SOSHIREN女(わたし)のからだから 大橋 由香子
国連人権理事会は、人権侵害を防止し、総合的な政策ガイダンスを提供し、新しい国際規範を発展させ、世界のいたるところで人権順守を監視し、加盟国が人権に関する義務を果たせるように支援する機関です。(国連広報センター引用)
国連人権理事会では、全ての国連加盟国の人権状況を定期的に審査する仕組みがあります。この審査はUPR(普遍的定期的レビュー)と呼ばれ、4年半ごとに行われます。
2023年1月末に開催されたUPR日本審査に向けて、ジョイセフは国内外の8つの市民団体* と共同で、日本国内のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の課題をまとめた報告書を2022年7月国連に提出しました。
2023年7月には、第53回人権理事会で勧告採択が行われます。それに先立ち、日本政府に勧告を「受け入れる」採択を求めるため、ジョイセフと「#なんでないのプロジェクト」の主催で、共同レポートを執筆した市民社会が集まった勉強会を、衆議院第一議員会館にて行いました。
この記事は、院内勉強会で大橋由香子氏(SOSHIREN 女(わたし)のからだから)が発言した内容をまとめたものです。116年も前に作られた刑法堕胎罪について説明し、堕胎罪をなくすこと、中絶についての選択肢を増やすことが必要であると、訴えました。
*8つの市民団体:#なんでないのプロジェクト、#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト、SOSHIREN 女(わたし)のからだから、LGBT法連合会、一般社団法人Spring、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、Sexual Rights Initiative、Asia Pacific Alliance for Sexual and Reprroductive Health and Rights
堕胎罪をめぐる中絶の歴史と現況
中絶を巡る、現在の日本の状況を変えるために、お話させていただきます。
昔、男性しかいない帝国議会で、刑法堕胎罪が作られました。それから2023年になって116年が経ちましたが、なんと今でも同じ条文がそのまま存在しています。
刑法堕胎罪では、妊娠中の女性が中絶をすると1年以下の懲役に処せられることがあります。1人では妊娠しないのに、相手男性は罰せられません。また、中絶手術の施術者は罰せられます。
日本は欧米諸国より早い1948年に病院で中絶ができるようになりました。第二次世界大戦に敗戦した後の1948年、増えすぎた人口を減らすため、そして人口の「質の低下」を防ぐために優生保護法を作り、堕胎罪の例外として中絶を許可したのです。
当時は、まだ戦前のイエ制度の意識が残っていたため、配偶者の同意が必要とされました。
中絶の許可条件は五つありました。1から23は、不良な子孫の出生を防止するという優生的な条件で、精神障害や知的障害、ハンセン病の場合でした。そして4が「妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するもの」というもので、中絶の99%がこの理由でなされています。この99%の経済的理由を削除しようという動きが1982年にありました。私達のグループはそのときにその経済的理由の削除に反対してできた団体です。
このときは、多くの女性や女性の国会議員の力で、中絶ができる状態はキープできました。しかし1996年に差別的な優生条項だけを削除した、母体保護法に変わりました。それでも中絶は堕胎罪とし原則禁止、母体保護法で例外的に認める、という構造は変わっていません。
今、中絶について求めていること
今何が必要なのかということを4つお伝えします。
まず、高すぎる中絶費用をもっと安くして、先日認可された経口中絶薬が、できるだけ安く入手できるように工夫をしていただきたい。
そして、安全な中絶方法の選択肢を増やすことです。掻爬(そうは)法ではなく吸引法という選択肢を増やし、特に経口中絶薬は、入院や院内待機を必須にするマイナス面について、海外の経験から学んでいただきたいと思います。
さらに、母体保護法の配偶者同意をなくす、そして堕胎罪をなくす、妊娠する人の健康、権利という視点から、新しい法律が必要です。経口中絶薬が認められ使い始められている今、見直しのタイミングではないでしょうか?
UPRには採用されませんでしたが、優生保護法における強制不妊手術、強制不妊化問題の解決が必要です。ちょうど明日の6月1日2人の女性の裁判の判決が仙台高裁で出ます。ぜひご注目いただき、産むか産まないかを1人1人が決められるような権利を実現させていただきたいと思います。
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- Author
JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします