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「ジェンダー・ギャップ指数」2024が発表 日本は156カ国中118位

2024.6.17

ジョイセフが毎年注視している「ジェンダー・ギャップ指数」2024年のレポートが、2024年6月12日に公開されました。

ジェンダー・ギャップ指数

グローバル・ジェンダー・ギャップ指数(The Global Gender Gap Index:GGGI)とは、 世界経済フォーラムが毎年発表している世界におけるジェンダー格差指数。各国を対象に、政治・経済・教育・健康の4部門について、男女の間にどれだけの格差が存在しているかを分析してスコア化し、そのスコアを元に各国のジェンダー平等達成度の順位をつける。(指数は女性/男性で算出、平等なら1、最低は 0)*
*例:閣僚における女性の割合が20%の国の場合、男女比は20:80となる。この場合のジェンダー平等スコアは0.25である。

2024年と2023年 各項目の比較
項目 2024 2023
全体 118位 125位

各項目ランキング

項目 2024 2023
経済 120位 123位
政治 113位 138位
教育 72位 47位
健康 58位 59位

今回のジェンダー・ギャップ指数 日本のデータを読む

2024年の指数では、日本(118位)は2023年(125位)から前進したと思われていますが・・・。
これは主に「政治」項目の改善によるもので、「経済」の項目では、まだ56.8%の経済的男女格差が解消されていないにもかかわらず、日本は120位にランクされています。

経済
  • 労働参加平衡は76.8%で、女性の参画は2022年の水準から徐々に増加している。2024年の立法府、上級官僚、管理職に占める女性の割合も2023年から+1.7パーセンテージポイント、2006年から+4.6パーセンテージポイント増加した。それにもかかわらず、日本の上級職におけるジェンダー格差は依然として大きく、ジェンダー平等スコアは17.1%で、日本では指導的役割の6人中5人が男性である。
  • 推定所得もまた、2024年のスコア58.3%に基づくとかなりの格差を示す。これは2016年以降改善されているが、2015年に達成した最高スコアに比べ、まだ-2.6ポイント遅れをとっている。
政治
  • 政治的エンパワーメントは11.8%で、全体では113位である。
  • 女性は閣僚の4分の1を占め、パリティ・スコアは33.3%となり、2023年の女性の割合がわずか8%、パリティスコア9.1%から大きく改善した。
  • 国会議員の男女比は11.5%で、経年変化は極めてわずかである。
教育
  • 教育達成度では、日本は99.3%のスコアで事実上平等を達成している。
  • 識字率と中等教育就学率における平等の結果である。これは、識字率と中等教育への就学率が同等であることによる。高等教育就学率(96.9%)はほぼ同等である。
  • この結果、日本は教育サブインデックスで総合72位となった。
健康
  • 健康と生存における日本のスコアは昨年とほぼ横ばい、58位である。
    *1)出生時における男女比と2)健康寿命の2つから割り出し

※上記 出典:Global Gender Gap 2024- Insight Report, June 2024,World Economic Forum

ジョイセフの視点で見るジェンダー・ギャップ指数 2024

ジョイセフは、ジェンダー・ギャップ指数順位のランクアップ(125位→118位)を、達成や成果等のようにポジティブに考えてはいません。ジェンダーギャップ指数が示すのは、1つの国におけるジェンダー平等の達成度です。通常教育や健康などの指数は、経済発展が進んだ国の方が有利になりますが、その大きな理由は、まだ周りの社会を見渡せば、ジェンダー平等が進んでいる実感がないということです。

ジョイセフが今回発表された結果で気になった点は以下です。

経済
  • 同一労働における賃金(収入)格差が後退 (75位→83位)
政治
  • 政治面での改善は、去年9月の内閣改造で女性大臣が5人に増えたことに大きく依拠する。一方で副大臣、政務官が全員男性となったことが問題になった。次世代閣僚を養成するポストとも言われる副大臣・政務官ポジション54をすべて男性が占めたことからは、次世代の女性リーダーを養成する気持ちが無いことが透けて見えていないか。一時的に女性閣僚を増やしてジェンダー・ギャップ指数が改善しても、中身が伴わなくては意味がない。(参考:https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/meibo/seimukan.html
教育
  • 補足ターゲット中、STEM分野卒業、博士号取得の男女比の数字が不明であること。
    ジェンダー統計のより踏み込んだ整備が急務であると考える。
健康
  • Unmet family planning (家族計画の未整備)のデータが無い。家族計画の未整備は出産可能年齢(15-49歳)で意図しない妊娠をした人のうち、避妊薬(具)を使用していなかった人の割合を示す物。妊娠を防ぐために必要な知識や、避妊薬(具)のアクセスについて検討するために必要なデータであり、こちらもジェンダー統計の整備が急務。
  • 一生の間にジェンダーに基づく暴力を受ける女性の割合が大きく減少している。2023年の15%(2019年のOECD発表データから引用)から4%(2023年のOECD発表データから引用)に。一生の間に親密なパートナーから身体的および/または性的な苦痛を受けたことのある女性の割合を指標にしているが、コロナ禍を挟んでパートナー間の暴力が増えたという報道もあり、4年でこんなに少なくなるとは考えづらい。
  • ジョイセフが重要視している「生殖に関する自己決定権(Reproductive Autonomy)」が、今回のデータでは「権利に制限がある(Restricted rights)=意図しない妊娠をしたときに法の枠組みが女性のリプロダクティブ・ヘルス・ライツ(RHR)を守るのに、厳格な正当性が必要としている」と判断された。
    前回は「法的枠組みは、女性のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)と権利を、望まない妊娠の場合にのみ、いくつかの正当な理由とともに保護するものである(Uneven rights)」であった。世界の中絶に関する法的枠組みが一時後退を見せたものの、複数の国で中絶の自由が憲法に盛り込まれたり、女性のRHRと身体の自己決定権を守る法整備制度にシフトしているのに対し、日本では明治時代の堕胎罪が残り、母体保護法の配偶者同意要件などが残っていることが理由ではないか?

“「緊急避妊薬」の販売状況の比較を見ても、日本はまだまだ世界から遅れを取っている”(ジョイセフ・アドボカシーグループ 草野)

私は海外出張のたびに、現地で緊急避妊薬がどのように販売されているかを調べています。
ベトナムでは街角やショッピングセンター内の薬局で、医師の処方箋がなくても購入できるOTC薬として販売されていました。
価格は37000ドン(180円)。カフェでカプチーノ1杯の値段です。

タイでも街の薬局でOTC薬扱いです。80バーツ(350円)。
コンビニで500MLのコーラが17バーツですから、約4本分の値段です。
また、タイではユースクリニックで、無料で緊急避妊薬、避妊用の注射も受けることができます。保健省の予算です。

イギリスでも町中にある薬局で、OTC薬として販売。26.5ポンド。
カプチーノ一杯が5ポンドくらいなので、5~6杯分です。
イギリスでは、かかりつけ医、セクシュアルヘルスクリニックやユースセンターなどで、無料で入手することもできます。

バングラデシュでも町中の薬局で、OTC薬として100~200タカで販売。
缶のコーラ(350ML)が50タカです。

*緊急避妊薬はこれらの国で、必要な時、多くの人にとって支払いが可能な価格で、あるいは無料で入手できる薬です。

「世界の避妊政策マップ 2023」では世界中の国が、赤黄色緑に色分けされています。
ベトナムは黄色、タイ、イギリス、バングラデシュは緑です。
日本は赤、Very poorな避妊政策とされています。

これは今回のジェンダー・ギャップ指数2024で、「生殖に関する自己決定権(Reproductive Autonomy)」が「権利に制限がある(Restricted rights)」となっている事とも関連していると言えます。

ジョイセフも大きく関わった、去年のG7サミットにおける広島宣言では、岸田首相のリーダーシップのもと、「全ての人の包括的なSRHRを達成することへの完全なコミットメントを再確認する」と約束がされました。
すべての人のSRHRを守るために。日本政府が約束を履行することを、引き続きジョイセフは市民社会とともに注視していきます。

© 2024 Global Contraception Policy Atlas


 
 
参考
「ジェンダー・ギャップ指数」2020が発表 日本は156カ国中120位
「ジェンダー・ギャップ指数(2019)」日本が110位から121位へ

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