2022年6月24日に、米国の連邦最高裁判所で「憲法は中絶の権利を与えていない」という判決が出ました。これは、1973年の、ロー対ウェイド判決として知られる「中絶は憲法で認められた女性の権利」であるとした最高裁判決を覆すものでした。
今回の裁判は、妊娠15週以降の人工妊娠中絶を原則として禁止するミシシッピ州の法律が憲法違反にあたるかどうかを争ったものでした。
この判決によって、米国では15州が、中絶の条件の厳格化や禁止に向かうとみられています。テキサス州ではすでに、ハートビート法(妊娠6週を過ぎた中絶を禁止とする)という厳しい法律が施行されています。
政治によって女性の人権が左右される事態が、21世紀に起きていることは、衝撃的でさえあります。
最近では、米国以外でも多くの国や地域で、安全な中絶の権利すら奪おうとする動きがあります。
安全な中絶へのアクセスは女性の権利を守ります。しかし、世界の状況、歴史的・文化的・宗教的・政治的・倫理的な背景、ジェンダーの問題、女性の健康、女性の権利、複雑に絡み合う状況を知った上で多角的にみて考え、議論し、アクションする必要があります。
日本においては、母体保護法のもと指定医師による人工妊娠中絶は事実上合法とされていますが、さまざまな課題があり、時に日本の女性達の安全な中絶へのアクセスを困難にさせています。
いま、世界で日本で起きていることを私たちは知り、そして多くの方にも知らせたい。
ジョイセフは、2019年から始まったこの国際セーフアボーションデーの勉強会を今年は、参加申込みした方であれば誰もが参加できるオンラインイベント(ウェビナー)の形でご案内し、皆さんとSafe abortion(安全な中絶・流産)について理解を深め、考える機会を作りました。
この動画では、なかでもとくに日本の安全な中絶・流産に関することにフォーカスし、産婦人科医である遠見才希子先生と空野すみれ先生、NHKの記者である松田伸子さんに、現在の医療と、番組を制作して感じた中絶に関する社会的な認識について、お話いただいたことをまとめています。
2022年1月に公開した記事「中絶の”今”を知るための5つのポイント」は、前年9月に実施した内容をまとめたものでした。
あれから一年経った今、1973年のロー対ウェイド判決「中絶は憲法で認められた女性の権利」を覆す判決が、米国の連邦最高裁判所で出されました。日本でも、中絶に関する動きが活発になっています。
00:00 国際セーフアボーションデーについて 小野美智代(ジョイセフ)
02:04 日本の安全な中絶・流産 医療の現場と最近の動き 遠見才希子先生(産婦人科医)
14:12 日本の安全な中絶・流産 医療の現場と最近の動き 空野すみれ先生(産婦人科医)
21:27 メディアの見解〜クローズアップ現代 番組制作一担当者として感じたこと 松田伸子さん(NHK報道局 国際部記者)
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JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします