、コミュニケーション活動を推進するための教材づくりを、保健スタッフ、保健推進員、若者ボランティアの代表たちと一緒に行いました。


相手を説得するメッセージの伝え方を考える


対話を促すための、ダイアローグカードと呼ばれる教材の絵のコンセプトを考える参加者


参加者のコンセプトを基に、グラフィックデザイナーが、ダイアローグカードの下絵を作成


完成間近のダイアローグカード(表面)

多くの保健センターでは、家族計画、産後健診、子どもの予防接種や定期健康診断、性感染症、内科など様々な目的で来ている25~49歳の年齢の女性たちに、医療従事者はかならず「子宮頸がんの検査も受けていきませんか」と声をかけることにしているということです。子宮頸がん検査を保健センターのすべてのサービスに統合する方策です。

というのも、ケニアの国家癌スクリーニングガイドライン(2018)によると、ケニアでは子宮頸がんが女性の2番目の死因となっており、政府は、WHOの子宮頸がんの排除に向けた世界的戦略(※2)に沿って、7割の女性たちが35歳と45歳の時に確実性の高い子宮頸がん検診を受けることを目標にしているためです。ケニアでは、癌の治療を提供できる医療施設が非常に限られているため、早期発見、早期治療が女性のたちの健康と命を守るにはきわめて重要です。

ジョイセフは皆様からのご支援と応援をいただきながら、引き続き現地政府、医療従事者、地域の保健推進員やボランティアとともに、子宮頸がんの予防に取り組んでいきます。

※1事業地の政府の保健センターや診療所では、ケニア保健省のガイドラインに沿って、熱焼灼という方法で、前がん病変の治療が行われている。
※2 https://www.who.int/publications/i/item/9789240014107

カテゴリー
タグ

吉留 桂
2001年よりジョイセフを通じてセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツの実現に向け国際協力活動に従事。主に社会行動変容コミュニケーション分野(コミュニケーション戦略構築、教材企画・開発、教材使い方指導、住民主体の課題解決に向けた仕組みづくり等)の技術協力を通じた、住民の行動変容や支援環境づくりに取り組む。アジア・アフリカ・ラテンアメリカ16カ国の事業に携わる。趣味は合気道と料理。