ジョイセフは、2023年8月に冨永愛アンバサダー、ジョイセフサポーターの冨永章胤(あきつぐ)さん、支援企業のサラヤ株式会社の方々とともにウガンダのフォートポータルという町を訪れ、活動を見ていただきました。
この記事は2023年10月に、毎月定額寄付いただいているジョイセフフレンズのみなさんへお届けしたレポートに編集を加え、掲載しています。
海外事業グループでウガンダを担当している甲斐です。
フォートポータルはウガンダの西の端にある町で、コンゴ民主共和国との国境に近い観光で栄える町です。
冨永愛アンバサダーと目の当たりにするウガンダの現実
ウガンダは、1年中気候が良く、雨にも恵まれ、作物もよく育つ国です。周辺では、鳥の鳴き声が美しくさえずり、花が咲き乱れています。そんな天国のようなウガンダですが、アフリカの中でも、最貧国のひとつです。人口の2割が極度の貧困にあり、15歳~29歳の若者の4割が学業にも職業(職業訓練を含む)にも就いていない状態にあります。
独立後、内戦や紛争が繰り返され、インフラや産業が発展しなかったことにより貧困が広がりました。貧困が理由で、幼いうちに学校をやめて家政婦として働くようになり、家主や出入りする大人たちによって13歳、14歳で妊娠させられ、出産する女の子たちが後を絶ちません。ウガンダでは若年妊娠の割合が25%。つまり4人に1人の女性が10代で妊娠していることになります。
このような背景から、深刻な問題となっているのが、女性の子宮頸がん、HIV、その他の性感染症です。子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)の感染経路である性行為は、HIVやその他の性感染症の原因ともなるためです。
ウガンダの子宮頸がんの罹患率は人口10万人に対して30(世界平均が13.3)と高く、女性の主な死因のひとつです。また、プロジェクトを実施しているフォートポータルの町では、HIVに感染する女性の割合は17.8%と大変高くなっています。
ジョイセフはこのような状況を打開するため、現地協力団体のリプロダクティブ・ヘルス・ウガンダ(RHU)とともに、ウガンダでの子宮頸がん予防と治療、HIV、その他の感染症の予防と検査、貧困からの女性の自立を促すシングルマザーのための就業支援活動を、サラヤ株式会社の支援のもとに行っています。
子宮頸がんやHIVの啓発活動に参加していた10代の女性へのインタビュー
プロジェクトで実施している、子宮頸がんやHIVの啓発活動に実際に参加していた方々に、インタビューしました。
助産師の話を聞きに来たナイトさん(16歳)
「家が貧しく、小学校3年で学校をやめて家政婦として働きに出た。14歳の時その家の警備員が言い寄ってきた。その男性は愛し合っていれば妊娠しないのだと言っていたがそれは嘘で、私は妊娠した。妊娠について全く知識がなく、マラリアにかかった時に病院に行って妊娠のことを告げられ、怖くなった。男性は妊娠を打ち明けるとどこかに行ってしまい、両親に家を追い出され、今は祖母と暮らしている。
友人が中絶できる薬があると言っていたが、それで死んだ人もいると聞いて迷い、出産した。今日の助産師さんの話で、ここで様々な保健サービスを受けられるとわかったので、避妊サービスと性感染症などの検査を受けて帰りたい」
自立支援の研修後にビーズアクセサリーを作って市場で売るトピスタさん
「10人の子どものいる家に生まれた。貧しかったので遅れて小学校に入り、小学校4年を終えた13歳で妊娠した。家政婦をしていた家の家主に無理やり性行為を求められた。そのことが恥ずかしく、家に帰らずに転々としていた。現在4人の子どもがいるが全員父親が違う。子どもたちを食べさせるために実家に戻ってきた。
今は母ときょうだい、子どもたちの11人で暮らしている。4人目を妊娠して男性に逃げられ、途方に暮れていたときにボランティアが来た。「経済的に自立するために研修を受けないか」と言われた。もしかしたら私でも新しい人生を歩めるかも、と希望を抱いた。研修は産後1週間目のタイミングだったがチャンスを逃したくなくて、生まれたばかりの子どもを連れて参加した。
研修に来ている女性の中には、自分のように乳児を抱える女性たちがたくさんいた。今は研修で習ったビーズでアクセサリーを作って市場で売っている。これで子どもたちの食べる物が買えている。母親にこれ以上迷惑をかけられないので、お金が貯まったら自分の家を持ちたい」
自立支援の研修後、チャパティ屋の屋台を友人3人で始めたプリティさん
「私は11歳で孤児になった。5人きょうだいの一番上だったので母親代わりだったが、11歳の子どもにできることは少なく、毎日私もきょうだいもお腹をすかせていた。14歳の時に、男性が面倒見るからと声をかけてきて妊娠した。産前健診でHIV陽性とわかった。男性は私が妊娠中に亡くなった。すでに5人のきょうだいを面倒みていたのに、そこに乳児が加わった。
生活は一段と厳しくなり、次の男性に声をかけられた時、HIVに感染していることを打ち明けられず、私はその男性にばれないようにと、妊娠がわかった時に逃げた。生活は限界で鬱になった。そこに友人のマリオンがボランティアを連れてやってきた。マリオンも、HIV陽性。『どうしても研修を受けさせたい友達がいる』と、私ともうひとりのHIV陽性の友人、シアマをボランティアに紹介してくれた。
研修は楽しく、自分は無力ではないと思った。子宮頸がんの検査も受け、家族計画のことも学んだ。自分は多くのリスクにさらされていたと気づいた。家に帰ると地域に差別され、自分がHIV陽性である現実を突きつけられる。マリオンとシアマとの3人で開いたこのチャパティ屋は、私の居場所。ここでは3人で未来を語れる。もっと稼げるようになって、子どもたちを学校に通わせたい。子どもたちには私と同じ道を歩んでほしくない。日本のみなさん、プロジェクトでチャパティの作り方を教えてくれてありがとう。もっとこれからもいろいろなことを学び挑戦したい」
※この支援プロジェクトでは、貧困のため10代で妊娠したシングルマザーに対する自立支援の研修も行っています。研修内容は料理、裁縫、アクセサリー作りの3種類と、経理です。研修で学んだ女性たちには少額の資金(150000シリング=約6000円)が提供され、それを使って屋台を始めたり、材料を買ったりして販売し、生計を立てています。
冨永章胤さんとともに聞いた、若者の声
今回、18歳の冨永章胤さんに同行いただいたのは、ジョイセフスタッフにとっても学び多い経験となりました。10代の男性にとって、同世代の女の子たちの若年妊娠とその背景を目の当たりにし、意見を求められる事は、とても向き合いづらいことなのではないかと初めは心配しました。
ですが、実際にはナイトさんそして、プリティさんへのインタビューは章胤さんが実施してくれ、彼女たちが抱える問題や未来に対する正直な思いは、彼女たちと年齢の近い章胤さんの、友人のような同じ目線かつ率直な質問があって、聞けたのだと感じます。一緒に視察して、若年妊娠をはじめ若い世代が抱える問題には、ジェンダーに関係なく、若者自身も参加することが重要だと思いました。
- Author
甲斐 和歌子
アフガニスタンプロジェクト担当。女性クリニック支援、ランドセルなどの物資寄贈、マンスリーサポーター「ジョイセフフレンズ」の担当も兼務。ジョイセフに入ったきっかけは、九州で育ちながら培ったジェンダーに対する問題意識から。日本そして世界のジェンダー平等を実現したい。将来の夢は日本やアフガニスタンの女性が住みやすい世の中になること。