ブルキナファソは、家族計画の普及に力を入れていますが、若年妊娠、児童婚、女性性器切除(FGM)などの課題が残っています。特に児童婚の問題は深刻で、今も女性の52%が18歳未満で結婚しています(出典:世界人口白書2020)。
2020年3月に開始したこの事業は、2023年7月31日で終了しました。7月26日にプロジェクトマネージャーたちとの最後のオンライン月例会議がありました。2020年5月から毎月開催してきたこのオンライン会議は、活動計画、進捗の確認、課題解決に向けた話し合いを重ね、前に進めていくための場でした。
フランス語圏で経験した、「初めて」のこと
このプロジェクトは、日本政府の支援(国際機関連携無償)により、UNFPA(国連人口基金)ブルキナファソ事務所および2つの現地NGO(KIMI財団とブルキナベ家庭福祉協会)とジョイセフがパートナーシップを組み、対象となる4つの市で、思春期の若者が、自分たちのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(SRH)の権利を行使するための能力強化を目指して実施してきました。
ジョイセフは3年にわたり、社会行動コミュニケーションとモニタリング評価分野での技術支援を、日本・ガーナ・フランスからの遠隔と数回の出張を組み合わせて行ってきました。
ブルキナファソはジョイセフにとって、フランス語圏で本格的な事業を行う最初の国となりました。この4団体で一緒に活動するのも初めてです。権利に基づくアプローチの思春期事業。更にコロナ禍で最初の1年以上渡航できない中での実施。2022年には2度クーデターが起こり、治安悪化により出張がキャンセルに。いろいろな「初めて」を経験しました。
6月22日に首都のワガドゥグで開催した成果共有ワークショップで上映するために、皆でこの事業の活動を伝えるビデオを作成しました。私は制作途中の映像を見て内容のチェックをしました。
映像には、若者アクティビスト、大人サポーター、先生達が、学校や、人であふれるバスターミナルやマーケットで、私たちが試行錯誤し作った教材を使いながら、いきいきと若者達にSRHRについて啓発活動し、移動クリニックやヘルスセンターでのSRHサービスに若者たちをつなげている様子が映し出されていました。
移動クリニックのドアの取っ手は、何度も色々な人が開け閉めをした結果なのでしょう、壊れている様でした。「タブーを越えて、性について皆で話せるようになった」と若者アクティビストが語っていました。
Ma santé, c’est mon droit 「私の健康、私の権利」
映像を見ながらここに至るまでの、時に悪戦苦闘しながら皆で進んで来た道のりが思い出され、気がついたら声を出して泣いていました。こうした一人ひとりの地道な活動の積み重ねのおかげで、延べ37万人の思春期の若者達が、SRHRについての情報を得て、また20万人以上の思春期の若者が移動クリニックのサービスを利用することができたのです。
冒頭に書いたオンライン会議の最後に、4団体からの参加者がそれぞれ一言ずつ話しました。「自分は複数の事業を担当しているが、このプロジェクトからは、本当にたくさんのことを学べた」「このプロジェクトを通じて学んだ戦略や方法を別のプロジェクトで使っていく」といった声が聞かれました。私を含め、関わった人自身が成長できたと思える事業に皆で育てられたこと、それぞれがこのプロジェクトでの学びを足場にして、次のステップを考えていることを嬉しく思いました。
UNFPAブルキナファソから、完成したビデオが届きましたので、紹介します。
これからも共に学びながら、プロジェクトを実施していきたいと思っています。是非応援してください。
- Author
吉留 桂
2001年よりジョイセフを通じてセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツの実現に向け国際協力活動に従事。主に社会行動変容コミュニケーション分野(コミュニケーション戦略構築、教材企画・開発、教材使い方指導、住民主体の課題解決に向けた仕組みづくり等)の技術協力を通じた、住民の行動変容や支援環境づくりに取り組む。アジア・アフリカ・ラテンアメリカ16カ国の事業に携わる。趣味は合気道と料理。