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マイノリティやSRHRなどにまつわるノルウェーの提言とは。日本の政治家のリーダーシップに期待【国連「UPR審査会」ジェンダー・SRHRに関する人権改善勧告院内勉強会から⑥】

2023.7.5

ノルウェー大使館 インガ M. W. ニーハマル大使
 


 
国連人権理事会は、人権侵害を防止し、総合的な政策ガイダンスを提供し、新しい国際規範を発展させ、世界のいたるところで人権順守を監視し、加盟国が人権に関する義務を果たせるように支援する機関です。(国連広報センター引用)

国連人権理事会では、全ての国連加盟国の人権状況を定期的に審査する仕組みがあります。この審査はUPR(普遍的定期的レビュー)と呼ばれ、4年半ごとに行われます。
2023年1月末に開催されたUPR日本審査に向けて、ジョイセフは国内外の8つの市民団体* と共同で、日本国内のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の課題をまとめた報告書を2022年7月国連に提出しました。

2023年7月には、第53回人権理事会で勧告採択が行われます。それに先立ち、日本政府に勧告を「受け入れる」採択を求めるため、ジョイセフと「#なんでないのプロジェクト」の主催で、共同レポートを執筆した市民社会が集まった勉強会を、衆議院第一議員会館にて行いました。

1月のUPR日本審査では、国連加盟国のうち24カ国から、日本へ向けてSRHR関連の勧告が提出されています。今回の勉強会では、その中から4カ国の大使館関係者を招待し、日本に勧告を出した理由や当該国におけるSRHRの理解・推進について話していただきました。

この記事は、院内勉強会でのインガ M. W. ニーハマル大使(ノルウェー大使館)の発言をまとめたものです。ニーハマル大使は、女性やマイノリティの社会参加についての仕組みづくり、SRHRに関した立法や政策改革のほか、日本の死刑制度についての検討を求め、日本の政治家のリーダーシップへの期待を述べました。

*8つの市民団体:#なんでないのプロジェクト、#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト、SOSHIREN 女(わたし)のからだから、LGBT法連合会、一般社団法人Spring、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、Sexual Rights Initiative、Asia Pacific Alliance for Sexual and Reprroductive Health and Rights
 


 

マイノリティやSRHR、日本の死刑制度に関する提言

今年、2023年の1月に行われたUPRでは、女性やLGBT、民族的なマイノリティへの差別を防ぐために、保護策を強化することが重要であると、各国から強調されました。最近の日本の地方や国の政策の進展については、ノルウェーも歓迎しています。ただし、法的な制裁や執行メカニズムの弱さも指摘されました。

ノルウェーは今回のUPRで、国連の場における同僚である日本に対して以下のことを勧告しました。

まず第一に、死刑の執行についてはモラトリアムを導入し、最終的には死刑廃止に向けた措置を取ること。

第二に、女性やLGBT、その他のマイノリティが社会や政治に完全かつ平等に参加できるよう、差別やハラスメントへの対策を強化すること。

第三に、中絶や性と生殖に関する健康(SRHR)に向けて、安全でタイムリーかつ手頃なヘルスケアへのアクセスを保証する、包括的な立法や政策改革を行うこと。

現代の日本では、職場や教育、行政、社会全体で男女平等を確保することが重要視されています。ですが、人権侵害への法的な保護や実施手段などについては、改善の余地がまだあります。本日のような機会を活かし、こうした問題について議論することは、非常に妥当なことであると考えています。

国内および国連の仕組みを強化し、ジェンダー平等、性的マイノリティやその他のマイノリティの社会参加が包摂的に確保される政策を採用することが求められます。また、死刑廃止につながるような刑法の改正も重要です。

政治家のリーダーシップが期待される

政治家は世論が許容する以上のスピードで動くことはできません。特に人々の信念や善悪の理解から来る問題を解決することは、無理だとよく言われます。

しかし、私は、政治家は社会の変化をうまく導くことができると信じています。もちろん、義務や禁止事項を定義することは重要ですが、政治的リーダーシップは、望ましい行動を奨励する政策を確立し、すべての人々が望む生活を送るための現実的な手段や機会を与えることによっても発揮されるものです。

ヨーロッパでは、ジェンダー平等や差別の撤廃に向けた進展が見られます。死刑廃止に関しては、政治家の先導に、市民が賛同する流れが生まれました。現在、ヨーロッパではベラルーシとロシアを除くすべての国が死刑を廃止しており、数十年前に廃止された国もその中にあります。

政治的リーダーは、道徳的な基準や規範を設定し、個人と社会全体にとって何が正しくて何が間違っているかを規定する上で、本人たちが思っている以上に強い役割を担っています。私たちが住む社会を構成する私たち全員の関係を定める法律は、私たちの日常生活を左右するのです。

Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします