知るジョイセフの活動とSRHRを知る

ザンビアでの子宮頸がんの啓発教育活動レポート(2024年8月)

2024.10.22

海外事業グループの鈴木順子です。

2024年8月、子宮頸がんの啓発教育活動が行われているザンビアのKalweoとNjelemaniを訪問しました。

ザンビアの子宮頸がん罹患率は34.1%(2023年)*1で、2018年の時点で世界ワースト3位でした*2。 子宮頸がんは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)とともに生きる女性の間で最も多く見られるがんと言われています。HIVとともに生きる女性が子宮頸がんを発症するリスクは、そうでない女性の6倍と言われており*3、ザンビアにおける15-49歳の女性のHIV陽性率は13.8%と他国と比べて高いのが現状です*4

多くの低中所得国ではワクチンの供給体制、検査や治療の体制が十分に整備されておらず子宮頸がんによって命を落とす大きな原因の一つとなっています*5

ジョイセフは、啓発教育活動を通して人々に子宮頸がんについての正しい情報を届け、子宮頸がん検査・治療体制の強化をサポートしています。

*1 Zambia, Human Papillomavirus and Related Cancers, Fact Sheet 2023: ICO/IARC Information Centre on HPV and Cancer; 2023*2 Costing the National Strategic Plan on Prevention and Control of Cervical Cancer: Zambia, 2019—2023. Geneva: World Health Organization; 2020. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO.*3 https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/cervical-cancer#:~:text=Women%20living%20with%20HIV%20are,and%20are%20very%20cost%2Deffective.*4 Costing the National Strategic Plan on Prevention and Control of Cervical Cancer: Zambia, 2019—2023. Geneva: World Health Organization; 2020. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO.*5 https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/cervical-cancer#:~:text=Women%20living%20with%20HIV%20are,and%20are%20very%20cost%2Deffective.


現地の人の声

(1) ヘルスセンターで子宮頸がんの検査を受けた人

6人の子どもがいる47歳のAさん。

「今まで『がん』というものは聞いたことがあった。村で『がん』で亡くなっている人がいたので、『がん』になると死んでしまうものだと思っていた。

SMAG*から子宮頸がんについていろいろ教えてもらううちに、早期発見早期治療によって子宮頸がんは治る病気であることを知った。ちょうど、子宮頸がんの症状の一つの不正出血が自分も続いていて、これは早く受診しなければと思って、検査を受けることにした。

結果は陰性。子宮頸がんではないということがわかったし、その原因は家族計画のために使用しているホルモン剤の副作用の可能性が高いと、看護師が教えてくれて安心した。

検査ではプライバシーが守られていて、個室に私と二人の女性看護師だけだった。待ち時間が一時間ほどあって長かったけど、サービス自体には満足している。

早期発見早期治療が大事だから、自分の頸がん検診カードを友人に見せて、彼女たちにも行くように勧めている。検査は2年ごとと聞いているので、2026年にもまた受診するよ!」
*SMAG=Safe Motherhood Action Groups、母子保健推進員

(2) 地域で活動するSMAG(母子保健推進員)

45歳男性のSMAG。2018年からSMAGとして活動しており、普段は農業を営んでいるそう。

「SMAGの活動としては、普段は、妊婦さんに妊婦検診の重要性を伝えたり、家族計画、5歳未満の子どもへの保健サービス(成長発達モニタリングや予防接種など)、身体の清潔を保つことなどについて村の人々に話したりしている。

特に子宮頸がんの啓発では、予防法(対象年齢層へのワクチン接種)、検査の重要性、子宮頸がんのリスク要因などについて教えている。人々からは「子宮頸がんは治る病気なのか」「検査は痛くないか」などがよく尋ねられる質問かな。

自分のコミュニティの人々の行動は変わってきていると思う。子宮頸がんになる一つのリスクとして、伝統的ハーブ薬の使用があるんだ。これは女性が男性を惹きつけるために体のプライベートな部分に使うことが多いのだけど、その使用が減ってきていると思う。

啓発を行う上で以前難しかったと感じたのは、『子宮頸がんのことについて男のおまえが俺の妻に話すな!』みたいなことを言われたこと。今はもう言われないけどね。

ヘルスセンターでの子宮頸がんへのサービスは、受診した人は満足している傾向にある。どうしても家からヘルスセンターへの距離が遠くて、受診したくても難しい人もいる。アウトリーチ活動*は行われたことはあるけれど定期的ではないので、これからヘルスセンターの医療従事者と話し合いながらもっとアウトリーチ活動をできればと考えているよ」

アウトリーチ活動:医療従事者が保健施設からコミュニティに出向いて、地理的、経済的、社会的、文化的など様々な理由で保健施設に来ることが困難な住民に対して、直接、診療、予防接種、健康教育等の保健サービスを提供する活動

(3) クリニックの看護師

「今年(2024年)の4月から子宮頸がんのスクリーニング検査が私たちのクリニックでできるようになった。今までで101件実施している。

SMAGの活動のおかげで、コミュニティから検査を受けたい人が来るようになった。SMAGが付き添って来てくれることもある。彼らの活動を通して、住民たちはもともとは子宮頸がん検査が痛くて怖いものだと思っていたり、スクリーニング検査の結果が陽性の場合だと自分が死んでしまうと思っている→結果を知りたくない→検査を受けたくない、という考えもあったようだが、その認識が変わりつつある。

スクリーニング検査が陽性だった人には、治療ができる医師を紹介して保健センターで治療をしたり、進行している場合は大きな病院に搬送したりしている。治療は医師が実施し、私(看護師)は心理的ケアに努めている。

認識が変わってきていると言えども、こういった誤解はスクリーニング検査を促すうえでの障壁になっている。加えて、スタッフ不足(スクリーニング検査を実施できる人が2人しかいない)、医療資機材の不足、検査を男性医療従事者が実施することへの抵抗、なども現時点の課題である。」

Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします