アイスランド大使館 ステファン・ホイクル・ヨハネソン大使
国連人権理事会は、人権侵害を防止し、総合的な政策ガイダンスを提供し、新しい国際規範を発展させ、世界のいたるところで人権順守を監視し、加盟国が人権に関する義務を果たせるように支援する機関です。(国連広報センター引用)
国連人権理事会では、全ての国連加盟国の人権状況を定期的に審査する仕組みがあります。この審査はUPR(普遍的定期的レビュー)と呼ばれ、4年半ごとに行われます。
2023年1月末に開催されたUPR日本審査に向けて、ジョイセフは国内外の8つの市民団体* と共同で、日本国内のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の課題をまとめた報告書を2022年7月国連に提出しました。
2023年7月には、第53回人権理事会で勧告採択が行われます。それに先立ち、日本政府に勧告を「受け入れる」採択を求めるため、ジョイセフと「#なんでないのプロジェクト」の主催で、共同レポートを執筆した市民社会が集まった勉強会を、衆議院第一議員会館にて行いました。
1月のUPR日本審査では、国連加盟国のうち24カ国から、日本へ向けてSRHR関連の勧告が提出されています。今回の勉強会では、その中から4カ国の大使館関係者を招待し、日本に勧告を出した理由や当該国におけるSRHRの理解・推進について話していただきました。
この記事は、勉強会でのステファン・ホイクル・ヨハネソン大使(アイスランド大使館)の発言をまとめたものです。ジェンダー平等は社会における最重要課題であり、性別や年齢を問わず一人ひとりが議論や活動に参加すること、みずからの心構えを変えていくことで実現できると訴えました。
*8つの市民団体:#なんでないのプロジェクト、#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト、SOSHIREN 女(わたし)のからだから、LGBT法連合会、一般社団法人Spring、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、Sexual Rights Initiative、Asia Pacific Alliance for Sexual and Reprroductive Health and Rights
ジェンダー平等の実現へ向け、男性を含めた幅広い人々に議論や活動への参加を呼びかけよう
アイスランドは、安全な中絶へのアクセス、同性婚合法化、法的な性別認定プロセスにおけるトランスジェンダーの人びとへの強制的な不妊手術の廃止、不同意性交罪の制定と性的同意年齢の引き上げ、国際基準に沿ったCSE(包括的性教育)実施について、日本に勧告を出しました。
性の平等を実現し、差別のない社会を作るためには、以下のポイントが重要です。
まず、ジェンダーに基づく偏見や差別をなくすこと。中絶を罪とみなさないこと。そして中絶をするときに課す条件を排除することも重要です。また、夫婦別姓の選択肢を持てるようにする必要があります。
ジェンダー間の平等は、女性だけの問題ではありません。男性の関与とコミットメントを必要とする社会全体の目標です。アイスランドは、ジェンダー平等の推進を最重要課題として位置づけています。若者も含めて男性が議論や活動に参加し、性別や世代を問わず、幅広い人々がジェンダー平等に向けた活動に加わるよう求められています。
研究により、ジェンダー平等な社会はハッピーで健康なものであり、信頼性が高く、経済的にも豊かな成果が得られることがわかっています。企業や国の業績にもプラスの影響を与えるとされています。
この前向きな変化を起こすためには、政策や法律の制定も重要ではありますが、人々の「心構えの変革」が必要不可欠です。一人ひとりが自分の中にある有害な「男性的ステレオタイプ」を排除し、男性も自然な形でジェンダー平等に向けた議論や活動に参加できる社会を作らなければなりません。
以上がジェンダー平等を推進するために重要なポイントです。これらの取り組みによって、ともにより公平で包括的な社会の実現を目指していきましょう。
- Author
JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします