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高校生の妊娠、本人が悪いの? 性教育の不足、学ぶ機会の損失という問題も

2022.6.8

ジョイセフでは2019年から、毎年9月28日「International Safe Abortion Day」(安全な中絶・流産のための国際デー)に向け、アクティビストを対象にリプロダクティブ・ライツのひとつ「安全な中絶」をテーマに勉強会を行っています。2021年は「選べない今から、選べる未来へ」を開催しました。
 
2021年の勉強会の時点で、大学の教育学部に在籍している新橋みゆさんは、学業のかたわら、教員志望の学生を対象に、学校での性教育の必要性や伝え方などを考えるための性教育講座を開催しています。
 
活動を始めたきっかけは、高校3年生のときに経験した、予定外の妊娠と中絶。
 
「高校で扱う教科書には“中絶は命を摘む行為”と書かれています。中絶したのは大学に行くための選択でしたが、とても落ち込んで、1年間はなかなか立ち直れないような状況でした」
 
性教育の不足、万が一妊娠した生徒の受け入れという教育体制の問題について、新橋さんの考えと意見をお話いただきました。

高校生の予定外の妊娠、悪いのは本人?

新橋:この場でお話をさせていただく前に、最初にみなさんに伺いたいと思います。高校生の予定外の妊娠は、それを防げなかった本人が悪いのでしょうか?

私が妊娠したとき、「なぜ避妊しなかったの?」「これからどうするの?」ととがめるような言葉を投げかけられることもありました。

でも、高校生の予定外の妊娠の原因は、性教育の不足にあるんです。

幼稚園〜高校までの教育課程は文部科学省が学習指導要領に定めています。その内容の一部を「〜は取り扱わない」「~のみ取り扱う」「~には深入りしない」と例外扱いにする「歯止め規定」と呼ばれるものがあり、中学校の保健分野では、「妊娠の経過は取り扱わないものとする」と記述されています。

歯止め規定で言及されたものを扱うには、保護者の同意やその他のさまざまな調整が必要になります。避妊や中絶の知識も含めた性教育に、義務教育ではなかなか踏み込めない、という状況が生まれているのです。

私の母校は中高一貫校でした。当時のパートナーは高校2年生でしたが、中学校に入ってから性教育を一度も受けたことがありませんでした。

中高一貫校では、中学校と高校の学習指導要領の内容は中高6年間のどこかで扱えばいいという考えです。学校によって教える知識の細かさやタイミングに差があり、場合によっては、中学校で扱う内容を高校で初めて教えることもあります。

その状況で性教育が後回しにされてしまい、中学校の学習指導要領に含まれる、月経や射精に関わる知識を、高校生になってから得ることも少なくありません。

ところが、妊娠すると、冒頭のような「なぜ避妊しなかったの?」「これからどうするの?」といった言葉を投げかけられます。

でも、教わっていない数式は解けないように、性についても、教わらないとわかりません。

「教えてもらってなかったのに」「怒られるのが怖いから誰にも相談もできない」というモヤモヤを抱えながら、中絶可能な22週未満という期間までに、今後の人生に関わる選択をしなければならないのです。

10代での予定外の妊娠は、性について教えてくれる大人や知るための仕組みがないこと、知っていても避妊具にアクセスしにくいことが原因です。

義務教育である小中学校で性教育を受けられるように、教職者や教員志望の人たちが性教育のノウハウを学ぶ環境が大事だと考えています。

自分のことを自分で決められる学校生活を

わたしは今、高校生で中絶を経験した人たちと、ツイッターを通して関わりを持っています。彼らに、経験したことや感じたモヤモヤを聞きました。

  • つわりがひどいのに、制服を着ているから優先席に座れない
  • 妊娠を友人にも学校にも気づかれないようにしなければいけない
  • 昼食の時間に教室や食堂で過ごすのがつらく、外にいるしかない
  • 体がどんどん変化していくことに不安を感じる
  • 産む/産まないの選択以前に、つわりや受診で学校を休むことが増え、推薦入試を受けるという選択肢がなくなりそうで進路に不安を感じる
  • 避妊のことを知る機会や、避妊具を手に入れる手段がなかったのに、妊娠を責められる
  • 感じるモヤモヤを友人や大人にも言うことができない

妊娠した人のなかには、退学になった人もいます。私の周りにはいませんが、実際にパートナーが退学になった例もあると思います。

文部科学省が2018年、妊娠を理由に退学させないように通告を出したため、公立の高校では退学にならずに済むことが増えているようですが、私立の学校では今でも妊娠を理由に退学させることもあります。

高校を卒業できないと、学歴社会である日本では、お金を稼いで子どもを育てていくことがかなり厳しくなってしまいます。

収入源が確保できないと、妊娠後の選択に影響を強く及ぼすことになります。お金がないためにやむを得ず、子どもを産まないという選択をする高校生も実際にいます。

ただ学校側も、妊娠した生徒を卒業までサポートするために配慮する余裕がなかったり、校内での事故で流産するリスクを恐れたりして、学校に通わせる余裕がないという話もあります。

私が中絶を選択したのは、経済的な不安と大学への進学のためでした。私のように、十分な知識や避妊具を得る機会がないまま妊娠し、環境が整っていないために中絶を選択せざるを得なくなってしまう高校生がたくさんいます。自分の体のことなのに、環境に左右されずにポジティブな選択をすることが難しいのです。

調べてみると、体制を整えている学校もあるようで、全国11カ所の高校には、託児所があるそうです。

このように、妊娠しても、育児中でも、高校で学び続けられるようにすることで、やむを得ず中絶を選ぶ生徒を減らせるのではないでしょうか。

また、そんな環境で産むか産まないかを決めることができれば、どちらを選んだとしても主体性のある選択となり、高校生にとっての選択肢が増えるのではないか、と考えています。

プロフィール

新橋みゆ
2022年現在、横浜国立大学教育学部4年。高校3年生で予定外の妊娠と中絶を経験したことをきっかけに、教員志望学生向けに性教育講座を行ったり、SRHRユースアライアンスに所属し、政策提言を行う。
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Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします