アドボカシー
ジョイセフは、基本的人権であるSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)を推進する、日本生まれの国際協力NGOです。アフリカなどの低中所得国を中心に、医療・ヘルスケア・情報へのアクセス改善に取り組み、妊産婦や女性、脆弱な立場にある人々の命と健康が守られ、一人ひとりがエンパワーされるための活動を続けています。
一方で、私たちは国内におけるジェンダー格差やSRHRの課題に対して、その深刻さに危機感を持っています。こうした日本の現状を変えるために、ジョイセフは「アドボカシー」に力を入れてきました。
「アドボカシー」とは、社会課題の解決をめざして市民社会の声を政治に届け、政策および法律などの制度を改善することです。私たちは、ともにSRHR推進をめざす個人や企業、団体と協力し、官僚や政治家など政策決定や運営に携わる人々に社会課題を伝え、改善への取り組みや政策について提言を行います。また、国連や国際会議で日本の課題を提起するなど、国際社会とのパートナーシップを通した日本のSRHRの状況改善にも取り組んでいます。
①国内政策提言
- 日本政府・国会議員へのアドボカシー
- 政府および国会議員など、政策決定者への働きかけを行いくます。国会議員に基本的人権としてのSRHRの遵守・推進の必要性を提言し、担当大臣や官僚にもSRHRの重要性に対する提言書を提出しています。
- 若者によるアドボカシー
- ジョイセフは、若者によるSRHRアドボカシーのプラットフォーム「SRHRユースアライアンス」で事務局を務め、国会議員との対話など、ユース世代が意見・要望を国へ伝える活動を後押ししています。同アライアンスは、国内のSRHR課題とジェンダー課題に取り組むユースのアドボカシーネットワークで、国内のみならず国際社会とも連携して活動を広げています。
- 市民社会・メディアへの働きかけ
- さまざまなイベントや院内集会(国会議員に直接声を届ける集会)、勉強会、記者レク(レクチャー付きの記者発表)などを通じて、SRHRの重要性を呼びかけ、広く世論の喚起を行っています。
②国際アドボカシー
- G7/G20などのサミットの機会に、市民社会の連帯を強化
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G7は「Group of Seven」の略です。世界7カ国(仏、米、英、独、日、伊、加)とEU(欧州連合)のトップがテーブルに着き、世界経済や地域の情勢、さまざまな国際的な課題について意見を交わし合う場が「G7サミット」であり、2023年には日本の広島で開催されました。
G7には「エンゲージメント・グループ」と呼ばれる公式グループがあり、それぞれ各国の企業や非営利団体、市民団体などが集って、政策提言(コミュニケ:communiqué)をまとめています。W7(Women 7)はそのエンゲージメント・グループのひとつで、女性の権利に特化したものです。
ジョイセフは2023年広島サミットにおいて、一般社団法人SDGs市民社会ネットワークとともに、このW7の事務局を務めました。38カ国から集まった約80名のジェンダー専門家による声明を作成し、岸田総理大臣(当時)に直接手渡しています。ジェンダー平等、SRHRなどの重要項目が、G7首脳宣言にも反映されました。
- 国連や国際機関を通じた働きかけ
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ジョイセフは、国際社会から日本の政策に影響を与える「グローバルアドボカシー」に力を入れてきました。その一例として、日本が抱えるSRHRの課題を国連に報告する「シャドーレポート」が挙げられます。こうした市民社会からの「シャドーレポート」は国連で重視されており、この報告をもとに審査が行われ、国連から日本政府に対して適切な対策を求める勧告が出されます。
近年では、国連人権理事会で加盟国がおたがいに勧告を出し合う「UPR」において、日本が審査されるチャンスを捉え、国内のSRHR課題をまとめたシャドーレポートを国連に提出。また、人権理事会で市民社会の声を届けるロビー活動も積極的に展開し、SRHRをとりまく政策の改善を求める多くの勧告につなげました。
さらに2024年、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)による日本政府審査に向けて、市民社会のレポートを作成。国連ヨーロッパ本部での審査にも、市民社会として出席しました。
こうした国連への働きかけやシャドーレポート作成は、SRHRに関連する他の市民団体と連携・協力して取り組んでいます。ジョイセフはこうしたパートナーシップにより、市民社会の声を力強く政策へ届けていきます。
- 国際家族計画連盟(IPPF)との連携
- IPPFは、世界のすべての人々のSRHRを守るため、政策提言と関連サービスに取り組む世界最大級の国際NGOです。世界140カ国以上に加盟協会があり、特にぜい弱な立場にある人々、女性や若者に重点をおき、誰もが差別されることなく自分のウェルビーイング(健康・幸福)とセクシュアリティ(性のあり方)について、自らの意思で選択できる社会をめざしています。ジョイセフはIPPFの国際連携パートナーであり、長年にわたり東京連絡事務所を務めてきました。グローバルな政策提言活動においてもジョイセフとIPPFは緊密に連携しています。
- 国際キャンペーンの推進
- ヨーロッパやアジア太平洋地域など、グローバルなアライアンスに参加。さまざまなネットワークを通じて、SRHRに関する政策提言活動に取り組んでいます。