2004年に活動を開始した思い出のランドセルギフト。これまでおよそ30万人のアフガニスタンの子どもたちにランドセルを届けました。
ランドセルを手にした子どもたちは、大人になって今どのような生活をしているのでしょうか。
ランドセルを背負って学校に通ったアフガニスタンの女性3名に特別にご協力いただき、当時のことと、今の状況を聞きました。
※アフガニスタンの社会情勢を考慮し、女性たちのプライバシーを保護するためにイラストとイメージ写真でご紹介しています。
「ランドセルをもらって幸せだった」
2010年、小学校1年生の時にランドセルを受け取った
ルビナさん 20歳
Q.家族構成を教えてください。
当時は両親ときょうだい4人の6人家族で暮らしていました。現在はきょうだいが増えて、9人家族です。そのうちの1人が結婚して家を出ています。
Q.小学校卒業後も、進学することはできましたか?
中学校に行き、助産師学校に進んで、2024年に卒業しました。
Q.現在のお仕事は?
ジャララバード市の私立病院で助産師として働いています。
Q.ランドセルを受け取る前はどのような生活をしていましたか?教育を受けていましたか?
小学校に通っていました。校舎はなかったので屋外で勉強していました。カバンはなかったので、ビニール袋を代わりに使っていました。
Q.日本からのランドセルギフト、どのように知りましたか?
学校に行って、その日に知りました。
Q.ランドセルを受け取った時のことを教えてください
まさかそのようなものをもらえると思っていなかったので、とても嬉しかったです。ランドセルをもらって初めて日本のことを知りました。
Q.何色のランドセルを受け取りましたか?本当は欲しかった色はありましたか?
赤でした。本当は黒がよかったと当時は思っていました。
Q.ランドセルを見たご家族の反応はどうでしたか?
母がとても嬉しそうでした。両親は日本のことをよく知っていたので喜んでいました。
Q.ランドセルを受け取ったあと、何か生活や心境に変化はありましたか?
まだ子どもだったから日本のことはよくわからなかったけど、とても幸せに感じたことを覚えています。頑張って学校に通って勉強を続けようと思いました。
Q.小学校を卒業したあと、ランドセルはどうしましたか?
弟にお下がりとしてあげました。
Q.今はどのような生活を送っていますか?
生活に制限があって苦しいです。マハラム(家族の男性が一緒にいないと外出できないというルール)に従わないといけません。家の中ではこれまで通りでも、外に出られないので幸せとは言えません。
Q.日本の人々へメッセージはありますか?
私たちを応援してくれてありがとうございます。貧しい子どもたちを支えるためにランドセルの寄贈活動がずっと続いたら嬉しいです。
「両親が学校に通い続けることに賛成してくれた」
2016年、小学校3年生のときにランドセルを受け取った
グルナスさん 20歳
Q.家族構成を教えてください。
一夫多妻制で父に配偶者が2人いるので、当時は13人家族でした。現在は16人家族で暮らしています。
Q.現在のお仕事は?
実家にいて、手伝いをしています。仕事はしていません。
Q.小学校卒業後も、進学することはできましたか?
中学校に進むことができました。
Q.ランドセルを受け取る前はどのような生活をしていましたか?教育を受けていましたか?
小学校に通っていました。校舎は一応ありましたが、使える状態ではないような建物でした。かばんは持っていなかったので、風呂敷を使っていました。当時はまだ3年生で、日本のことは知りませんでした。
Q.日本からのランドセルギフト、どのように知りましたか?
学校に行って、その日に知りました。
Q.ランドセルを受け取った時のことを教えてください
ガタガタな道を歩くときも、砂ぼこりなどで汚れる心配がある時も、ランドセルに入れて教科書や文房具を守ることができるようになったので、嬉しかったです。
Q.当時、何色のランドセルを受け取りましたか?本当は欲しかった色はありましたか?
黒いランドセルでした。黒がよかったので嬉しかったです。
Q.ランドセルを見たご家族の反応はどうでしたか?
父は仕事をしていなくて、母も近所の人の手伝いをしていたが、そんなに収入がなかったので、かばんや学用品を買えませんでした。だからとても嬉しかったです。
Q.ランドセルを受け取ったあと、何か生活や心境に変化はありましたか?
ランドセルをもらって、勉強を続けようという意欲が湧きました。両親も学校に通い続けることに賛成してくれたのが嬉しかったです。
Q.小学校を卒業したあと、ランドセルはどうしましたか?
妹にあげたのですが、小学校で使っている時期に家が火事になり、ランドセルも焼けてしまいました。すごく残念で、私も妹もすごく悲しかったです。
Q.今はどのような生活を送っていますか?
父ともう一人の母は薬物中毒になっています。私の実母が近所の手伝いで日当をもらって家族を養い、家賃も支払っています。母が可哀想で、私自身も鬱状態になっています。本当は仕事に就くために大学か助産師学校に行きたいし、もっと良い生活を送れたらと思うのですが、今の経済状況では難しいです。
Q.日本の人々へメッセージはありますか?
子どもたちの学びを応援してくれてありがとうございます。これからも引き続き子どもたちのためにランドセルを送ってください。
後日談:
インタビューを聞いて、グルナスさんの状況を知ったアフガン医療連合センター(ジョイセフのパートナー団体)のスタッフが彼女にサポートを申し出て、助産師学校に入学できました。しかし、12月3日、タリバン暫定政権より、女性の医療系教育機関への通学を禁止が発表され、ようやく学び始めた矢先に学びの道を絶たれてしまいました。グルナスさんは、この状況を非常に悲しんでおり、一刻も早い通学許可の再開を望んでいます。
「私もいつか貧しい人を助けたいと思った」
2011年、小学校3年生のときにランドセルを受け取った
パルワシアさん 24歳
Q.家族構成を教えてください。
当時は、両親と4人のきょうだいの6人家族でした。現在は11人家族です。
Q.小学校卒業後も、進学することはできましたか?
中学校を卒業したあとに助産師学校に進学しました
Q.現在のお仕事は?
ユニセフのポリオ撲滅プログラムに関わりながら、パートタイムでジョイセフが運営支援をしている母子保健クリニックに来て勤務しています。
Q.ランドセルを受け取る前はどのような生活をしていましたか?教育を受けていましたか?
かばんは持っておらずビニール袋で登校していました。学校には教室が3、4部屋しかなかったので、私とクラスメイトは外で授業を受けていました。
Q.日本からのランドセルギフト、どのように知りましたか?
学校に行って、その日に知りました。
Q.ランドセルを受け取った時のことを教えてください
すごく嬉しくて、こんなことがあるのかと信じられなかった。とにかく感激しました。
Q.何色のランドセルを受け取りましたか?
青いランドセルでした。青がよかったので嬉しかったです。
Q.ランドセルを見たご家族の反応はどうでしたか?
父親がランドセルや文房具を見てとても喜んで、「日本の人たちに感謝している」と言っていたのを覚えています。
Q.ランドセルを受け取ったあと、何か生活や心境に変化はありましたか?
頑張って学び続けようと思う機会になりました。その時から、医療に携わりたいと思って、いつか私も貧しい人を助けられるようになりたいと思いました。
Q.小学校を卒業したあと、ランドセルはどうしましたか?
弟たちにお下がりにして、順番に使いました。弟達が手放したあとは、今も私が思い出として大切に持っています。
Q.今はどのような生活を送っていますか?
豊かな生活とは言えませんが、幸せです。父が商店をして、私も仕事をしていて、なんとか生計を立てています。これからも頑張りたいです。
Q.日本の人々へメッセージはありますか?
ランドセルをもらった当時、家族には仕事がなく収入がなかったので、ランドセルを受け取ったことは私たちにとってはとても大きな出来事でした。これからも貧しい子どもたちを助けてください。お願いします。
<インタビュー後記:思い出のランドセルギフト事業担当 甲斐、栗林より>
日本からのランドセルギフトを受け取った3名の女性たちは、日本からの応援に励まされ、家族の後押しのもと学びを続けて、小学校を卒業することができました。インタビューを通して知ることができたその事実だけでも、とても嬉しかったのですが、なによりも彼女たちが経済的にも社会的にも厳しい状況下でも懸命に生き抜いて、私たちのインタビューに協力してくれたことが奇跡で、この活動の意義を改めて感じています。また、今回のインタビューで初めて、2011年にランドセルを受け取ったパルワシアさんが、助産師としてジョイセフが運営を支援している母子保健クリニックで働いてくれていることが分かり、インタビュー中に彼女と夢が実現した喜びを分かち合い、活動に尽力してもらっていることへの感謝の気持ちを伝えました。
これからもアフガニスタンの子どもたちが、彼女たちのように学びを続けられますように。私たちジョイセフも「思い出のランドセルギフト」活動を続けます。1人でも多くのアフガニスタンの子どもたちに、ランドセルを通して夢と希望を持てるよう応援してください。日本の皆様のご支援、ご協力をお願いします。
母子保健クリニックで働く女性の医療従事者や、来院する女性や子どもたちをマンスリーサポーター「ジョイセフフレンズ」になってご支援ください。
- Author
栗林桃乃
国内外のジェンダーの課題に興味を持ち、大学時代〜現在ジョイセフフレンズとしてジョイセフの支援をしている。いつかジョイセフで活動をと志し、2022年にジョイセフに入職。前職はホテリエ。接客で身につけた対人スキルと2年ほど広報・企画として働いた経験を活かし現在はジョイセフで活動中。国内支援者連携窓口、思い出のランドセルギフト事業統括。日本の若者を性に関する悩みや課題から解放したい思いでI LADY. の活動もサポート。性にとらわれない生き方を実践したい。パートナーとコーギー犬との3人家族。趣味はパートナーと走るロードバイク。