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米国におけるグローバル・ギャグ・ルールの復活とSRHRへの影響

2024.11.29

(写真:BBC)

ドナルド・トランプ氏は来年1月の大統領就任とともに、グローバル・ギャグ・ルール(GGR)を復活させる予定です。
GGR、正式名称「メキシコシティ政策」とは、1984年に共和党のレーガン大統領(当時)が初めて導入した米国の対外援助政策のひとつです。GGRでは、人工妊娠中絶に関するサービスを提供・推進する米国国外団体への、米国の資金提供の制限を規定しています。
共和党と民主党の政権交代に伴い、導入と廃止が繰り返され、2017年に就任したトランプ氏が再導入、2021年にバイデン大統領によって撤回されました。

そしてトランプ氏返り咲きに伴う2025年の再導入により、以前と同様、もしくはそれ以上のSRHRへの打撃が懸念されています。背景には、米国の政策案「プロジェクト2025」があります。この中でトランプ氏の政策アドバイザーたちは、GGRの適用範囲を大幅に拡大し、人道支援金を含め、米国・非米国組織すべての援助を対象にするとしています。米国は、世界最大の保健分野の資金提供国であることから、これは米国だけでなく世界中の人々にとって重要なSRHRサービスへのアクセスが悪化する状況を意味します。中絶が規制され、避妊へのアクセスが困難になっても中絶件数が減少することはありません。むしろ意図しない妊娠や、より多くの安全でない中絶を招くことになります。

国際家族計画連盟(IPPF)は、第一次トランプ政権におけるGGR復活後1年の時点(2018年)で世界のSRHRが受けた悪影響について報告していますが、2025年以降さらに大きな影響を受けることを予測し危機感を募らせています。

*保守系シンクタンクのヘリテージ財団が主導し、反移民や、反リプロダクティブライツ、小さな政府を支持する保守派の意見を取りまとめた政策マニフェスト

参考

(編集後記)
「ウィル&ハーパー」(Netflixで配信中)は、長年の同僚であり、友人関係にある俳優のウィル・フェレルと、トランス女性としてカミングアウトした放送作家ハーパーがアメリカを旅するドキュメンタリー作品です。61歳で自分を偽らずに生きていく決心をしたハーパーと、戸惑いながら懸命に親友を理解しようとするウィルの姿が、とても自然に描かれています。何より、「テルマ&ルイーズ」のように車で旅するロードムービーであることが秀逸。ふたりとも生粋の「放送人」であることから、おふざけな演出もありますが、ウィルがハーパーを丸ごと尊重し、とても大切に思っていることが伝わってくる、深くて心温まる作品でした。途中でLGBTQ+の人々に風当たりの強い地域にも行きますが、やはりアメリカは広い。ぜひエンドロールまで見ることをオススメします!(すなみ)

Author

ジョイセフ 編集室