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欧州に忍び寄る保守化の影

2021.2.15

欧州議会の女性の権利及びジェンダー平等委員会の諮問の下、2020年10月に発表された『Evaluating the EUʼs Response to theUS Global Gag Rule(米国のグローバル・ギャグ・ルールに対するEUの対策を評価する)』と題するレポートは、幅広いEU加盟国が、GGRの影響に対抗するために行動すべきだと訴えています。

また、GGRによる資金欠如を埋めることは、SDGsで定められている健康、教育、ジェンダー平等、水・衛生に関するサービスに貢献するとし、SRHRを擁護する包括的な枠組みづくりも勧告しています。

一方で、同レポートはEU加盟国における保守化・右傾化の動きにも言及しています。

EUは基本的に、SRHR擁護、GGR反対の立場をとります。レポートは「ナショナリズムと右翼ポピュリズムの台頭が、今まで培ってきた「健康と人権」ムーブメントを危険にさらし、SRHRを国家の安全と宗教的価値観に対する脅威とみなしている」と指摘。

こうしたポピュリズムがオーストラリア、クロアチア、フランス、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、スロベニア、スロバキアで台頭し、ジェンダー平等やセクシュアル・リプロダクティブ・ライツの擁護者というEUの役割を損ないかねないと警鐘を鳴らしています。

実際に、ポーランドでは2020年10月、憲法裁判所が胎児の異常を理由として行う人工妊娠中絶を違憲と判断。
レイプや近親かん、母体の危険などの例外的な状況を除き、中絶がほぼ全面的に違法となりました。これに抗議した数千人の人々が、コロナ禍にもかかわらず大規模な抗議デモを繰り広げています。
ポーランドにおける反中絶運動の背後には、「Tradition, Family and Property(伝統、家族、財産)」と呼ばれる保守ネットワークがあると指摘されています。

カトリックを基盤としたこのネットワークは、1960年代にブラジルで創設されて世界各地に拡大。現在のヨーロッパでは、反ジェンダー平等、反セクシュアル・リプロダクティブ・ライツ、反性的マイノリティ(LGBTQ)などを掲げて活動しており、今後、各国での影響拡大が懸念されます。

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