自分の身体(からだ)は、誰にも支配されない「自分のもの」です。ところが今、その基本的な人権を揺るがす動きが、国内外のさまざまな場所で見受けられるようになりました。
この状況を変えていくために、「すべての人が、自分の体を自分のものとして生きられる社会の実現」を求めるデモとアクション「#私のからだデモ」が、12月13日に行われました。
東京や大阪、名古屋、札幌など、全国各地で大勢が集まり一斉に声を上げる中、ジョイセフを代表して、山口悦子事務局長がスピーチしました。
ジョイセフはSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)を推進し、誰もが自分の意思で生き方を選択できる世界をめざして、国内外で活動する国際協力NGOです。取り組みを続ける中で、日本と世界のあらゆる地域はつながっていて、たがいに影響を与え合っているのを実感してきました。だからこそ、日本に住む私たち一人ひとりが声を上げていくことに、大きな意味があると考えます。
スピーチでは、SRHRの根源にある「私のからだは私のもの」を実現するために、「みんなで声を上げましょう」と呼びかけました。
こちらにスピーチの内容を掲載しています。ぜひお読みください。
「#私のからだデモ」 ジョイセフ山口悦子のスピーチ
国際協力NGOジョイセフの事務局長、山口悦子です。ジョイセフは56年間、43の国や地域の女性や少女の健康、とりわけ性と生殖に関する健康と権利(SRHR)を守る活動を現地の人と一緒にしてきました。
米国大統領選挙以降の、世界各地、日本における女性や性的マイノリティのSRHRへの攻撃に、私たちも心から危惧しています。
日本では女性が主体的に使える避妊法が少なく高額。堕胎罪が残り、人工妊娠中絶も第三者の同意が必要。緊急避妊薬のアクセスも悪い。
包括的性教育どころか、SRHRの正しい情報が学校でもほとんど教えられていない。結果として、自分のからだのことを自分で決めることが、難しい状況です。
ジョイセフの海外の事業地でも、様々な課題があります。
例えばガーナの貧困地域では、10代の少女が今日明日の食事と引き換えに性交渉をし、意図しない妊娠に至ることがあります。
ウガンダでは貧困が理由で、幼いうちに学校をやめて家政婦として働く少女たちが、家主などの大人によって13歳、14歳で妊娠させられるケースが多い。若年妊娠の割合が25%。つまり4人に1人の女性が10代で妊娠していることになります。
安全な中絶ケアが受けられない女性や女の子は、自分で解熱鎮痛剤や危険な薬草を大量摂取したり、膣の中にハンガーや自転車のスポークを入れて掻き出すなど、自分で堕胎しているという話もいまだに、アジア、アフリカの様々な国でよく聞きます。
アフガニスタンではタリバン政権下で、極度の栄養不良の母子が増えています。私たちが支援する現地のクリニックには、夫や家族からの暴力による怪我、鬱、PTSDの治療で訪れる女性も増えています。
女性に唯一許されていた高等教育、女性の保健・医療学校への通学が、今月になってタリバンに認められなくなった。
一方でタリバンは、女性は女性の医療従事者の診察を受けることを求めており、これにより、将来アフガン女性は医療ケアを受けることすらできなくなります。
今後トランプ政権下で、世界のSRHRを推進する活動は、さらなる逆風にさらされます。
米国から資金援助を受ける条件である、中絶関連の医療サービスやアドボカシーの中止を義務づける政策「グローバル・ギャグ・ルール」 が復活すれば、世界のSRHR関連の資金が激減し、同等の規模の代替資金を見つけるのは至難の業です。
プロジェクト2025が実行された場合、科学的根拠に基づく、人権とジェンダーに配慮した開発支援が排除されます。そこにはSRHRの推進も含まれます。
米国と日本、そして世界のあらゆる国や地域はつながっています。だからこそ、日本の私たちは「私のからだは、私のもの」と主張し、「私たちのからだへの攻撃を許さない」と、世界に伝えていくことが重要です。
世界中どこで、どんな性やからだに生まれても、私たちはみな大切で尊重されるべき存在です。すべての人のSRHR、「私のからだは私のもの」を実現するため、みんなで声を上げましょう。
ありがとうございました。
- Author
山口 悦子
2004年にジョイセフ入職後、一貫してアジアとアフリカでSRHRを推進する国際協力プロジェクトに従事している。特にHIV/エイズ、妊産婦保健、男性参加、若者のエンパワーメントといった分野で、コミュニティを中心とした仕組みづくりに携わる。JICAのHIV/エイズ専門家としてガーナで5年の経験、JICAインドネシア事務所の保健分野の企画調査員経験を持つ。第二の故郷はガーナ。趣味は犬(ガーナ生まれ)とテニス。