女性差別撤廃条約とは
※女性差別撤廃条約:Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women-CEDAW, 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約
男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女性に対するあらゆる形態の差別を撤廃することを基本理念とした条約。
女性差別撤廃条約は9つある国連の人権条約の一つです。
1979年の第34回国連総会で採択され、1981年に発効、1985年に日本は批准しました。2020年10月時点においては、 署名国数99、締約国数189という状況です。
1980年代の日本政府は女性差別撤廃条約を締結することをためらっていましたが、当時参議院議員だった市川房枝氏が「条約は時の政権によって中身を変えることができない。」と超党派の女性議員をまとめることに成功。その言葉の通り女性差別撤廃条約は、日本の男女平等政策のガイドラインになっています*。
*「女性差別撤廃条約と私たち」林陽子(2011)
現在の日本と、この条約はどんな関係があるの?
条約を批准した国の義務として、「女性差別となる法律の撤廃」が義務付けられています。
「差別」とは直接的な差別だけではなく、間接的な差別も含まれます。間接的な差別とは、「男・女」と明記がされていなくても実際の効果・インパクトが女性にとって不利なものが含まれます。
現在の日本でもこの条約の基準では「差別」に当てはまる法律が残っています。
その一つが「夫婦同姓」です。
日本の民法第750条では「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定め、夫婦同姓を義務付けており、婚姻後もそれぞれが婚姻前の姓を称することを希望する夫婦の婚姻を認めていません。
しかし、実際には94.7%(2022年時点)が妻が夫の姓を名のっている状況です。これは間接的差別に該当します。
「女性差別撤廃委員会の勧告」は、日本の政策を変える一つの可能性です。
※女性差別撤廃委員会:Committee on the Elimination of Discrimination against Women-こちらもCEDAW
日本国憲法第98条において「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と定められており、日本政府は憲法の観点からも「女性差別撤廃条約」を誠実に遵守する義務があります。
さらに、自由・民主主義・法の支配・人権擁護を重んじるG7諸国の一員、また国際社会の一員としても、日本政府には国連の勧告を真摯に受け止める道義的責任があります。
選択的夫婦別姓に関しては、制度を改善するよう、これまで女性差別撤廃委員会から3度も勧告されていますが、問題はいまだに改善されていません。
女性差別撤廃委員会の勧告によって、実現したこともあります。
例えば、「婚姻年齢」を男女同一にすることに関しては、2022年に女性が16歳だったのが、18歳に引き上げられました。また、女性のみの「再婚禁止期間(離婚してから100日を経過しないと、再婚はできない)」がありましたが、2024年4月に廃止されました。
どうしたら「女性差別撤廃委員会」から日本政府に勧告してもらえるの?
女性差別撤廃委員会などによる政府審査では、市民社会や国内人権機関が提出する、シャドウレポート、カウンターレポートとも呼ばれる草の根からの報告書が、各国政府の報告書と共に委員会によって参考とされます。
ただし日本の場合には、国内人権機関が存在しないため、事実上市民社会(NGO、学術界、様々な専門分野の女性団体、人権擁護活動団体から、政治的活動をする団体など)からの報告書提出が主になります。
2024年は、8年ぶりに日本政府が審査される重要なタイミングでした。
そこで、ジョイセフはと6つの市民団体と連携して、日本の実態を伝える「シャドウレポート」を提出しました。
この「シャドウレポート」は「女性差別撤廃委員会」の貴重な情報源として扱われ、今回の日本政府への勧告内容にも大きく盛り込まれました。ジョイセフと共同団体が執筆したSRHRに関するシャドウレポートからも、包括的性教育の学校教育への導入、堕胎罪の撤廃、安全な中絶へのアクセス、母体保護法の改正、緊急避妊薬を含む近代的避妊法へのアクセス、性同一性障害特例法の手術要件の撤廃、同性の婚姻の法制化などが委員会に採用され、勧告として発出されました。
CEDAW関連情報
- Author
JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします